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第三章【天才、無双する】
第三十九話【紛れ込んでいたのは】
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最終戦に用意されたのは、奇妙な一匹のブリキのおもちゃに見えた。
大きさで言えばネズミ程度。
そんなブリキネズミが一匹、俺とティターニアの間の空間をただひたすら走り回っているだけ。
「まさか、このよく分からない小さな金属の塊が最後のお題などとは言うまいな?」
明らかに不機嫌そうな顔をしたティターニアが司会を務める教師へ向かって言った。
教師は短く「そうだ」とだけ答え、開始の合図のために手を高く上げる。
ティターニアと同じく、最後の課題が拍子抜けするものだと思った俺は、二人のやり取りをぼんやりと見つめていた。
教師の口角が妙に上がっていたのが気になる。
「魔法により、あの動く的を破壊した者どちらかが、勝者とする! それでは始め‼」
教師の合図に、俺は動かなかった。
ティターニアがは動かないと知っていたから。
心底落胆した表情で、ティターニアは試合もそっちのけで俺に話しかけてきた。
「まさか最後の最後でこんなちんけなお題に当たるとはな。これだったら、まだ初戦の方がましだ。的が多かった分な。それにしても、なぜ合図と同時に魔法を撃たなかった? こうして私は話している。今のうちに撃てば、貴様の勝ちだぞ?」
「ティターニアが撃たないことを知っていたからな。撃つ気がない相手に勝っても面白くない」
俺の回答にティターニアは少しだけ気持ちが晴れたような顔を見せた。
「なるほど? あろうことかこの私が、一年坊主に気を使われた訳だ。これは失礼なことをしたな。どんなお題だろうが全力で完膚なきまでに貴様を打ち破ってこそ、私という者だ。おい、審判。今のはなしだ。もう一度、開始の合図をしろ!」
驚いた顔をする教師にティターニアはいつもと変わらぬ態度で、繰り返す。
「聞こえなかったのか? やり直しだ。もう一度開始の合図を。……ところで、お前本当にうちの教師か? 見覚えのない顔だが……」
「わ、分かりました! それでは! 初め‼」
ティターニアは何か気になることがあったようだが、初めの合図を再度いう気持ちになったことが分かった瞬間から、詠唱へと切り替えていた。
正確に、かつ高速に、得意の雷属性の魔法が練られていく。
「雷よ!」
教師の合図と全く同時に放たれたのは、雷属性の初歩魔法だった。
初歩魔法だとしても、ティターニアの魔力の量と、そして彼女の魔法の理解度が物語る、下手な奴が放つ上級魔法ほどの威力を備えた一撃。
全属性、特殊魔法を除き最速の魔法は、不規則に動き回るブリキネズミに引き寄せられるように、寸分違わず進んでいった。
「ふん! あっけなかったな。しかし、これで貴様の負けだ。約束通り質問に……なんだと?」
「いつから先に魔法を放った方が勝ちになったんだ? 勝敗は、このブリキのネズミを先に壊した方だろう? だが、残念ながら、この勝敗を付けることはやめた方がいい」
俺は教師の挙動不審な態度から、沸き起こった不安が的中したことに臍を噛む思いだった。
どうやってここに忍び込んだか。
あいつはいったい何者なのか。
今はそんなことより、俺の一言でやる気になってしまったティターニアの攻撃を止めさせることが先決だ。
「勝敗を付けることを止めた方がいいだと? 何を馬鹿なことを。今の私の攻撃をどうやって無効化したか分からないが、いつまでも耐えられるものでもあるまい?」
「違うんだ。話を聞いてくれ。こいつに魔法攻撃を与えるのはまずい‼」
