教え子の甘い誘惑

hosimure

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大事そうにアタシの顔を両手で包み込み、また唇が近付いてくる。

「ちょっ…んんっ!」

抵抗する暇なく、再び唇が重なる。

あたたかく、少し湿った彼の唇が、今度は角度を変えて何度もアタシの顔に触れる。

「やめっ…、世納くんっ…!」

「華月って呼んでよ。美咲」

「なっ! 呼び捨てで…」

「アメリカじゃ、当たり前のことだよ」

「ここは日本よ」

せめてもの反撃の言葉も、再びキスで塞がれる。

「大好きだよ、美咲」

耳元で甘く囁かれ、膝の力が抜ける。

けれどすぐに彼の腕がアタシの腰に回り、引き寄せられた。

「他の誰にも見せたくないぐらい、大好き。オレがこんなに独占力が強いのは、美咲のせいなんだよ?」

「うっそ…。なら、アタシを困らせるようなこと、しないでよ」

「ん~。でもオレ、美咲の困った顔、好きなんだよね」

「なっ何よそれ!」

「いつもは完璧な教師の仮面を被っている美咲が、オレのことになるとちょっと困ったような顔になるのが嬉しいんだ」

「…それはあなたが問題児だからよ」

「だろうね。だからあえて授業に出なかったんだけど?」

「イジワルね! そんなんじゃ女の子に嫌われるわよ!」

「別に良いよ。オレは美咲にだけ好かれればそれで良い。他のヤツなんて必要ないもの」

そう言った彼の表情は、怖いほど真剣だった。

「だから美咲、オレだけのものになるって言って? そしたらもう、美咲を困らせることは絶対にしないって誓うから」

ぎゅっと抱き締められ、目の前が眩む。

彼の匂いが、アタシの体の中に染み渡るから…。

「美咲だって、オレが良い子になった方が嬉しいデショ?」

「どこが良い子よ。悪魔だわ」

「光栄だね。天使よりも悪魔の方が魅力的だし」

軽く笑うと、また唇にキス。

たまらなくなって、アタシは彼の背にしがみ付いた。

「じゃあこうしようか? 学校では良い子になるよ。その代わり、それ以外では悪い子でいいよね?」

問いかけるような言葉だけども、その目は否定を許さない強さがある。

思わず目を逸らすも、顎を掴まれ、視線を合わせられる。

「―返事は? 美咲。このまま教師をクビになんてなりたくないよね?」

「…ズルイわ」

「うん、ズルイね。まっ、もっともクビになってもオレは構わないんだけど。その方が美咲を独占できるんだし?」

…彼の実家はかなりの権力を持っている。

下手すればアタシ1人ぐらい消えても、どうにでもできるような力を…。

結局、辿る道は同じ。それならば…。

「…本当に真面目になるのね? 担任の先生にも迷惑をかけない?」

「うん、かけない。美咲に誓うよ」

アタシの左手を取ると、薬指にキスをする。

まるで誓いのキスのように…。

「それと…あくまでも秘密よ? このことは…」

「分かっているよ。美咲に迷惑は一切かけない。学校にいる間は、普通の生徒だよ。…今を抜かしてね」

アタシの体は壁に付けられ、そのままズルズルと床に落ちていく。

「オレと美咲のこと、他の誰にも言うもんか。二人だけの秘密だよ」

「そう…ね」

床に倒れたアタシに覆い被さる彼は、男の顔をして微笑んでいた。

欲しいものを手に入れて喜んだ悪魔の微笑…思わず心奪われる。

近付いてくる彼の首に手を回し、アタシは彼を…受け入れた。



「…何てことをしてしまったんだろう…」

壁に向かい、呟く。

鍵をかけた英語準備室の中1人、アタシは毎日のように後悔の念にかられていた。

『あの日』から数週間が経った。

彼は言った通り、授業に出てくれるようになった。

そして担任の先生にもちゃんと謝罪して、真面目になった。

ここぞとばかりに、担任も教頭も喜んでいたけれど…アタシの心は重くなっていくばかり。

あの時、どうかしていたとしか思えない!

けどっ! …もう関係は始まってしまっている。

ブルルルッ!

ケータイのバイブが鳴った! コレは合図。

アタシは深くため息をつき、準備室の鍵を開けた。

「やっ、センセ。待たせたかな?」

扉を開けて入ってきたのは…彼だ。

「…いいえ。やること多いから。でもテスト1週間前は立ち入り禁止になるからね」

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