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4.新作ゲームで取扱説明書が無い状態……どうする?
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朝起きて、顔を洗い出来立ての朝食を食べる。
警備会社の事務員が今日の仕事は朝から降る雨で中止になったと、朝の6時半に連絡してきた。
俺たちのような警備員は、日々の仕事の配置等を人事の人が差配するのだが、雨天等で中止になると次の仕事の紹介はされず、休日となる。
当たり前のことだが時給制をとっているので、働かない時間は支給されず仕事取りやめに関して給与保証もない。 自分でもよくやっていくなぁ、って思う。もっと若ければ転職をしやすいのにねホント。
予定にない休暇になってしまったのは仕方がないことなので、今後の為に時間の有効利用をする。
2階の自室へ戻りステータス画面を起動させる。
昨日、発動させた【状態異常無効】スキルの影響か、すこぶる体調がいい。
母親から『なんか今日は顔色がいいね』なんて言われてしまった。
アレだけ浅黒く日焼けしていた顔が、鏡の中で程よい顔色になってた。
それも17歳ぐらいの体力的にも精力的にも健康体を持っていたころの俺の顔だった。
そう言えば…若返った容姿のまま、仕事現場に出ていたことに今更に気付いた。
少ししくじったかな?とは思う。
ヘルメット装着状態だと年齢不詳というか、他人から見れば一様に【おっさん】扱いがほとんどで、年齢通りに見られたことが無い。
毎朝ではないが、露出する顔や首筋や手首に日焼け止めクリームを塗って現場に出勤するが、照り付ける太陽により表皮は浅黒く焼かれてしまう。
だからヘルメット下から見える顔は、皆日焼けで黒く社会一般から見た警備員(ガードマン)の印象は、年寄りが多いということも加味されて、若かろうが老いていようが、同一視されるのだろう。
しかし、用心もかねて年相応の容姿を【幻影魔法】で全身にかけておいた。
こういったスキルや魔法を使用すると、よくある異世界モノ小説では【魔力消費】や、それに伴う【魔力枯渇】等によって意識が朦朧(もうろう)とする、なんて記述が偶(たま)にある。
昨日、各種の【魔法】を試した時も、今さっき使った【幻影魔法】の為に消費した魔力?があるようには感じなかった。使うそばから補充され何かが減った気がしない。
ステータス画面を見ると見慣れないスキルが表示されていた。
【森羅万象の理(ことわり)】というスキル。
昨日取得したスキルや魔術・魔法及び、使い方が何となく分かっている武技なんかも、全て網羅した統合スキルらしい。
創(つく)った覚えも無ければ、取得した覚えがない。一体どうなってるんだ?
こんな時、だいたいの異世界モノ小説だと【神】ないし、【ヘルプ】さんが教えてくれる算段なんだが……
力を授けてからこっち、【神様】からのアプローチは無い。
どうせ、天上の世界?から俺の状況を盗み見て、笑いまくってるんだろうけどな。
この【森羅万象の理】スキル取得についてモノ申したい!カモン、【神様!!】
…………………………………………………………………おかしいな
………………………………………………こういう時あるだろ?
…………………………ボケでもいいから、何か言ってよ。
返事がない、離れているか電源が切れている模様です、かよ。
心の中で強く願っても、【なしのつぶて】だった。侘(わび)しいなっ!
とりあえず、【森羅万象の理】スキルについて考えてみる。
スキルに対して興味を持ったり、考えようとすると、自然にそれに関する知識がにじみ出るように思い浮かぶ。
スキルは常時発動型で、ステータス画面のHP(ヒットポイントは生命力や体力のことだろう)とMP(まんま魔力値、マジックポイント)は、バグり、《表記できません》《なお上昇中》となっている。
ステータス画面もそうだけど,HPやMP、体力・魔力・攻撃力・抵抗力他etc…こういった表記は『異世界でチートをもらったら定番はこういう感じ?…』という要望を【力】が反映しているだけで、設定を変えれば表示しない仕様も可能だと分かる。
他に分かることといえば、昨日まで知らなかったことを今は知っている、事があげられるか。
【神】らしき存在から力をもらえたのも驚きだったけど、この世界の隣には別の【世界】……言うなれば【異世界】が存在している、らしい。
今現在の俺の能力値は【異世界】の人類を基準にしている。
なぜ【異世界】基準なのかというと、俺がいるこちらの【世界】には【異世界モノ小説】のような職業や類似クラスが今現代確認され無いので、近時の類例として【異世界】基準なんだとか。
今の俺のMPは魔術系職の【賢者】や【魔導師】クラスが使用できる【極大魔術】や、【神あるいは悪魔】クラスが使用する【神魔術(しんまじゅつ)】を余裕で数百発使用できる、らしい。
肉体も含めて【人類?】へ変貌(へんぼう)しているはずなのに、俺の体格は理想とする【細マッチョ】へと変化した以外は、見た目変わらなかった。
……………………………………………………………………………………
うん、とも、すんとも言わない【神様】は俺に何をさせるつもりなの?
