7 / 41
第一章【魔力ゼロの天才、転生する】
第七話【平民の編入生と記憶喪失の転生者】
しおりを挟む
「えー‼ それじゃあフィリオ君は少し前までの記憶をぜーんぶ忘れっちゃたの⁉」
朝の授業が終わり、昼食を食べる時間。
アムレットに押し切られる形で、俺は二人でマグナレア学園の中にある食堂で向かい合う形で無料で提供された昼食をつついていた。
食事が無料ということを知らなかったアムレットは、配膳された料理を前にして興奮していたが、話題が俺の記憶に移った途端、それ以上に驚いた表情で身体を前に乗り出してきた。
「ああ。本当に何も」
「そうなんだねぇ……あ! じゃあ、学園のこととか魔法のこととかいろいろ教えてもらおうと思ったけどダメなのかぁ」
乗り出した身体をすとんと椅子に下ろし、アムレットは残念そうな顔をする。
まだ半日しか彼女に接していないが、感情を表に出すことを少しもいとわないようで、ころころと表情を変える。
見ていて飽きないが、アムレットのためにも、きちんと彼女の求める知識を持つ友人を作ることを勧めるのが得策だろう。
俺とは違い、この人懐っこそうな性格は、他の友人を作ること自体難しくないだろうし。
「ということで、残念ながら俺にはこの学園のことを教えるのは無理だ。悪いが他のやつを頼ってくれ」
「うーん。それがねぇ。実を言うと、私ちょーっと他の人から避けられてるかなーって。こうやってきちんと話をできたのもフィリオ君が初めてだよ!」
「うん? それはどういうことだ? アムレットのその性格だったら、好かれはしても、嫌われることはそんなにないと思うけどな」
「えへへ。嬉しいこと言ってくれるねぇ! フィリオ君。でもほんとなんだよ。朝だって、一番最初に教室について隣に座った人に話しかけようと思ってたんだけどね?」
そこでアムレットは口をへの字に結んで、下唇のくぼみに人差し指を当てる仕草をした。
「ところが、だーれも私の近くに座ってくれないんだよ。あ! さすがに人が増えてきたら席も減ってくるからフィリオ君の前に何人か座った人が居たんだけど」
「居たんだけど?」
「フィリオ君みたいに近寄って話しかけたら、みんな席を離れて別のところに行っちゃったんだぁ。さすがの私もここまで上手くいかないとへこむよねぇ」
アムレットは今度はだらしなく両腕を真下にぶら下げ、首を前にもたげる。
なるほど、表情じゃなく、行動も感情をめいっぱいに表現するのか。
「でも大丈夫! 私にはフィリオ君という友達第一号ができたからね! 学園のことを教えてもらえなくても、一緒に学ぶ級友だし! これからもよろしく‼」
「あ、ああ。こちらこそ」
力強く差し出された右手を、勢いに押されて軽く握り返す。
人と手を握るのなど、いつぶりだろうか。
アムレットの手は柔らかく、そして暖かかった。
「おい! 見ろよ! 青虫と例の女だぞ。まぁお似合いってやつだな! できれば二人とも早々にこの学園から去ってもらいたいもんだが」
明らかに俺たちに向けて放たれた声に、俺は目を向ける。
すでに声色からわかっていたが、やはりリチャードのようだ。
午前中の授業には姿を見せなかったが、無事に苦手だという高い木の上からは降りられたみたいだな。
朝と服装が変わっているが、まぁ、こいつの名誉のためにあえて突っ込むのはやめておこう。
そもそも名誉などあるのか知らないが。
意識がリチャードの服装の変化に向かっていると、朝と同じリチャードの連れ二人がそれぞれ口を開き、リチャードの言葉を肯定する。
「ええ。リチャード様の言う通りですよ! 淡爵とはいえ、ろくな魔法を使えないこいつや、いくら魔力量が多いと診断されたからと言って、平民がこの誉れ高い学園に通うなんて間違っています!」
「まったく、いくら制度があるとはいえ、恥ずかしくないのですかね? 平民が貴族の養子になるなど」
二人の言葉に、俺は少しの驚きを覚えた。
俺がリチャードたちからアムレットへと視線を移すと、彼女は沈んだ表情で俯いていた。
朝の授業が終わり、昼食を食べる時間。
アムレットに押し切られる形で、俺は二人でマグナレア学園の中にある食堂で向かい合う形で無料で提供された昼食をつついていた。
食事が無料ということを知らなかったアムレットは、配膳された料理を前にして興奮していたが、話題が俺の記憶に移った途端、それ以上に驚いた表情で身体を前に乗り出してきた。
「ああ。本当に何も」
「そうなんだねぇ……あ! じゃあ、学園のこととか魔法のこととかいろいろ教えてもらおうと思ったけどダメなのかぁ」
乗り出した身体をすとんと椅子に下ろし、アムレットは残念そうな顔をする。
まだ半日しか彼女に接していないが、感情を表に出すことを少しもいとわないようで、ころころと表情を変える。
見ていて飽きないが、アムレットのためにも、きちんと彼女の求める知識を持つ友人を作ることを勧めるのが得策だろう。
俺とは違い、この人懐っこそうな性格は、他の友人を作ること自体難しくないだろうし。
「ということで、残念ながら俺にはこの学園のことを教えるのは無理だ。悪いが他のやつを頼ってくれ」
「うーん。それがねぇ。実を言うと、私ちょーっと他の人から避けられてるかなーって。こうやってきちんと話をできたのもフィリオ君が初めてだよ!」
「うん? それはどういうことだ? アムレットのその性格だったら、好かれはしても、嫌われることはそんなにないと思うけどな」
「えへへ。嬉しいこと言ってくれるねぇ! フィリオ君。でもほんとなんだよ。朝だって、一番最初に教室について隣に座った人に話しかけようと思ってたんだけどね?」