「はっ! まずい? まずいのは負けてしまう貴様だろうが。それが嫌なら止めて見せろ。止められるものならな!」
俺の説得はさらに悪い方向へと進み、ティターニアは先ほどとは比べ物にならないほどの魔力を込めた上級魔法の詠唱を始めた。
ティターニアの身体から魔障が吹き上がる。
もし俺がブルーノ時と同じように、魔障に細工をしても、ティターニアはその干渉を排除し魔法を問題なく発動させるだろう。
より高度な妨害をすればティターニアといえども解析はできそうにないが、今度は暴発の危険性が付きまとう。
魔法が暴発した際に一番影響を受けるのは術者だ。
さすがにあれだけの魔力を込めた魔法を暴発してしまえば、ただで済まない。
仕方なく、俺は先ほどブリキネズミの周辺に展開した反魔法の膜をさらに強化するための詠唱を始めた。
ティターニアが撃ち放った魔法を迎撃するよりも、守るべき対象が決まっているなら、こっちの方が断然効率的だ。
「天を統べる父王。その怒りの具現よ! わが敵を穿て‼」
両手を天に向けて勢いよく突き出したティターニア。
その瞬間、晴天にもかかわらず、空から一条の雷が稲光と雷鳴を伴い落ちてきた。
狙いは当然ブリキネズミ。
その周辺を巻き込みながら舞い降りた神の怒槌は地面に描かれた魔法陣ごと粉砕する。
上がる悲鳴。
舞う土埃。
周囲の景色が晴れた後には、陥没した地面の上を自由に動き回るブリキネズミの姿があった。
「ば、馬鹿な! 私のこの攻撃さえも防いだというのか!」
ティターニアは驚嘆と、少し喜びが見え隠れする顔で俺を見据える。
何故だか知らないが、自分の放った魔法を無力かされて嬉しいようだ。
実際には無力化したわけではないのだが。
「雷魔法は強力だが、進路を操作しやすい。的の周囲に作った魔法の膜。その表面を雷が通りやすいように。その内側を極端に通りにくいようにしておけば、勝手にそれてくれる」
「はははは! そんな話聞いたことがないが、口で言うほど簡単ではあるまい? お前は本当に面白いな! 魔力量なら、私の方が圧倒的に上。それなのに、こうやって対峙してみると、まるで神話の大魔術師を相手にしているような気持になってくる。いったいどこでそこまでの知識を、経験を身に付けたんだ?」
「質問に答えるのは俺が負けたらじゃなかったのか? まぁ、俺は負けるつもりもないが」
「そうだったな! そういえば、この的に魔法を当ててはならぬと貴様が言っていたな。今の攻撃を防げるだけのお前が言うことだ。聞いてやろう。訳を話せ」
どうやらティターニアは、俺の話を聞いてくれる気になったようだ。
これで、無駄な被害を周囲に与える心配が減りそうだ。
一安心していた俺の耳に、とんでもない声が聞こえてきた。
「爆ぜろ! 爆轟‼」
声の主はブルーノだった。
ブルーノの放った炎は、高速でまっすぐにブリキネズミへと飛んでいく。
俺の意識の外からの攻撃。
かけていた反魔法はティターニア向けのものであり、ブルーノの火属性の魔法には何の効力もない。
ブルーノの魔法をその身に受けたブリキネズミは、爆ぜて飛んだ。
「はーはっはっはっは!! 馬鹿め! 俺がてめぇ負けるわけがねぇ‼ 最終戦の的はそいつだろうが‼ そいつをぶっ壊した俺様が優勝者よ‼ 安心しろ‼ 次はてめぇを同じ目に遭わせてやるよ!」
「馬鹿……野郎‼」
俺は馬鹿な男が、くだらない虚栄心の末しでかした、取り返しのつかない事態を目の前にして、怒りを露にしていた。
しかし、いまさらブルーノに何をしても事態が好転するわけではない。
それに、彼はすでに自らがしでかしたことの報復を受けることが決まっている。
属性魔法でふ腐獣を攻撃してしまったのだから。
「はーはっはっは……はぅっ⁉ く、苦しい……なんだ、こ、れ……は……」
