タイムリープ探偵、時巻モドルの事件簿

寝倉響

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対決!殺魚事件③

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「放課後残っていたクラスメイトは3人だけ、だけど他のクラスのやつが犯人の可能性もある。俺はこれから他のクラスに聞き込みいってくるぜ」
 ケイジくんはまだ授業時間なのに教室を出て行ってしまった。刑事が夢のケイジくんだ忍び足で教室を出て他のクラスにひっそりと入ることも簡単にできちゃうはずだ。

「とりあえず玉止くんと笛口さんに話を聞いてみようよ」
 僕はスケットくんと一緒に玉止くんの席へ。

「ゴクッゴクッ……どうした2人とも」
 ちょうど水筒で飲み物を飲んでいた玉止くんは、野球クラブの打野くんと同じくらい運動神経がよい。
 身長も高くて足も長い、こないだの椅子取りゲームでもベスト8に残っていた強者だ。

「昨日の放課後何をしてたか話聞きたくて」

「昨日はサッカークラブの練習を見学してたよ。ほら俺ゴールキーパーなのに右手がこれだからさ」
 玉止くんの右手は包帯がぐるぐる巻きになっていた。見てるだけでも痛そうだ。
 話を聞くと最近ゴールキーパー練習中に突き指をしたみたいで、重たいものを持たないようにと病院の先生から言われているみたいだ。

「サッカークラブに行った後って教室に戻ったりしなかった?」

「あー。水筒を忘れちゃってさ16時30分頃に教室に戻ったよ」
 玉止くんは記憶を思い出すように顔を右上に向けて腕を組んでいる。

「その教室で誰かに会わなかった?」
 
「教室には誰もいなかったな。忘れ物を取ってから、担持先生から水槽を満杯にしといてって言われたから水槽に水いれたよ」
 玉止くんの言葉を聞いて水槽の方を見てみる。
 今は確かに満杯に水が入っている。満杯に入れすぎたから周りに水がこぼれていたのか。
 
 担持先生のお願いしたことが本当なら、飼馬くんは水換えをしていないことになるのか?
 これは確認する必要がある。もし飼馬くんが水換えをしていないなら水槽の水は汚れたままでメダちゃんが元気が無くなったのもうなずける。

「時間よ巻きもどれ!タイムリープ!ゴー!」
 僕はタイムメガネで昨日の16時9分にタイムリープした。
 飼馬くんの話によると16時10分に水換えが終わったから1分前だったらちょうど水換えをしている途中のはずだ。

 僕はそーっと教室の外から中を覗いてみる。水槽の前でバケツとポンプを持って水換えをしている飼馬くんの姿が見えた。飼馬くんは慣れた手つきで水換えをしている。

「よかった。飼馬くんはちゃんと水換えをしていたんだ」
 ちょうど水換えを終わった様子で急いで片付けをしている。
 塾の時間が近づいてきている飼馬くんは教室の前にある時計をちらちら見ている。
 
 慌ててバケツとポンプを掃除用のロッカーへ入れるとランドセルを片側の肩に背負って走って教室から出て行った。
 僕は誰もいなくなった教室に入って水槽を確認する。

「水が8割くらいまでしか入っていない」
 飼馬くんはちゃんと水換えをしていたけど、水を満杯にしていなかった。
 だからそれを見つけた担持先生は忘れ物をしてタイミングよく戻ってきた玉止くんに水を入れるのをお願いしたんだ。
 水槽の中のメダちゃんは元気に泳いでいる。水槽の水も透明で綺麗だ。
 その様子を眺めているとタイムメガネが3分間の終わりを知らせて、僕はオリジナルタイムに戻ってきた。

 僕はスケットくんはケイジくんと同じように忍び足で教室を出た。職員室で担持先生に話を聞きに行くためだ。

「おー時巻に助友、どうした?まだ自習の時間中だろ?」
 担持先生に言われて思い出した。まだ1時間目の授業中だったんだ。

「えーっと分からない問題がありまして……」
 僕が苦しまぎれとっさにそう言うとスケットくんもうんうんと何度もうなずいた。

「なるほどな!それで教科書かノートは持ってきたのか?」
 担持先生は座ったまま僕たちの表情を観察するようにまじまじ見つめる。
 ごまかそうと思ったけど教科書やノートなんて持ってきてない。どうしたものか。
 
「ごめんなさい!実はメダちゃんの元気が無くなっていて、それを調べるために担持先生に話を聞きにきました」
 僕は素直に謝って頭を下げた。

「そういうことか。授業中抜け出すのはよくないが、メダちゃんの元気がないのは俺も心配だ。なんでも聞いてくれ」
 担持先生の真剣な表情に少し笑みがあらわれた。
 僕とスケットくんはお互いの顔を見あってホッとため息をはいた。

「担持先生、昨日なんですけど放課後、教室に戻りましたか?」

「ああ戻ったよ。放課後残ってる生徒がいないかどうか確認しに」

「その時、玉止くんに会いました?あと時間は16時30分くらいでしたか?」
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