21 / 21
第一章
この世の地獄
しおりを挟む
着弾、周囲に粘性の油が飛び散り、業火となる。
収まったと思った瞬間、そこから新たな砲閃華が生え、今度は至近に向け種を放出。更に……。
終わりなき炎の地獄へと私兵団は叩き込まれる事になった。
「熱い、熱い!!」
「くそ、駄目だ。水で火が消えねえ!どうなってんだ!!」
この世界では未だ水をかけて消えない火、というものは一般的なものではない。しかし、この世界には魔法という通常ではありえない現象を引き起こす手段がある。結果、自然と彼らの考えは「魔法の火」という考えに行きつく。
「魔法使い!火を消してくれ!!」
「無茶を言うな!!これだけの火、どれだけ魔力が必要だと思うんだ!!」
魔法使いは私兵団にもいた。
ただし、周囲は既に火で囲まれており、この火を全て消せ、というのは確かに無理があるとは誰もが理解出来た。
「じゃあ、どうすんだよ!」
「逃げるんだよ!急げ!!」
「どっちに!?」
「騎士団の方だろ!!」
「どっちなんだよ!!」
周囲は炎と煙に囲まれ、しかも夜の闇が合わさり、視界がまともに効かない。こうなると、どちらに逃げればいいのかももう分からない。あっちだ、こっちだと声が響き、混乱は更に加速する。こうなってしまえば貴族も傭兵も関係ない。誰もが死にたくないと逃げ惑う。
「どけ!邪魔だ!!」
「きっ、貴様!私を誰だと!!」
「知らねえよ!!早く逃げねえと死ぬぞ!!」
そこにあるのは死にたくない、という一心。
この惨状を真っ先に把握したのは炎の外にいた騎士団だった。
「敵襲だっ!!」
「私兵団の所が炎に包まれているぞ!!」
急ぎ駆けつけた騎士達はまず水をかけたが、かえって火は広がった。
そこで即座に方針を変更、土をかけるよう指示が為されたのは経験豊富な騎士団らしい迅速な行動だったが……。
「駄目だ!!土がうまく掘れん!!」
「くそっ!!水がしみ込んでて……」
水を含んだ土は泥となり、より重量を増す。おまけに粘ついて掘りづらい。おまけに範囲が広すぎて、対処は困難だった。水なら幾らでもあるが、土はまず掘らないといけない。そして、明らかに火が広がる速度の方が圧倒的に早かった。
「やむをえん!魔法による消火を許可する!!」
魔法を過度に使用した場合、消耗が激しい。
この場合、翌日の森への侵攻を取りやめるという事でもあったが、即座に騎士団の魔法使い達は動いた。
「私兵団への道を確保するんだ!!」
「全部を消そうなんて考えるなっ!!脱出路の確保が最優先だ!!」
絶え間なく指示が飛ぶ。
その指示によって統一された動きで炎に道を穿ってゆく。
そうして私兵団への道が確保されだしたが……それは同時に私兵団の脱出し損ねた者との遭遇でもあった。そうした者はいずれも自分自身が新たな燃える燃料となっていた。人の燃える臭いを嗅いで、吐き気をもよおす騎士も多数いた。
無理もない。普通、人が燃える臭いなんて嗅ぐ機会がある訳がない。
それでも救助を行おうとするが、ここで問題になったのが声だった。なにせ、周囲は煙だらけでこちらが下手に声を出せば、喉を傷める有様。
悲鳴と怒号がここまで響き、届いているか、私兵団が騎士団の救援だと理解出来るかも分からない。
そんな中だからか。
侵入者がいる事に誰も気づく余裕がある者はいなかった。
収まったと思った瞬間、そこから新たな砲閃華が生え、今度は至近に向け種を放出。更に……。
終わりなき炎の地獄へと私兵団は叩き込まれる事になった。
「熱い、熱い!!」
「くそ、駄目だ。水で火が消えねえ!どうなってんだ!!」
この世界では未だ水をかけて消えない火、というものは一般的なものではない。しかし、この世界には魔法という通常ではありえない現象を引き起こす手段がある。結果、自然と彼らの考えは「魔法の火」という考えに行きつく。
「魔法使い!火を消してくれ!!」
「無茶を言うな!!これだけの火、どれだけ魔力が必要だと思うんだ!!」
魔法使いは私兵団にもいた。
ただし、周囲は既に火で囲まれており、この火を全て消せ、というのは確かに無理があるとは誰もが理解出来た。
「じゃあ、どうすんだよ!」
「逃げるんだよ!急げ!!」
「どっちに!?」
「騎士団の方だろ!!」
「どっちなんだよ!!」
周囲は炎と煙に囲まれ、しかも夜の闇が合わさり、視界がまともに効かない。こうなると、どちらに逃げればいいのかももう分からない。あっちだ、こっちだと声が響き、混乱は更に加速する。こうなってしまえば貴族も傭兵も関係ない。誰もが死にたくないと逃げ惑う。
「どけ!邪魔だ!!」
「きっ、貴様!私を誰だと!!」
「知らねえよ!!早く逃げねえと死ぬぞ!!」
そこにあるのは死にたくない、という一心。
この惨状を真っ先に把握したのは炎の外にいた騎士団だった。
