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「う~ん…。それじゃあどこを逢引場所にしようか?」
彼は後ろ手に鍵をかけ、アタシに近寄ってくる。
「学校の中はもうやめましょう? 気が気じゃなくなるわ」
「でもスリルがあって良いでしょ?」
彼は悪魔の微笑を浮かべると、その腕の中にアタシを引き入れた。
「―会いたかった。美咲」
「…1時間前の授業で会ったじゃない」
「こうやって1人占めするのは、この前の休日以来だろう? 美咲の部屋の中でさ…」
「やっやめてってば!」
腕の中でもがくと、彼はクスクス笑って腕の力を少しゆるめてくれた。
「ゴメンゴメン。あの時の美咲があんまり可愛かったから」
…1人暮らしをしてて、良かったのか悪かったのか…。
合い鍵を渡してしまったせいで、彼は何時でも気が向けば、好きな時にわたしの部屋に出入りしている。
「今度はホテルにしよっか? 裏通りなら、誰にも見つからないかもよ?」
「見つかるに決まっているでしょう! あの裏通りで補導されたウチの生徒の数、教えてあげましょうか?」
警察からも見張られているあんな場所に行けば、アタシのクビはすぐに飛ぶ。
「冗談冗談。それじゃ、美咲の部屋で良いよ。あそこ、居心地良いもんな」
優しくアタシの頬や頭を撫でながら、愛おしそうに見つめてくる。
「…美咲、気付いてる?」
「何を?」
「この数週間で、すっごくキレイになった。生徒達の間でも評判になるぐらい」
「…あっそ」
「それってオレのせいだよね?」
「よく分かっているわね」
「そりゃ、美咲のことならば何でも」
得意げに笑い、キスをしてくる。
「んっ…」
彼のキスは、まだ正直慣れない。
数え切れないぐらい、キスをしたのに…まだ心臓に悪いキスだ。
「…でもそういうあなただって、女子生徒の間ではウワサになっているわよ」
「だからオレは美咲以外興味が無いって。勝手に言っているだけだろう? 美咲も気にしないでよ」
「してないわよ」
「ウソ。もしかしてヤキモチ焼いた?」
ニヤニヤ笑う彼の顔に腹が立って、思わず眉をひそめる。
「だからしてないってば!」
「してなきゃそんなこと、言い出さないよ。フツー。オレのことが気になっている証拠だよ」
「自意識過剰よ」
「かもね。オレ、美咲のことになるとおかしくなるみたいだから」
「自覚があるなら、抑えてほしいわ…。こっちの身が持たなくなる」
「そうなったらオレがずっと面倒を見てあげる」
嬉しそうに額にキスをする彼を見て、本気なのを悟った。
「そっそんなに弱くないから、アタシ…」
「そうかな? 押しに弱い気もするけど?」
「誰のせいよ?」
「オレのせいだね。だから責任をとって、一生面倒を見てあげるよ」
「社会人になってから、そういうことを言いなさい」
「厳しいなぁ、美咲は」
アタシを腕の中に閉じ込めながら、何度もキスをし、触れてくる。
その優しさと甘さに、溶けそうになってしまう…。
このまま彼に、全てを預けてしまいたい気持ちになる。
けれど予鈴の音で、目が覚めた。
「ほっホラ、お昼休みはもう終わりよ! 授業にはちゃんと間に合うように行きなさい」
「はいはい。それじゃ、また夜に電話するね」
「テスト1週間前からは、家に来るのも禁止だからね」
「うっ! それは本気でキツイんだけど…」
「しょうがないでしょ! あなたはあくまでも、生徒なんだから」
「はいはい。じゃあその間は別の場所で、ね?」
意味ありげに笑った彼は、英語準備室を出て行った。
別の場所…会わないという選択肢は無いのか。
「はぁ…」
乱れた服装を直し、イスに座る。
彼が卒業するまで、あと約2年…。持つだろうか、アタシの体と心。
ぼんやりしていると、扉がノックされた。
「はっはい!?」
「美咲、わたしよ」
「涼子? どうしたの?」
声をかけると、涼子は扉を開けて入ってきた。
「『どうしたの?』はこっちのセリフよ。最近ぼんやりしちゃってさ。世納クン、授業に出るようになったんでしょ? 喜んでも良いのに」
「よっ喜んではいるわよ。ただ…」
「何よ?」