まさか?とは思うけど、【末世(まっせ)】状態の世界で【救世主】たれ、とか…逆に【破壊神】として世界をリセットせよ!なんてのは……勘弁してくれよ、ホント。
そんな器じゃないのに……と思う。適任者探してください。
涼は自身の行く末に懊悩(おうのう)しながら、母親が用意してくれた昼食を口にした。
与えられた巨大な力の使い道を……
結論を先に言おう。ごめんね、使い道は浮かばなかった。
どうしようもないことは【神様】に丸投げしておけば、どうにかしてくれるだろう、多分。
……………………………………………………………………………………
まぁ、現実逃避はここまでにして。
実際のとこどうなんだろうね。
今の生活で使うには、手にした力は大きすぎて限定的な使い道しかないし、でも使いたい。
こう、一人で考えているから思いつかないんだろう。
スキルや魔法は思い浮かべれば、効果や範囲・規模なんかは調整できていいんだけど、いちいち思い浮かべるんじゃあ使いにくい。
でも、公言するには憚(はばか)られる。
涼は思い悩んだ末に対話形式でアドバイスやナビゲーションしてくれるモノを作ることにした。
【精霊】……この世界には伝承や物語、果ては異世界モノ小説では定番中の定番、マスコットキャラ要員だろう。
名前は……ナビゲーションだからナビ…何てのはありきたりだし、アドバイスだからアドはいけるかな?もうひとひねりで【アビ】にしよう。一瞬、どこかの暗黒魔導士みたいなキャラが浮かんだけど、無関係だ。
「創造する。我は求める…導き詠唱を補助しうる存在。その名は【アビ】」
せっかくなので周りに人がいないのを確かめ、手ぶりを交えながら呪文風に詠唱する。
手を胸の前で力をためるようなポーズをとりながらいると、中空に光が生じ体内魔力のようなものが凝縮して光に吸い込まれていく。
光はますます輝き、唐突にはじけた後に想像していた通りの精霊が存在していた、が。
《どうも~~アビですねん。よろしゅうに~》
誰が関西芸人呼んでんねん。いや。まぁ、見た目はいいし、しばらくはこのままでいこう。
妖精といえば、昆虫の羽をはやしている小人というのが定番だ。
アビは手のひらに乗れるサイズの色白の肌をした美少女で、角度によっては虹色のようにきらめく金髪を背中まで伸ばしている。
蒼い瞳はサファイアのように輝く目の覚めるようで聞き心地のいい声をしている。
ここまでは許容範囲かな。
しかし、昔の商売人のように華奢(きゃしゃ)な手で揉み手をし、上目遣いに見上げる抜け目ない眼差(まなざ)しや、背中にあるコウモリのような皮膜のある羽、その付け根部分はトカゲのような小さな鱗(うろこ)、おまけとしてお尻の部分から矢印のような黒いしっぽが伸びているさまは、小悪魔というほかなく何と無く胡散臭い。
「ああ、よろしく頼む。それでだな…」
「みなまで言わんでも、分かってまっせ旦那(だんな)」
「旦那…それは俺の事か?」
美少女顔で関西弁まではいいとして、俺を旦那扱い…こいつ作り直そうか?
