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終結

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「マカ! 大丈夫? 痛くない?」

陽が昇り、マカはソウマの店に来ていた。

ルナ・カルマ・ナオの三人は『マスク・ドール』の調査で、あの屋敷に残っている。

血族の者達と一緒に。

負傷したマカは、ソウマとマリーと合流し、店へ来たのだ。

「お前の声で、耳が痛いぞ。ハズミ」

「少し静かにしててくれ」

マカとマミヤから叱られ、ハズミはしゅん…と小さくなった。

「マミヤが元医大生で助かった。血族の専門医は忙しくて捕まりにくいんだ」

マカはマミヤに手当てをしてもらっていた。

手際よく手当てをするも、マミヤの表情は曇っている。

「本当に病院に行かなくていいのか? かなり酷い傷だぞ?」

「そっそんなにヒドイのか?」

ハズミがアタフタするも、当のマカは肩を竦めた。 

本来ならば、帰還まで後1日かかるはずだった。

しかしマリーが急いで帰って来てくれた。

『マスク・ドール』にやはり心当たりがあったらしく、戦闘には間に合わなかったものの、調査の方では役に立ってくれるだろう。

しかし激しく魔力を消耗したせいか、今は人間の姿からアンティークドールの姿へ戻ってしまった。

三人分の次元移動は、かなりの魔力を使うらしい。

そこまでムリしてくれたのは、正直嬉しいとマカは思う。

だが、引っ掛かりも感じていた。

「マリー、聞きたいことがあるんだが」

『なぁに?』

人形に戻ったマリーの表情はよく分からない。

だが内心は乱れていることが、マリーから発せられる気で分かる。 

「お前を造ったのはリリスの一族だと言ったな? ならあの『マスク・ドール』を造ったのも、リリスの一族か?」

『…ええ、そうよ』

マリーの言葉に、ハズミとマミヤ、そしてソウマは息を飲んだ。

「やはりな…」

ルナから『マスク・ドール』のことを聞いた時から、思っていた。

マリーの存在とよく似ている、と。

ならば同じ一族が関わっていると考えるのが、自然だった。

「リリスが日本へ来たのは、私が目的だな?」

マカは静かに、だが強い意思を込めて言った。

『恐らく、は…』

歯切れ悪く、マリーは答えた。

「それはリリスの一族の意思か? それともリリス個人の意思か?」

『多分…どちらも。あなたのことは、人成らざるモノ達の間で、かなり噂になっていたから…』

「マカ!」

ソウマは驚き、マカを見る。

しかしマカは冷静な様子を崩さない。

「…近年では強い能力者の誕生が少なくなっていると聞くからな。私みたいな稀な能力者は、狙われやすくなっているんだな」

それはマカの血族にも言えた。

すでに純粋な力を持つ者は少なくなり、今ではヒミカのように大きなハンデを持ちながら力を発揮する者の方が増えてきている。

その中で、力を枯れずに生み出す存在のマカは稀で貴重な存在。

だが…。

「しかしそれも、私自身が上手く力をコントロールできればの話だ。私自身、血・肉を食せねばならない体質ではないものの、他から気を奪わねばならない時がある。そこら辺はヒミカと同じなんだがな」

ヒミカは血・肉を食しなければ、力を発揮できない。

マカは気を満たさなければ、力を使えない。

それはまだ、マカが上手く力をコントロールできないからだ。

だがそう遠くないうちに、マカは力を己が物とするだろう。

枯れぬ力を生み出す魂と、それを受け入れる体質を持つマカ。

二つのバランスがそろった時は…。

「マカ、護衛を増やしましょう」

「ソウマ。私は事をそう大きくはしたくないんだがな」

「そんなこと言っている場合ではないでしょう?」

ソウマは珍しく険しい表情で、マカに詰め寄った。

「あなたに何かあれば、我らは黙っていられません。次期当主という立場もそうですが、あなたを他に渡すわけにはいかないんです」

「…分かってるさ」 

マカは前髪をかき上げた。

「膨大な力を他所にはやれない。だからこそ、祖父は私を次期当主にしたんだからな。自覚はあるが、もうちょっとだけ、待っててくれないか?」

「私が何かするよりも先に、同属が動くと思いますが?」

「今回の調査が終わるまでは、同属も動くまい」

「マカ…」

「お前の心配は分かっている。だが私も動きを制限される前に、やっておきたいことがあるんだ」

マカは窓から空を見上げた。

まだ朝靄が残る中、太陽が輝き出した。

「決着をつけるのには、まだ早い。そう…まだ動き出すにはいかないんだ」

マカは苦しそうに目を閉じた。

まぶたの裏に浮かぶのは…。 



【終わり】
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