男前だったブルーノの身体の至る所に腐獣の毒を受けたような爛れが発生していた。
すぐに回復魔法を唱えなければ、命を落とすことになるだろうが、助けるつもりはない。
傍若無人に振る舞い、元の宿主であるフィリオ以外にも何人の命がこいつのせいで失われてたのかは知らない。
さすがに衆人の目の前で俺が手を下すわけにはいかなかったが、こうして自らの行いで死を招いてくれたのなら、邪魔をする必要もあるまい。
「た、たすけ……たすけ……て……」
そんなことより、ここにいる他の人々の安全の確保が先だ。
腐獣の厄介なところは属性魔法で攻撃した者に、どういう原理か分からないが毒を返すこと。
この場合に受ける毒は、魔法の威力が強いほど強くなる。
ブルーノが放った魔法は、小さな腐獣の全身を覆い焼き尽くす火属性の上級魔法だ。
今頃ブルーノの全身に腐獣の毒が回っていることだろう。
「何がどうなってる⁉ あれはブルーノか⁉ 奴は大丈夫なのか? 顔が爛れているようだが! そしてあいつはなんだ⁉ 突然飛んできた火の玉がぶつかったと思ったら、馬鹿みたいに巨大化したぞ⁉」
「これが、俺が勝敗をつけるのを止めるといった理由だ。学生と教師を非難させろ。あいつに触れるとブルーノみたいになるぞ」
「あいつが何なのか知っているのか⁉ もったいぶらずに教えろ! あの化け物はなんなんだ!」
「腐獣だ。あいつは属性を持つ魔法で攻撃すればするほど、大きくなる。絶対に雷属性の魔法であいつを撃つなよ? それにしてもまさか、こんなところに連れてくるなんて、趣味が悪いぜ」
ブルーノが放った魔法が腐獣を隠していたブリキのおもちゃに当たった瞬間、審判を務めていた教師は姿をくらました。
間違いなく、あの教師、いや、教師の振りをして忍び込んでいた何者かが、この腐獣の出所を知っているだろう。
この間、獣人の娘シャトゥが受けた腐獣の毒のことも知っているだろうか。
とにもかくにも、まずは目の前の人の背の高さまで巨大化した腐獣を討伐することが先決だ。
大きさで言えばネズミ程度。
そんなブリキネズミが一匹、俺とティターニアの間の空間をただひたすら走り回っているだけ。
「まさか、このよく分からない小さな金属の塊が最後のお題などとは言うまいな?」
明らかに不機嫌そうな顔をしたティターニアが司会を務める教師へ向かって言った。
教師は短く「そうだ」とだけ答え、開始の合図のために手を高く上げる。
ティターニアと同じく、最後の課題が拍子抜けするものだと思った俺は、二人のやり取りをぼんやりと見つめていた。
教師の口角が妙に上がっていたのが気になる。
「魔法により、あの動く的を破壊した者どちらかが、勝者とする! それでは始め‼」
教師の合図に、俺は動かなかった。
ティターニアがは動かないと知っていたから。
心底落胆した表情で、ティターニアは試合もそっちのけで俺に話しかけてきた。
「まさか最後の最後でこんなちんけなお題に当たるとはな。これだったら、まだ初戦の方がましだ。的が多かった分な。それにしても、なぜ合図と同時に魔法を撃たなかった? こうして私は話している。今のうちに撃てば、貴様の勝ちだぞ?」
「ティターニアが撃たないことを知っていたからな。撃つ気がない相手に勝っても面白くない」
俺の回答にティターニアは少しだけ気持ちが晴れたような顔を見せた。
「なるほど? あろうことかこの私が、一年坊主に気を使われた訳だ。これは失礼なことをしたな。どんなお題だろうが全力で完膚なきまでに貴様を打ち破ってこそ、私という者だ。おい、審判。今のはなしだ。もう一度、開始の合図をしろ!」
驚いた顔をする教師にティターニアはいつもと変わらぬ態度で、繰り返す。