「敵襲だっ!!」
「私兵団の所が炎に包まれているぞ!!」
急ぎ駆けつけた騎士達はまず水をかけたが、かえって火は広がった。
そこで即座に方針を変更、土をかけるよう指示が為されたのは経験豊富な騎士団らしい迅速な行動だったが……。
「駄目だ!!土がうまく掘れん!!」
「くそっ!!水がしみ込んでて……」
水を含んだ土は泥となり、より重量を増す。おまけに粘ついて掘りづらい。おまけに範囲が広すぎて、対処は困難だった。水なら幾らでもあるが、土はまず掘らないといけない。そして、明らかに火が広がる速度の方が圧倒的に早かった。
「やむをえん!魔法による消火を許可する!!」
魔法を過度に使用した場合、消耗が激しい。
この場合、翌日の森への侵攻を取りやめるという事でもあったが、即座に騎士団の魔法使い達は動いた。
「私兵団への道を確保するんだ!!」
「全部を消そうなんて考えるなっ!!脱出路の確保が最優先だ!!」
絶え間なく指示が飛ぶ。
その指示によって統一された動きで炎に道を穿ってゆく。
そうして私兵団への道が確保されだしたが……それは同時に私兵団の脱出し損ねた者との遭遇でもあった。そうした者はいずれも自分自身が新たな燃える燃料となっていた。人の燃える臭いを嗅いで、吐き気をもよおす騎士も多数いた。
無理もない。普通、人が燃える臭いなんて嗅ぐ機会がある訳がない。
それでも救助を行おうとするが、ここで問題になったのが声だった。なにせ、周囲は煙だらけでこちらが下手に声を出せば、喉を傷める有様。
悲鳴と怒号がここまで響き、届いているか、私兵団が騎士団の救援だと理解出来るかも分からない。
そんな中だからか。
侵入者がいる事に誰も気づく余裕がある者はいなかった。
0
お気に入りに追加
73
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
弓使いの成り上がり~「弓なんて役に立たない」と追放された弓使いは実は最強の狙撃手でした~
平山和人
ファンタジー
弓使いのカイトはSランクパーティー【黄金の獅子王】から、弓使いなんて役立たずと追放される。
しかし、彼らは気づいてなかった。カイトの狙撃がパーティーの危機をいくつも救った来たことに、カイトの狙撃が世界最強レベルだということに。
パーティーを追放されたカイトは自らも自覚していない狙撃で魔物を倒し、美少女から惚れられ、やがて最強の狙撃手として世界中に名を轟かせていくことになる。
一方、カイトを失った【黄金の獅子王】は没落の道を歩むことになるのであった。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
2回目チート人生、まじですか
ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆
ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで!
わっは!!!テンプレ!!!!
じゃない!!!!なんで〝また!?〟
実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。
その時はしっかり魔王退治?
しましたよ!!
でもね
辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!!
ということで2回目のチート人生。
勇者じゃなく自由に生きます?
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
辺境で魔物から国を守っていたが、大丈夫になったので新婚旅行へ出掛けます!
naturalsoft
ファンタジー
王国の西の端にある魔物の森に隣接する領地で、日々魔物から国を守っているグリーンウッド辺境伯爵は、今日も魔物を狩っていた。王国が隣接する国から戦争になっても、王国が内乱になっても魔物を狩っていた。
うん?力を貸せ?無理だ!
ここの兵力を他に貸し出せば、あっという間に国中が魔物に蹂躙されるが良いのか?
いつもの常套句で、のらりくらりと相手の要求を避けるが、とある転機が訪れた。
えっ、ここを守らなくても大丈夫になった?よし、遅くなった新婚旅行でも行くか?はい♪あなた♪
ようやく、魔物退治以外にやる気になったグリーンウッド辺境伯の『家族』の下には、実は『英雄』と呼ばれる傑物達がゴロゴロと居たのだった。
この小説は、新婚旅行と称してあっちこっちを旅しながら、トラブルを解決して行き、大陸中で英雄と呼ばれる事になる一家のお話である!
(けっこうゆるゆる設定です)
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる