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第四章

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 ふあぁと大きな欠伸をして席に座る。

「リズルさんおはよー」

「よく寝れたか?」

「そりゃそうじゃん、昨日は凄く疲れたもん」

「それは良かったな」

 「ほぼリズルさんのせいだけどね」、と言おうとしたが止めておき、別の話題を振った。

「てか材料取りに行くのにあんな体力必要なの?」

「あぁ、浄瑠璃楽園まで、通常は竜に乗って行くからな。まぁでも運が良かったらペガサスに乗って行くぞ」

「は? 竜??」

 俺たちが乗っている姿が想像できない。そもそも竜には乗れるものなのか?

「この前の馬車は、遠すぎて途中で壊れるんだよな」

「え、あれって壊れるもんなんだ」

「そうなんだよなぁ残念ながら」

 だからか、と納得する。

「竜は結構荒いし落ちたら一発アウトだから体力が必要だ」

「ってことは死と隣り合わせってことねぇー」

 ダルいしキツイわーといじけているとリズルさんが励ますように笑った。

「ま、たとえ落ちたとしても私が拾いに行ってやるから安心しろ」

「それはちょっと安心できない……」

 落胆しながら食べ終わった皿を洗い場に持っていく。

「姉から返事が来たぞ!」

 リズルさんは今まで見たことがないくらいウキウキしていたので、びっくりして皿を落とすかと思った。

「もー、びっくりさせないでくださいよぉ」

「ごめんごめん、つい」

 チロッと舌を出すと持ってきた紙を読み上げた。

「『了解しました。私は今、カロンウェル地方にいます。飛んで戻ってくると言いたいところですが、戻るまでにとても時間が掛かるので待っていてください』、だってさ」

「カロンウェル地方って国の中で一番南東にある島々のことだよね。……てか手紙は早く届くのにここに着くのに時間が掛かるんだね」

「そりゃそうだ。例えば王様を殺した犯人が逃走中だとする。その王様を殺した犯人は見つからないうちに遠くへ逃げるが、沢山の都市を通過しなきゃいけない。だから都市ごとに旅人たちに検査を受けさせればその犯人が摘出されるってわけだ。例として王様を殺した犯人としたが、他にも危険物の持ち込みの取り締まりとかだ。だから結構大変なんだぞ」

「……全く分かんない」

「言うと思った」

 はぁ、と溜め息をつく。

「皿洗い終わったな? それじゃあ先に門のところで行ってるから机の片付けよろしく」

「はぁ……」

(あれ意外と大変なんだよな。まぁ仕方がない)

 俺は蒼と一緒に食堂へ戻った。

    »†«

 蒼穹城ここに来てから二週間経った。
 体力はだいぶついてきた気がする。

「もうそろそろ浄瑠璃楽園に行っても問題ない頃合いかな」

 リズルさんがふとそう口にする。

「そうかもね」

「じゃあ今日浄瑠璃楽園に行くか」

「へ?!」

 びっくりし過ぎて席から転げ落ちてしまった。

「白露だいじょーぶ?」

「いったあ……」

「……先が思いやられるな」

「なら今日行かなくてもいいでしょ」

「姉が返ってくる前に色々と終わらせておきたいんだ。あれから二週間は経つからな」

 何としてでも回避することは不可能だったか。もう諦めよう。

「はぁ、仕方がないなぁ。何すればいい?」

「お、やる気になったみたいだな。まずこれを着ろ」

 リズルさんは遠くに行って戻ってくると、沢山の羽毛が付いた服を持ってきた。

「うぇーなんじゃこりゃ」

「天使の羽だぞ、これ。滅多にお目にかかれないものだぞ」

「そうは見えないけど……」

「天使が成長する過程で出るものだ。普通は四回くらいしかないし、しかも少量だ。それを掻き集めて作ったんだから感謝しろ」

「はーい、感謝してます~。感謝感謝~」

 棒読みで言っていると、むにっと頬をつねられた。

「それ本当に感謝してんのか?」

してますひてまふって」

「にわかに信じ難いが……。はぁ、もういい。さっさとそれを着ろ」

 プイと目を逸らすと向こうへ行ってしまった。

「リズルさんー、着ましたよ」

「ん、じゃあ門へ行こうか」

 俺と蒼はリズルさんのあとに続いて歩く。

    »†«

 門に着いた。
 まだ、太陽は低い位置にある。

「で、どうやって竜に乗るの?」

「まず、これを使って竜を呼ぶ」

 得意気にそう言うとポケットから木製の笛を取り出した。

「それで吹くの?」

「あぁ。じゃ、呼ぶぞ」

 リズルさんは、風に髪をなびかせながらピューと綺麗な音色を奏でる。
 うっとりとその音色に聴き入っていると急にゴゴゴと風が下から強く吹く。

「うっ……」

 そっと瞼を開けると、そこには白い竜がいた。

「これが……?」

「そうだ」

 ニコリと笑い、その白い竜の頭を撫でた。
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