「聞こえなかったのか? やり直しだ。もう一度開始の合図を。……ところで、お前本当にうちの教師か? 見覚えのない顔だが……」
「わ、分かりました! それでは! 初め‼」
ティターニアは何か気になることがあったようだが、初めの合図を再度いう気持ちになったことが分かった瞬間から、詠唱へと切り替えていた。
正確に、かつ高速に、得意の雷属性の魔法が練られていく。
「雷よ!」
教師の合図と全く同時に放たれたのは、雷属性の初歩魔法だった。
初歩魔法だとしても、ティターニアの魔力の量と、そして彼女の魔法の理解度が物語る、下手な奴が放つ上級魔法ほどの威力を備えた一撃。
全属性、特殊魔法を除き最速の魔法は、不規則に動き回るブリキネズミに引き寄せられるように、寸分違わず進んでいった。
「ふん! あっけなかったな。しかし、これで貴様の負けだ。約束通り質問に……なんだと?」
「いつから先に魔法を放った方が勝ちになったんだ? 勝敗は、このブリキのネズミを先に壊した方だろう? だが、残念ながら、この勝敗を付けることはやめた方がいい」
俺は教師の挙動不審な態度から、沸き起こった不安が的中したことに臍を噛む思いだった。
どうやってここに忍び込んだか。
あいつはいったい何者なのか。
今はそんなことより、俺の一言でやる気になってしまったティターニアの攻撃を止めさせることが先決だ。
「勝敗を付けることを止めた方がいいだと? 何を馬鹿なことを。今の私の攻撃をどうやって無効化したか分からないが、いつまでも耐えられるものでもあるまい?」
「違うんだ。話を聞いてくれ。こいつに魔法攻撃を与えるのはまずい‼」
「はっ! まずい? まずいのは負けてしまう貴様だろうが。それが嫌なら止めて見せろ。止められるものならな!」
俺の説得はさらに悪い方向へと進み、ティターニアは先ほどとは比べ物にならないほどの魔力を込めた上級魔法の詠唱を始めた。
ティターニアの身体から魔障が吹き上がる。
もし俺がブルーノ時と同じように、魔障に細工をしても、ティターニアはその干渉を排除し魔法を問題なく発動させるだろう。
より高度な妨害をすればティターニアといえども解析はできそうにないが、今度は暴発の危険性が付きまとう。
魔法が暴発した際に一番影響を受けるのは術者だ。
さすがにあれだけの魔力を込めた魔法を暴発してしまえば、ただで済まない。
仕方なく、俺は先ほどブリキネズミの周辺に展開した反魔法の膜をさらに強化するための詠唱を始めた。
ティターニアが撃ち放った魔法を迎撃するよりも、守るべき対象が決まっているなら、こっちの方が断然効率的だ。
「天を統べる父王。その怒りの具現よ! わが敵を穿て‼」
両手を天に向けて勢いよく突き出したティターニア。
その瞬間、晴天にもかかわらず、空から一条の雷が稲光と雷鳴を伴い落ちてきた。
狙いは当然ブリキネズミ。
その周辺を巻き込みながら舞い降りた神の怒槌は地面に描かれた魔法陣ごと粉砕する。
上がる悲鳴。
舞う土埃。
周囲の景色が晴れた後には、陥没した地面の上を自由に動き回るブリキネズミの姿があった。
「ば、馬鹿な! 私のこの攻撃さえも防いだというのか!」
ティターニアは驚嘆と、少し喜びが見え隠れする顔で俺を見据える。
何故だか知らないが、自分の放った魔法を無力かされて嬉しいようだ。
実際には無力化したわけではないのだが。
「雷魔法は強力だが、進路を操作しやすい。的の周囲に作った魔法の膜。その表面を雷が通りやすいように。その内側を極端に通りにくいようにしておけば、勝手にそれてくれる」
「はははは! そんな話聞いたことがないが、口で言うほど簡単ではあるまい? お前は本当に面白いな! 魔力量なら、私の方が圧倒的に上。それなのに、こうやって対峙してみると、まるで神話の大魔術師を相手にしているような気持になってくる。いったいどこでそこまでの知識を、経験を身に付けたんだ?」