「ちょっ、ちょー待ちーな旦那。旦那様、それは早計ちゅーもんですわ」
俺の考えが見えるようにしゃべるアビ。
そういう風にも作ったっけ。
ある程度、思考を読ませて無意識に魔術が発動するのを抑制するのを抑制するための【鍵(かぎ)】の役割も兼ねていたな。
思考に浮かんだだけで、即実行してしまうと過剰な結果になりうる事態もあるかもしれない、と考えたんだった。
その上で俺の中にある【森羅万象の理】が与えた能力の詳細の説明役、敵対対象との戦闘中の魔術支援や補助も行う、個人マネージャーみたいな奴(やつ)で短絡的な決定にも一応ストップをかけてきたのだろう。
多分に自分の存在もかかっているわけだけども。
「いやーな、旦那様。わて(私)のような魂ある精霊体を作れるのは、今んとこ1回限りやねん」
どういうことだ?言葉にするのがめんどくさくなったので、思考するままに考えてみる。
どうせ考えてることは見えているはずだからな。
「そやかて…旦那様の声、聞きたいわー…すんません、うち調子乗りすぎていました」
少し、ウザったらしく感じてきたのが表情に出たのか、出現時から羽の羽ばたきもせず、俺の目の前で浮きながら土下座姿勢で平謝りのポーズをとった。
どうでもいい、とは思ったけど関西弁を聞いていると、時々分からない単語が出てくるものの意識の上でつながっているおかげか、何となく意味が分かる。
分かるんだが…いちいち意味をかみしめて理解していくのは本当に面倒なので、発声言語の変更を願う。
「分かりました。これでいいでしょうか?」
その媚(こ)びを売る上目遣いはやめろ。
もう少し砕けた感じで、これから長い付き合いになるのにしゃちこばった言葉づかいでは疲れる。
「注文多い旦那やで、ホンマ…すいません分かってまんがな…じゃなかった、分かったよ旦那(だんな)」
旦那呼ばわりは変更なしか、まぁこんなもんでいいか。
「で?なんでできない。確か、生物の創造もできるのが【創造魔法】だろ?」
「そうなんですけど、旦那の【森羅万象の理】スキルには制限がかかっているんです。【前任者】からの」
前任者?前任者ってなんだよ?
「旦那~声で会話しましょうよ~…アッすいません。調子に乗りました。コホン、前任者というのはこの%$#%&%$%&$%&です。ありゃ?やっぱり制限されているようです」
突然アビの言葉が意味をなさなくなり、理解出来なくなった。
余程、重要なことのようで今の俺では知る権利が無い、というわけか。
「概(おおむ)ね、そういう感じです。あっ前任者からの言葉は伝えてもいいそうです」
『最初から何でもありなんて面白くないだろ?コツコツとゆっくりでもいい、いろんな事を体験しながら身に着けていけばいい。そうすれば自(おの)ずと答えにはたどり着く。』
アビの思考はあえて読めない仕様にしているのは幸いだろう。
制限されて意味不明な知識が、あり過ぎるのも頭が痛い話でもある。
だから前任者の言葉は今の俺にとってはありがたかった。
ゲームでも最初から内容がわかっていたら楽しさ半減で最後まで楽しめなくなる。
何の前任者かはさておき、
「じゃあ…この世界の神にアクセスする方法はないか?」
この力を与えた元凶(げんきょう)に話を聞く方法があれば……という淡い希望は潰(つい)えた。
「この世界に【神】はいません。旦那の力は元々#$#%%これも制限かかりますか…旦那は%&$#$&の殻(から)というか、力をため込む【器(うつわ)】らしいです。だから、これからその【器】を埋めるために%$#&%の欠片(かけら)を探すのが当面の課題になるでしょうね」
俺自身が【器】だという。
確かにそんな感じだといえばそうなのかな?ぐらいの感じか。内側から力が湧きだすのに、まだまだいっぱいいっぱいではなく隙間があるように感じる。制限され何かわからないモノを探す、お手上げだな。
ていうかアレ神じゃなかったのか。じゃあアイツ何だったんだ?