そこでアムレットは口をへの字に結んで、下唇のくぼみに人差し指を当てる仕草をした。
「ところが、だーれも私の近くに座ってくれないんだよ。あ! さすがに人が増えてきたら席も減ってくるからフィリオ君の前に何人か座った人が居たんだけど」
「居たんだけど?」
「フィリオ君みたいに近寄って話しかけたら、みんな席を離れて別のところに行っちゃったんだぁ。さすがの私もここまで上手くいかないとへこむよねぇ」
アムレットは今度はだらしなく両腕を真下にぶら下げ、首を前にもたげる。
なるほど、表情じゃなく、行動も感情をめいっぱいに表現するのか。
「でも大丈夫! 私にはフィリオ君という友達第一号ができたからね! 学園のことを教えてもらえなくても、一緒に学ぶ級友だし! これからもよろしく‼」
「あ、ああ。こちらこそ」
力強く差し出された右手を、勢いに押されて軽く握り返す。
人と手を握るのなど、いつぶりだろうか。
アムレットの手は柔らかく、そして暖かかった。
「おい! 見ろよ! 青虫と例の女だぞ。まぁお似合いってやつだな! できれば二人とも早々にこの学園から去ってもらいたいもんだが」
明らかに俺たちに向けて放たれた声に、俺は目を向ける。
すでに声色からわかっていたが、やはりリチャードのようだ。
午前中の授業には姿を見せなかったが、無事に苦手だという高い木の上からは降りられたみたいだな。
朝と服装が変わっているが、まぁ、こいつの名誉のためにあえて突っ込むのはやめておこう。
そもそも名誉などあるのか知らないが。
意識がリチャードの服装の変化に向かっていると、朝と同じリチャードの連れ二人がそれぞれ口を開き、リチャードの言葉を肯定する。
「ええ。リチャード様の言う通りですよ! 淡爵とはいえ、ろくな魔法を使えないこいつや、いくら魔力量が多いと診断されたからと言って、平民がこの誉れ高い学園に通うなんて間違っています!」
「まったく、いくら制度があるとはいえ、恥ずかしくないのですかね? 平民が貴族の養子になるなど」
二人の言葉に、俺は少しの驚きを覚えた。
俺がリチャードたちからアムレットへと視線を移すと、彼女は沈んだ表情で俯いていた。
0
お気に入りに追加
1,759
あなたにおすすめの小説
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜
猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。
ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。
そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。
それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。
ただし、スキルは選べず運のみが頼り。
しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。
それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・
そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。
紫電の射手 勇者パーティで無能扱いされて追放しかし、雷に打たれて世界最強の魔法剣士に!
秋水
ファンタジー
最強の炎属性魔法使いの父と最強の水属性魔法使いの母から生まれ常識では測れないほどの魔力量を誇るイグナール・フォン・バッハシュタイン。
両親の力を引き継ぎ、絶大な魔力量を誇り最強の魔法使いになると約束されたイグナールは15歳の誕生日に魔王討伐の勇者パーティに加入。それから2年、イグナールは魔法が一切使えず勇者パーティから無能認定され、追放されてしまう。その日、豪雨の中途方に暮れていたら雷に打たれ重傷を負ってしまう。
奇跡的に助かったイグナールは雷魔法を取得、底なしの魔力と合わさり世界最強の魔法剣士へと成り上がり魔王討伐を目指す!
せっかく異世界転生したのに、子爵家の後継者ってそれはないでしょう!~お飾り大公のせいで領地が大荒れ、北の成り上がり伯爵と東の大公国から狙われ
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
大公爵領内は二大伯爵のせいで大荒れ諸侯も他国と通じ…あれ、これ詰んだ?
会社からの帰り道、強姦魔から半裸の女性を助けたところ落下し意識を失ってしまう。
朝目が覚めると鏡の前には見知らぬ。黒髪の美少年の顔があった。
その時俺は思い出した。自分が大人気戦略シュミレーションRPG『ドラゴン・オブ・ファンタジー雪月花』の悪役『アーク・フォン・アーリマン』だと……
そして時に悪態をつき、悪事を働き主人公を窮地に陥れるが、結果としてそれがヒロインと主人公を引き立せ、最終的に主人公に殺される。自分がそんな小悪役であると……
「やってやるよ! 俺はこの人生を生き抜いてやる!!」
そんな決意を胸に抱き、現状を把握するものの北の【毒蛇公爵】、東の大公【東の弓聖】に攻められ蹂躙されるありさま……先ずは大公が治める『リッジジャング地方』統一のために富国強兵へ精を出す。
「まずは叔父上、御命頂戴いたします」
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる