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第1章 最寄本家の人びと(教子とトンヌラ)
プロローグ Mahoo!ニュース記事によってその騒動のはじまりを見るなら
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どうぞ自己紹介させてください
私は資産家で美食家です
恐ろしく長い時の中、こうしてやってます
多くの人間の魂や信仰を奪ってね
… …
お目にかかれて光栄です
私の名前はご存じですか
まあ、あなたを当惑させているのは
私の作ったこのゲーム、ですよねぇ
(ローリング・ストーンズ「悪魔を憐れむ歌」より)
とりあえず、なんとはなく、時に意識もせず、スマホで「Mahoo!ニュース」をタップして見始める人って、世の中的には結構多いんじゃないかと推察する。知らんけど(←知らんけどの誤用)。
例えば、職場で、自席でコンビニもののお昼食べながらとか。
あるいはトイレで便座に座って軽やかに極めつつ(何をだ)とか。
電車を待つホームでとか、営業のアポ時間までの時間つぶしとか、その他の状況でもまぁ。
そんな感じで、日本人に「定着した」ニュースプラットフォームと言えるMahoo!ニュースなのだが、ある日のこと、そのトップ画面先頭に、こんな記事が掲載された。
「『腹が立つ、ああ腹が立つ腹が立つ』セマク氏、日本のお約束ファンタジー世界設定を全否定」
「世界有数の実業家マーロン・セマク氏が10月10日にSNSを更新し、
『2位だと…?!腹が立つ、ああ腹が立つ腹が立つ…』
の英語コメントと画像をアップした。
セマク氏はこの日、新刊のサイン会とトークショーのため池袋のトゥンク堂書店を訪れているが、画像は同書店店内にディスプレイされた売上げランキング。
同氏初の自伝『僕の、僕による、僕のための宇宙』は2位、総合1位には大ヒット中の漫画『放浪のフェイエルン』最新刊が輝いているものだった。
セマク氏は立て続けに投稿。
『1位奪ったった♪』
のコメントと、レジに自著100冊と札束をドン置きするショート動画を最初にアップ。
それでも腹の虫が治らなかったのか、続けざまに
『イベント終了。さっそくトゥンク堂ビル内を好きに徘徊するよ!リサーチ。』
『『地下洞窟でディナーを』『放浪のフェイエルン』あと小説の『セーヘンデ王国奇譚』全巻買った。後でホテル帰ったら読ーむ』
『で、一気読みした(開発中の「翻訳レックス」β版でね。手前味噌だけど、これはめっちゃ便利)』
『あのさぁ、なんで日本人がこーいう世界描いて儲けてるのかって話よな。
古いヨーロッパ的な何かのオマージュとは思うけど、そもそもあなたがたのルーツと関係が?なくない?!』
『なんか、火が付いた。ちょっとこの……日本で、ナゼか中世ヨーロッパ風ファンタジー世界が完全に受容されてるってやつ、まだまだ追ったるわい!」
一連の投稿に対し、セマク氏のフォロワーからは賛否のコメントが相次いだ。
『相変わらず典型的なセマク氏っぷりで草』
『基本、ヤンキー(日本のマンガ文化で言うところの)気質で草』
『ほんといっつもこの人了見が狭くないかなと……』
『自由な言論を標榜してる割に、ちょっとカッチン来たら誰かの表現や想像の自由は奪いにいくんかい』
『自伝がもし2位じゃなく1位だったら、別に噛付き発動してないやつやんw』
『別にどーでもいいじゃんってスルーしないところはまさに真骨頂』
『アキバ的なものの一切も否定し始めると世界中のオタクを敵に回すだろうな』
『これ、ただ単に試作中の翻訳アプリのPRしたかっただけじゃね?』
『でも確かにどうして日本はああなんだろ、侍とか忍者とかがテンプレ、ではないんだよなぁ』
一連の「騒動」を見ていく上では、もう一本の記事も紹介したい。
「セマク氏、日本限定で、中世ヨーロッパ的ファンタジー世界設定を『遠慮するよう言いたい』各社対応準備か」
「世界有数の実業家マーロン・セマク氏は17日、
『やはり、日本で中世ヨーロッパ的ファンタジーの世界設定がテンプレになっているのは、個人的にはとてつもなく問題だと主張したい。遠慮願えないものか?今後、それで儲けることをやめない企業は、ウチのSNSのアカウントを……おおっと』
の内容で、オーナーをつとめるSNSを更新した。
セマク氏は過日、自伝のプロモーションで訪日した際、この『問題視』を開始したようだ。
セマク氏の今回の発言を受け、菱場首相は記者団の囲み取材に答え、
「出来うる限りの注視を、愚直にたゆまずひたむきに行っていく」
とコメントした。
ゲーム業界では、
「睨まれて、社として垢BANを受けるのはやはりまずい。一旦(ゲームの提供を)止めざるを得ないだろう。
サ終を含め、大掛かりな世界設定の変更など、何をどこまでできるかだ。
まだ言えないが、我が社の看板的というかドル箱的なゲームタイトルも、いったんストップはやむを得ないだろう」
(あるソーシャルゲームの運営会社幹部)
と話すなど、危機感が広がっている。
日本のフォロワーからは、のきなみ悲鳴が上がっており、
『えっ嘘だろ……じゃあ今やってるゲームもサ終かも、思いっきり中世ヨーロッパ風ファンタジーだし』
『これじゃまるで現実世界のラスボスですよセマクさん……』
『現代では、大魔王は降臨している間じゃなく、その地を離れてから遠隔で隕石を降らせてくるんだな』
