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謎路小学校カンニング事件②
しおりを挟む「時巻くん、テストどうだった?きっと名探偵のことだからどうせ100点なんだろうな~」
真っ先に僕に声をかけてきたのはクラスのお調子者の八坂笑也(やさかしょうや)くん。
八坂くんは身長順で並ぶ時に男子の中で一番背が低いからいっつも先頭で腰に手を当てている。他の女子のクラスメイトとちょうど同じくらいの身長だから、野球クラブに入っている打野投野(うちのとうや)くんによくからかわれている。
「そういう八坂くんはどうだったの?」
「俺は100点間違いないよ。あっはは!そうだ!テストの点数で勝負しようよ時巻くん!」
自信満々でニタリと笑う八坂くん。腕を組んで足を開いて立っている。そして青色の消しゴム付きの鉛筆を耳にかけている。鼻をふんふんと吹かして自信満々な様子。
そこにスケットくんがやってきて僕の耳元でつぶやいた。
「モドルくん。八坂くんは算数が大の苦手なんだよ。前回のテストなんて20点だったんだよ。勝負したら絶対勝てるよ」
僕はスケットくんの言葉を聞くと、不思議と自信が湧き出てきた。少なくとも半分は解けたんだ。きっと50点は取れているはず。
「いーよ!勝負しよう!負けた方がジュースを買った人に買ってあげる!これでどう?」
「いーぜ!やってやる!」
僕は立ち上がって、僕をにらみつけていた八坂くんに対抗するためにらみ返した。すると八坂くんはまたニタリと笑って下からさらににらみ返した。
「よっしゃ! みんな聞いて! 俺があの名探偵と算数テストで勝負するぞ!」
八坂くんがクラスメイトに大きな声で広めると、他のクラスメイトはさらにガヤガヤと騒ぎ始めた。
勉強嫌いの八坂くんが探偵の僕と勝負するんだ、みんながザワザワするのもうなずける。
「ちょっとみんな静かに!」
そんな時いつも注意してくれるのがクラスで1番勉強が得意で学級委員長の天道才子(てんどうさいこ)ちゃん。
四角いメガネをキリッとかけて、髪を三つ編みに結んだ女の子だ。八坂くんの後ろの席に座っているから、八坂くんがうるさい時にいつも注意してくれている。
才子ちゃんのお陰でクラスメイトは静かに自習に戻ることが出来た。
そんなこんなで担持先生がテスト用紙を持って戻ってきた。担持先生は教卓の上でテスト用紙をトントンと整えると口を開いた。
「さあ今回はなんと……100点が……2人もいるぞ!」
担持先生のその一言に教室内は騒然とする。1人は天道才子ちゃんだと、他のクラスメイトも確信している。だとして、もう1人は一体誰なんだろう。
担持先生がひとりひとり名前を読み上げると呼ばれた生徒はテスト用紙を受け取りに行く。
ひとりひとりに今回は良かったなとか、またダメだったなとか、一言付け足してくれるからクラスメイトの点数が高いのか低いのかがなんとなくわかる。
「時巻くーん」
担持先生に名前を呼ばれて恐る恐る教卓へ。そしてテストを受け取った。
「前回と変わらないなー。推理ばっかりしないで勉強もちゃんとするように」
テスト用紙には55点と書かれていた。確か前回が50点だったからほぼ同じくらいだ。さすがは先生、クラスメイト全員の前回の点数を覚えている記憶力はさすがだ。
僕が席に戻ると入れ替わりで八坂くんが呼ばれた。
自信満々な様子で胸を張りながら子豚のようにふんふん鼻を吹かしてテストを受け取った。
「八坂くん。今回はよくやったな。まさか八坂くんがここまで出来るとは思わなかったぞ!」
担持先生の絶賛のコメント。八坂くんはそのまま振り返り100点と書かれたテスト用紙を頭上に掲げて猛アピールした。ニタリとした笑顔を僕に向けている。
八坂くんが手に持っているテスト用紙はたしかに全部の問題が赤丸になっていて大きく100点と書かれている。
教え子の成長に嬉しそうな担持先生とは対照的に僕を含めたクラスメイトの表情はどうも納得のいっていないような表情だ。
それもそのはずクラスでも下から数えた方が早いほど勉強が苦手な八坂くんが100点を取るなんて怪しいに決まっている。なかでも算数は一番苦手なはずだ。
最後に八坂くんの後の席に座っている才子ちゃんがテスト用紙を受け取り、担持先生からもう1人の100点満点だと紹介された。
才子ちゃんが100点を取ったことにはクラスメイトみんな納得してるみたいで拍手を送る。
才子ちゃんは少し照れくさそうに頬を赤らめて早足で自分の席に戻った。
ちょうどタイミング良く授業の終わりのチャイムが鳴り響く。
「はーい。これで一時間目の授業は終わりだ。みんな八坂くんを見習って次のテストではしっかり勉強するように!」
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