「どこにあるのかわかるか?その○○は」
「○○じゃなくて#$%&&ですってば。結論から言えば【森羅万象の理】を使ってもわかりません。制限されているのが主な理由ですね。あと、旦那に接触した存在は#$%&%$#&%であって#$#%&%%なので【神】じゃないそうで……この世界の【管理人】役は別にいます。【G-3】とだけしかわかりませんね」
【G-3】ね。そいつにもアクセス不能なんだろうな。
難解な超ハードモードで制限チート持ちか…まぁ、しばらくはアビと二人三脚でやるとして、スキルにレベル表記がなかったらどうやって使いこなしていくかは……やべっ、この展開からくる答えは一つなんだろうなぁ、つまり…
「その通りです。スキルは使ってなんぼ。実践あるのみです。差し当たっては旦那の今の生活の向上と懐具合(ふところぐあい)を暖かくする方法ですが…」
アビの提案は俺の常識を覆す内容だった。
……………………………………………………………………………………
先に進まない内容です。当初はR18モノも考えていましたが、アルファフォリスさんの中ではBLものしかないみたいで、敷居が高そうなのもありますし、そこまでもっていけていないので設定変更も考え中です。
副題追加しました。
警備会社の事務員が今日の仕事は朝から降る雨で中止になったと、朝の6時半に連絡してきた。
俺たちのような警備員は、日々の仕事の配置等を人事の人が差配するのだが、雨天等で中止になると次の仕事の紹介はされず、休日となる。
当たり前のことだが時給制をとっているので、働かない時間は支給されず仕事取りやめに関して給与保証もない。 自分でもよくやっていくなぁ、って思う。もっと若ければ転職をしやすいのにねホント。
予定にない休暇になってしまったのは仕方がないことなので、今後の為に時間の有効利用をする。
2階の自室へ戻りステータス画面を起動させる。
昨日、発動させた【状態異常無効】スキルの影響か、すこぶる体調がいい。
母親から『なんか今日は顔色がいいね』なんて言われてしまった。
アレだけ浅黒く日焼けしていた顔が、鏡の中で程よい顔色になってた。
それも17歳ぐらいの体力的にも精力的にも健康体を持っていたころの俺の顔だった。
そう言えば…若返った容姿のまま、仕事現場に出ていたことに今更に気付いた。
少ししくじったかな?とは思う。
ヘルメット装着状態だと年齢不詳というか、他人から見れば一様に【おっさん】扱いがほとんどで、年齢通りに見られたことが無い。
毎朝ではないが、露出する顔や首筋や手首に日焼け止めクリームを塗って現場に出勤するが、照り付ける太陽により表皮は浅黒く焼かれてしまう。
だからヘルメット下から見える顔は、皆日焼けで黒く社会一般から見た警備員(ガードマン)の印象は、年寄りが多いということも加味されて、若かろうが老いていようが、同一視されるのだろう。
しかし、用心もかねて年相応の容姿を【幻影魔法】で全身にかけておいた。
こういったスキルや魔法を使用すると、よくある異世界モノ小説では【魔力消費】や、それに伴う【魔力枯渇】等によって意識が朦朧(もうろう)とする、なんて記述が偶(たま)にある。
昨日、各種の【魔法】を試した時も、今さっき使った【幻影魔法】の為に消費した魔力?があるようには感じなかった。使うそばから補充され何かが減った気がしない。
ステータス画面を見ると見慣れないスキルが表示されていた。
【森羅万象の理(ことわり)】というスキル。
昨日取得したスキルや魔術・魔法及び、使い方が何となく分かっている武技なんかも、全て網羅した統合スキルらしい。
創(つく)った覚えも無ければ、取得した覚えがない。一体どうなってるんだ?
こんな時、だいたいの異世界モノ小説だと【神】ないし、【ヘルプ】さんが教えてくれる算段なんだが……
力を授けてからこっち、【神様】からのアプローチは無い。
どうせ、天上の世界?から俺の状況を盗み見て、笑いまくってるんだろうけどな。
この【森羅万象の理】スキル取得についてモノ申したい!カモン、【神様!!】
…………………………………………………………………おかしいな
………………………………………………こういう時あるだろ?
…………………………ボケでもいいから、何か言ってよ。
返事がない、離れているか電源が切れている模様です、かよ。
心の中で強く願っても、【なしのつぶて】だった。侘(わび)しいなっ!
とりあえず、【森羅万象の理】スキルについて考えてみる。
スキルに対して興味を持ったり、考えようとすると、自然にそれに関する知識がにじみ出るように思い浮かぶ。
スキルは常時発動型で、ステータス画面のHP(ヒットポイントは生命力や体力のことだろう)とMP(まんま魔力値、マジックポイント)は、バグり、《表記できません》《なお上昇中》となっている。
ステータス画面もそうだけど,HPやMP、体力・魔力・攻撃力・抵抗力他etc…こういった表記は『異世界でチートをもらったら定番はこういう感じ?…』という要望を【力】が反映しているだけで、設定を変えれば表示しない仕様も可能だと分かる。
他に分かることといえば、昨日まで知らなかったことを今は知っている、事があげられるか。
【神】らしき存在から力をもらえたのも驚きだったけど、この世界の隣には別の【世界】……言うなれば【異世界】が存在している、らしい。
今現在の俺の能力値は【異世界】の人類を基準にしている。
なぜ【異世界】基準なのかというと、俺がいるこちらの【世界】には【異世界モノ小説】のような職業や類似クラスが今現代確認され無いので、近時の類例として【異世界】基準なんだとか。
今の俺のMPは魔術系職の【賢者】や【魔導師】クラスが使用できる【極大魔術】や、【神あるいは悪魔】クラスが使用する【神魔術(しんまじゅつ)】を余裕で数百発使用できる、らしい。
肉体も含めて【人類?】へ変貌(へんぼう)しているはずなのに、俺の体格は理想とする【細マッチョ】へと変化した以外は、見た目変わらなかった。
……………………………………………………………………………………
うん、とも、すんとも言わない【神様】は俺に何をさせるつもりなの?