彼は後ろ手に鍵をかけ、アタシに近寄ってくる。
「学校の中はもうやめましょう? 気が気じゃなくなるわ」
「でもスリルがあって良いでしょ?」
彼は悪魔の微笑を浮かべると、その腕の中にアタシを引き入れた。
「―会いたかった。美咲」
「…1時間前の授業で会ったじゃない」
「こうやって1人占めするのは、この前の休日以来だろう? 美咲の部屋の中でさ…」
「やっやめてってば!」
腕の中でもがくと、彼はクスクス笑って腕の力を少しゆるめてくれた。
「ゴメンゴメン。あの時の美咲があんまり可愛かったから」
…1人暮らしをしてて、良かったのか悪かったのか…。
合い鍵を渡してしまったせいで、彼は何時でも気が向けば、好きな時にわたしの部屋に出入りしている。
「今度はホテルにしよっか? 裏通りなら、誰にも見つからないかもよ?」
「見つかるに決まっているでしょう! あの裏通りで補導されたウチの生徒の数、教えてあげましょうか?」
警察からも見張られているあんな場所に行けば、アタシのクビはすぐに飛ぶ。
「冗談冗談。それじゃ、美咲の部屋で良いよ。あそこ、居心地良いもんな」
優しくアタシの頬や頭を撫でながら、愛おしそうに見つめてくる。
「…美咲、気付いてる?」
「何を?」
「この数週間で、すっごくキレイになった。生徒達の間でも評判になるぐらい」
「…あっそ」
「それってオレのせいだよね?」
「よく分かっているわね」
「そりゃ、美咲のことならば何でも」
得意げに笑い、キスをしてくる。
「んっ…」
彼のキスは、まだ正直慣れない。
数え切れないぐらい、キスをしたのに…まだ心臓に悪いキスだ。
「…でもそういうあなただって、女子生徒の間ではウワサになっているわよ」
「だからオレは美咲以外興味が無いって。勝手に言っているだけだろう? 美咲も気にしないでよ」
「してないわよ」
「ウソ。もしかしてヤキモチ焼いた?」
ニヤニヤ笑う彼の顔に腹が立って、思わず眉をひそめる。
「だからしてないってば!」
「してなきゃそんなこと、言い出さないよ。フツー。オレのことが気になっている証拠だよ」
「自意識過剰よ」
「かもね。オレ、美咲のことになるとおかしくなるみたいだから」
「自覚があるなら、抑えてほしいわ…。こっちの身が持たなくなる」
「そうなったらオレがずっと面倒を見てあげる」
嬉しそうに額にキスをする彼を見て、本気なのを悟った。
「そっそんなに弱くないから、アタシ…」
「そうかな? 押しに弱い気もするけど?」
「誰のせいよ?」
「オレのせいだね。だから責任をとって、一生面倒を見てあげるよ」
「社会人になってから、そういうことを言いなさい」
「厳しいなぁ、美咲は」
アタシを腕の中に閉じ込めながら、何度もキスをし、触れてくる。
その優しさと甘さに、溶けそうになってしまう…。
このまま彼に、全てを預けてしまいたい気持ちになる。
けれど予鈴の音で、目が覚めた。
「ほっホラ、お昼休みはもう終わりよ! 授業にはちゃんと間に合うように行きなさい」
「はいはい。それじゃ、また夜に電話するね」
「テスト1週間前からは、家に来るのも禁止だからね」
「うっ! それは本気でキツイんだけど…」
「しょうがないでしょ! あなたはあくまでも、生徒なんだから」
「はいはい。じゃあその間は別の場所で、ね?」
意味ありげに笑った彼は、英語準備室を出て行った。
別の場所…会わないという選択肢は無いのか。
「はぁ…」
乱れた服装を直し、イスに座る。
彼が卒業するまで、あと約2年…。持つだろうか、アタシの体と心。
ぼんやりしていると、扉がノックされた。
「はっはい!?」
「美咲、わたしよ」
「涼子? どうしたの?」
声をかけると、涼子は扉を開けて入ってきた。
「『どうしたの?』はこっちのセリフよ。最近ぼんやりしちゃってさ。世納クン、授業に出るようになったんでしょ? 喜んでも良いのに」
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「何よ?」
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