『えええ。あなたのラーメンうまし動画大好きなのに、この仕打ちはない……』
『うそやん……今回、ねこま遊園跡地を訪れて、森を冒険して楽しんでたあの無邪気な笑顔とやってることのギャップが激しすぎる』
私は資産家で美食家です
恐ろしく長い時の中、こうしてやってます
多くの人間の魂や信仰を奪ってね
… …
お目にかかれて光栄です
私の名前はご存じですか
まあ、あなたを当惑させているのは
私の作ったこのゲーム、ですよねぇ
(ローリング・ストーンズ「悪魔を憐れむ歌」より)
とりあえず、なんとはなく、時に意識もせず、スマホで「Mahoo!ニュース」をタップして見始める人って、世の中的には結構多いんじゃないかと推察する。知らんけど(←知らんけどの誤用)。
例えば、職場で、自席でコンビニもののお昼食べながらとか。
あるいはトイレで便座に座って軽やかに極めつつ(何をだ)とか。
電車を待つホームでとか、営業のアポ時間までの時間つぶしとか、その他の状況でもまぁ。
そんな感じで、日本人に「定着した」ニュースプラットフォームと言えるMahoo!ニュースなのだが、ある日のこと、そのトップ画面先頭に、こんな記事が掲載された。
「『腹が立つ、ああ腹が立つ腹が立つ』セマク氏、日本のお約束ファンタジー世界設定を全否定」
「世界有数の実業家マーロン・セマク氏が10月10日にSNSを更新し、
『2位だと…?!腹が立つ、ああ腹が立つ腹が立つ…』
の英語コメントと画像をアップした。
セマク氏はこの日、新刊のサイン会とトークショーのため池袋のトゥンク堂書店を訪れているが、画像は同書店店内にディスプレイされた売上げランキング。
同氏初の自伝『僕の、僕による、僕のための宇宙』は2位、総合1位には大ヒット中の漫画『放浪のフェイエルン』最新刊が輝いているものだった。
セマク氏は立て続けに投稿。
『1位奪ったった♪』
のコメントと、レジに自著100冊と札束をドン置きするショート動画を最初にアップ。
それでも腹の虫が治らなかったのか、続けざまに
『イベント終了。さっそくトゥンク堂ビル内を好きに徘徊するよ!リサーチ。』
『『地下洞窟でディナーを』『放浪のフェイエルン』あと小説の『セーヘンデ王国奇譚』全巻買った。後でホテル帰ったら読ーむ』
『で、一気読みした(開発中の「翻訳レックス」β版でね。手前味噌だけど、これはめっちゃ便利)』
『あのさぁ、なんで日本人がこーいう世界描いて儲けてるのかって話よな。
古いヨーロッパ的な何かのオマージュとは思うけど、そもそもあなたがたのルーツと関係が?なくない?!』
『なんか、火が付いた。ちょっとこの……日本で、ナゼか中世ヨーロッパ風ファンタジー世界が完全に受容されてるってやつ、まだまだ追ったるわい!」
一連の投稿に対し、セマク氏のフォロワーからは賛否のコメントが相次いだ。
『相変わらず典型的なセマク氏っぷりで草』
『基本、ヤンキー(日本のマンガ文化で言うところの)気質で草』
『ほんといっつもこの人了見が狭くないかなと……』
『自由な言論を標榜してる割に、ちょっとカッチン来たら誰かの表現や想像の自由は奪いにいくんかい』
『自伝がもし2位じゃなく1位だったら、別に噛付き発動してないやつやんw』
『別にどーでもいいじゃんってスルーしないところはまさに真骨頂』
『アキバ的なものの一切も否定し始めると世界中のオタクを敵に回すだろうな』
『これ、ただ単に試作中の翻訳アプリのPRしたかっただけじゃね?』
『でも確かにどうして日本はああなんだろ、侍とか忍者とかがテンプレ、ではないんだよなぁ』
一連の「騒動」を見ていく上では、もう一本の記事も紹介したい。
「セマク氏、日本限定で、中世ヨーロッパ的ファンタジー世界設定を『遠慮するよう言いたい』各社対応準備か」
「世界有数の実業家マーロン・セマク氏は17日、
『やはり、日本で中世ヨーロッパ的ファンタジーの世界設定がテンプレになっているのは、個人的にはとてつもなく問題だと主張したい。遠慮願えないものか?今後、それで儲けることをやめない企業は、ウチのSNSのアカウントを……おおっと』
の内容で、オーナーをつとめるSNSを更新した。
セマク氏は過日、自伝のプロモーションで訪日した際、この『問題視』を開始したようだ。
セマク氏の今回の発言を受け、菱場首相は記者団の囲み取材に答え、
「出来うる限りの注視を、愚直にたゆまずひたむきに行っていく」
とコメントした。
ゲーム業界では、
「睨まれて、社として垢BANを受けるのはやはりまずい。一旦(ゲームの提供を)止めざるを得ないだろう。
サ終を含め、大掛かりな世界設定の変更など、何をどこまでできるかだ。
まだ言えないが、我が社の看板的というかドル箱的なゲームタイトルも、いったんストップはやむを得ないだろう」
(あるソーシャルゲームの運営会社幹部)
と話すなど、危機感が広がっている。
日本のフォロワーからは、のきなみ悲鳴が上がっており、
『えっ嘘だろ……じゃあ今やってるゲームもサ終かも、思いっきり中世ヨーロッパ風ファンタジーだし』
『これじゃまるで現実世界のラスボスですよセマクさん……』
『現代では、大魔王は降臨している間じゃなく、その地を離れてから遠隔で隕石を降らせてくるんだな』
『えええ。あなたのラーメンうまし動画大好きなのに、この仕打ちはない……』
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