まさか?とは思うけど、【末世(まっせ)】状態の世界で【救世主】たれ、とか…逆に【破壊神】として世界をリセットせよ!なんてのは……勘弁してくれよ、ホント。
そんな器じゃないのに……と思う。適任者探してください。
涼は自身の行く末に懊悩(おうのう)しながら、母親が用意してくれた昼食を口にした。
与えられた巨大な力の使い道を……
結論を先に言おう。ごめんね、使い道は浮かばなかった。
どうしようもないことは【神様】に丸投げしておけば、どうにかしてくれるだろう、多分。
……………………………………………………………………………………
まぁ、現実逃避はここまでにして。
実際のとこどうなんだろうね。
今の生活で使うには、手にした力は大きすぎて限定的な使い道しかないし、でも使いたい。
こう、一人で考えているから思いつかないんだろう。
スキルや魔法は思い浮かべれば、効果や範囲・規模なんかは調整できていいんだけど、いちいち思い浮かべるんじゃあ使いにくい。
でも、公言するには憚(はばか)られる。
涼は思い悩んだ末に対話形式でアドバイスやナビゲーションしてくれるモノを作ることにした。
【精霊】……この世界には伝承や物語、果ては異世界モノ小説では定番中の定番、マスコットキャラ要員だろう。
名前は……ナビゲーションだからナビ…何てのはありきたりだし、アドバイスだからアドはいけるかな?もうひとひねりで【アビ】にしよう。一瞬、どこかの暗黒魔導士みたいなキャラが浮かんだけど、無関係だ。
「創造する。我は求める…導き詠唱を補助しうる存在。その名は【アビ】」
せっかくなので周りに人がいないのを確かめ、手ぶりを交えながら呪文風に詠唱する。
手を胸の前で力をためるようなポーズをとりながらいると、中空に光が生じ体内魔力のようなものが凝縮して光に吸い込まれていく。
光はますます輝き、唐突にはじけた後に想像していた通りの精霊が存在していた、が。
《どうも~~アビですねん。よろしゅうに~》
誰が関西芸人呼んでんねん。いや。まぁ、見た目はいいし、しばらくはこのままでいこう。
妖精といえば、昆虫の羽をはやしている小人というのが定番だ。
アビは手のひらに乗れるサイズの色白の肌をした美少女で、角度によっては虹色のようにきらめく金髪を背中まで伸ばしている。
蒼い瞳はサファイアのように輝く目の覚めるようで聞き心地のいい声をしている。
ここまでは許容範囲かな。
しかし、昔の商売人のように華奢(きゃしゃ)な手で揉み手をし、上目遣いに見上げる抜け目ない眼差(まなざ)しや、背中にあるコウモリのような皮膜のある羽、その付け根部分はトカゲのような小さな鱗(うろこ)、おまけとしてお尻の部分から矢印のような黒いしっぽが伸びているさまは、小悪魔というほかなく何と無く胡散臭い。
「ああ、よろしく頼む。それでだな…」
「みなまで言わんでも、分かってまっせ旦那(だんな)」
「旦那…それは俺の事か?」
美少女顔で関西弁まではいいとして、俺を旦那扱い…こいつ作り直そうか?