「質問に答えるのは俺が負けたらじゃなかったのか? まぁ、俺は負けるつもりもないが」
「そうだったな! そういえば、この的に魔法を当ててはならぬと貴様が言っていたな。今の攻撃を防げるだけのお前が言うことだ。聞いてやろう。訳を話せ」
どうやらティターニアは、俺の話を聞いてくれる気になったようだ。
これで、無駄な被害を周囲に与える心配が減りそうだ。
一安心していた俺の耳に、とんでもない声が聞こえてきた。
「爆ぜろ! 爆轟‼」
声の主はブルーノだった。
ブルーノの放った炎は、高速でまっすぐにブリキネズミへと飛んでいく。
俺の意識の外からの攻撃。
かけていた反魔法はティターニア向けのものであり、ブルーノの火属性の魔法には何の効力もない。
ブルーノの魔法をその身に受けたブリキネズミは、爆ぜて飛んだ。
「はーはっはっはっは!! 馬鹿め! 俺がてめぇ負けるわけがねぇ‼ 最終戦の的はそいつだろうが‼ そいつをぶっ壊した俺様が優勝者よ‼ 安心しろ‼ 次はてめぇを同じ目に遭わせてやるよ!」
「馬鹿……野郎‼」
俺は馬鹿な男が、くだらない虚栄心の末しでかした、取り返しのつかない事態を目の前にして、怒りを露にしていた。
しかし、いまさらブルーノに何をしても事態が好転するわけではない。
それに、彼はすでに自らがしでかしたことの報復を受けることが決まっている。
属性魔法でふ腐獣を攻撃してしまったのだから。
「はーはっはっは……はぅっ⁉ く、苦しい……なんだ、こ、れ……は……」
男前だったブルーノの身体の至る所に腐獣の毒を受けたような爛れが発生していた。
すぐに回復魔法を唱えなければ、命を落とすことになるだろうが、助けるつもりはない。
傍若無人に振る舞い、元の宿主であるフィリオ以外にも何人の命がこいつのせいで失われてたのかは知らない。
さすがに衆人の目の前で俺が手を下すわけにはいかなかったが、こうして自らの行いで死を招いてくれたのなら、邪魔をする必要もあるまい。
「た、たすけ……たすけ……て……」
そんなことより、ここにいる他の人々の安全の確保が先だ。
腐獣の厄介なところは属性魔法で攻撃した者に、どういう原理か分からないが毒を返すこと。
この場合に受ける毒は、魔法の威力が強いほど強くなる。
ブルーノが放った魔法は、小さな腐獣の全身を覆い焼き尽くす火属性の上級魔法だ。
今頃ブルーノの全身に腐獣の毒が回っていることだろう。
「何がどうなってる⁉ あれはブルーノか⁉ 奴は大丈夫なのか? 顔が爛れているようだが! そしてあいつはなんだ⁉ 突然飛んできた火の玉がぶつかったと思ったら、馬鹿みたいに巨大化したぞ⁉」
「これが、俺が勝敗をつけるのを止めるといった理由だ。学生と教師を非難させろ。あいつに触れるとブルーノみたいになるぞ」
「あいつが何なのか知っているのか⁉ もったいぶらずに教えろ! あの化け物はなんなんだ!」
「腐獣だ。あいつは属性を持つ魔法で攻撃すればするほど、大きくなる。絶対に雷属性の魔法であいつを撃つなよ? それにしてもまさか、こんなところに連れてくるなんて、趣味が悪いぜ」
ブルーノが放った魔法が腐獣を隠していたブリキのおもちゃに当たった瞬間、審判を務めていた教師は姿をくらました。
間違いなく、あの教師、いや、教師の振りをして忍び込んでいた何者かが、この腐獣の出所を知っているだろう。
この間、獣人の娘シャトゥが受けた腐獣の毒のことも知っているだろうか。
とにもかくにも、まずは目の前の人の背の高さまで巨大化した腐獣を討伐することが先決だ。
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