「ちょっ、ちょー待ちーな旦那。旦那様、それは早計ちゅーもんですわ」
俺の考えが見えるようにしゃべるアビ。
そういう風にも作ったっけ。
ある程度、思考を読ませて無意識に魔術が発動するのを抑制するのを抑制するための【鍵(かぎ)】の役割も兼ねていたな。
思考に浮かんだだけで、即実行してしまうと過剰な結果になりうる事態もあるかもしれない、と考えたんだった。
その上で俺の中にある【森羅万象の理】が与えた能力の詳細の説明役、敵対対象との戦闘中の魔術支援や補助も行う、個人マネージャーみたいな奴(やつ)で短絡的な決定にも一応ストップをかけてきたのだろう。
多分に自分の存在もかかっているわけだけども。
「いやーな、旦那様。わて(私)のような魂ある精霊体を作れるのは、今んとこ1回限りやねん」
どういうことだ?言葉にするのがめんどくさくなったので、思考するままに考えてみる。
どうせ考えてることは見えているはずだからな。
「そやかて…旦那様の声、聞きたいわー…すんません、うち調子乗りすぎていました」
少し、ウザったらしく感じてきたのが表情に出たのか、出現時から羽の羽ばたきもせず、俺の目の前で浮きながら土下座姿勢で平謝りのポーズをとった。
どうでもいい、とは思ったけど関西弁を聞いていると、時々分からない単語が出てくるものの意識の上でつながっているおかげか、何となく意味が分かる。
分かるんだが…いちいち意味をかみしめて理解していくのは本当に面倒なので、発声言語の変更を願う。
「分かりました。これでいいでしょうか?」
その媚(こ)びを売る上目遣いはやめろ。
もう少し砕けた感じで、これから長い付き合いになるのにしゃちこばった言葉づかいでは疲れる。
「注文多い旦那やで、ホンマ…すいません分かってまんがな…じゃなかった、分かったよ旦那(だんな)」
旦那呼ばわりは変更なしか、まぁこんなもんでいいか。
「で?なんでできない。確か、生物の創造もできるのが【創造魔法】だろ?」
「そうなんですけど、旦那の【森羅万象の理】スキルには制限がかかっているんです。【前任者】からの」
前任者?前任者ってなんだよ?
「旦那~声で会話しましょうよ~…アッすいません。調子に乗りました。コホン、前任者というのはこの%$#%&%$%&$%&です。ありゃ?やっぱり制限されているようです」
突然アビの言葉が意味をなさなくなり、理解出来なくなった。
余程、重要なことのようで今の俺では知る権利が無い、というわけか。
「概(おおむ)ね、そういう感じです。あっ前任者からの言葉は伝えてもいいそうです」
『最初から何でもありなんて面白くないだろ?コツコツとゆっくりでもいい、いろんな事を体験しながら身に着けていけばいい。そうすれば自(おの)ずと答えにはたどり着く。』
アビの思考はあえて読めない仕様にしているのは幸いだろう。
制限されて意味不明な知識が、あり過ぎるのも頭が痛い話でもある。
だから前任者の言葉は今の俺にとってはありがたかった。
ゲームでも最初から内容がわかっていたら楽しさ半減で最後まで楽しめなくなる。
何の前任者かはさておき、
「じゃあ…この世界の神にアクセスする方法はないか?」
この力を与えた元凶(げんきょう)に話を聞く方法があれば……という淡い希望は潰(つい)えた。
「この世界に【神】はいません。旦那の力は元々#$#%%これも制限かかりますか…旦那は%&$#$&の殻(から)というか、力をため込む【器(うつわ)】らしいです。だから、これからその【器】を埋めるために%$#&%の欠片(かけら)を探すのが当面の課題になるでしょうね」
俺自身が【器】だという。
確かにそんな感じだといえばそうなのかな?ぐらいの感じか。内側から力が湧きだすのに、まだまだいっぱいいっぱいではなく隙間があるように感じる。制限され何かわからないモノを探す、お手上げだな。
ていうかアレ神じゃなかったのか。じゃあアイツ何だったんだ?
「どこにあるのかわかるか?その○○は」
「○○じゃなくて#$%&&ですってば。結論から言えば【森羅万象の理】を使ってもわかりません。制限されているのが主な理由ですね。あと、旦那に接触した存在は#$%&%$#&%であって#$#%&%%なので【神】じゃないそうで……この世界の【管理人】役は別にいます。【G-3】とだけしかわかりませんね」
【G-3】ね。そいつにもアクセス不能なんだろうな。
難解な超ハードモードで制限チート持ちか…まぁ、しばらくはアビと二人三脚でやるとして、スキルにレベル表記がなかったらどうやって使いこなしていくかは……やべっ、この展開からくる答えは一つなんだろうなぁ、つまり…
「その通りです。スキルは使ってなんぼ。実践あるのみです。差し当たっては旦那の今の生活の向上と懐具合(ふところぐあい)を暖かくする方法ですが…」
アビの提案は俺の常識を覆す内容だった。
……………………………………………………………………………………
先に進まない内容です。当初はR18モノも考えていましたが、アルファフォリスさんの中ではBLものしかないみたいで、敷居が高そうなのもありますし、そこまでもっていけていないので設定変更も考え中です。
副題追加しました。
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だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
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