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しかしマカと『人形』の動きは止まった。
床の影が突如動き、二人の体に巻きつき、動きを止めたのだ。
「…この力、マノンかっ!」
「そうだよ」
二階から、マノンの声が降ってきた。
全員が一斉に二階に視線を向ける。
黒づくめのマノンが、険しい顔をして立っていた。
「『マスク・ドール』ねぇ…。魔女なんかには興味ないけど、その顔をされるのはイヤだなぁ」
そう語るマノンの両目は、赤く染まっていた。
『人形』の体に巻き付く影は、徐々にその体を締め上げる。
「誰を喰らおうが殺そうが構わないけど、ボクの姉さんに手を出すことは許さないよ?」
ギシギシッ ミシッ
やがて『人形』の体中にヒビが入り、ついには全身砕け散った。
バラバラと『人形』の破片が、辺りに飛び散る。
あっと言う間の出来事に、マカは気を取られていたが、すぐに我に返る。
「マノンっ! 被害者達を喰らうなよ!」
「食べないよ。ただの女に、興味ないもの」
砕け散った『人形』の中から、被害者達の魂が溢れ出してきた。
それと同時に、何十枚もの顔が出てくる。
「本当に…喰らっていたのね」
ルナはその光景を見て、絶句した。
「昔のことは知らないけどね。製造者は随分キレ者みたいだね」
マノンは両肩を竦めた。
「さて、と」
マノンは階段を下り始めた。
四人に緊張感が走る。
「ちょっと姉さんと二人っきりで話がしたいんだ。キミ達、外してもらうよ」
マノンが手を上げ、パチンと指を鳴らした。
するとルナ・カルマ・ナオの影が動き、3人を覆い隠してしまった。
「おいっ!」
マカが慌てて声をかけるも、すぐに床の影に戻ってしまった。
マカの体は未だ影に捕らわれており、身動き一つできない。
冷たくも強力な影の力。
戦いで消耗しているマカがどうしようもできない。
「まったく…。無茶な戦い方をするもんだね。勝算が低い時は、いったん引きなよ」
「お前みたいにチョコマカ逃げられたら、こっちが困るんだ!」
「だって姉さん達、獲物を見つけた犬みたいに追いかけてくるんだもん。ボク、怖くてさ」
「大嘘つくなっ!」
影に捕らわれながらも、ジタバタ動く。
「まっ、今回本当は首突っ込むつもりはなかったんだけどね。流石に姉さんに傷を付けられちゃ、出てこないわけにはいかないからね」
一階に下りてきたマノンは、マカの顔を見て、眉を寄せた。
「それじゃあお前は、早い段階から『マスク・ドール』の存在を知っていたのか?」
「知ったのはつい一週間ぐらい前だよ。夜中におかしな動きをしているヤツがいるから、ちょっと見学したんだ。まあ狙っていたのは一般の普通の女達だったし、ほっとこうかと思ってたんだ」
「お前なぁ!」
「だって興味ないもん。…まあ標的が能力者に移ったら、流石に動かないわけにはいかなかったけどね」
「…お前の喰らう分を、横取りされるからか」
「そうだよ。目的が同じになるなら、無視はできないからね。ボクの体はまだ充分じゃないし」
「どこがだ? 『人形』を破壊するほどの力を、お前はもう持っているじゃないか」
顔をしかめるマカを見て、マノンは苦笑した。
「それは今が夜だからだよ。残念ながら、ボクはまだ夜の眷属なんだ。おかげで太陽の出ている時間には、身を潜めなきゃいけない。派手な動きも、夜限定なんだよ」
「あの『マスク・ドール』も夜限定だったな…」
「魔女は元が夜の属性だからじゃない? 月の魔力も関係あるって聞いたことあるし」
そう言ってマノンは顔を上げた。
浮かぶ月は、血のように赤い。
「にしても、あんまり無茶しないようにね? 姉さん」
マノンはニッコリ微笑み、マカの血に濡れた頬に触れた。
「姉さんを倒すのはボクの役目なんだ。あんなガラクタに傷一つでも付けるのは、許さないよ?」
「それは魔女に言ってくれ。私だって、好き好んでケガしたワケじゃない」
「しかも顔を傷つけるなんて、絶対に許さないから」
そう言ってマノンは舌を伸ばし、マカの顔をべろっと舐めた。
「んなっ!?」
「大切な顔なんだから、大事にしなよ?」
「お前に言われると、鳥肌が立つわ!」
「アハハ。…さて、それじゃあそろそろ行くよ」
マノンは自分の背後の影を動かし、姿を隠した。
「マノンッ!」
「じゃあね、姉さん。ケガはちゃんと治しなよ?」
そのままマノンは影に隠れ、消えてしまった。
床の影が突如動き、二人の体に巻きつき、動きを止めたのだ。
「…この力、マノンかっ!」
「そうだよ」
二階から、マノンの声が降ってきた。
全員が一斉に二階に視線を向ける。
黒づくめのマノンが、険しい顔をして立っていた。
「『マスク・ドール』ねぇ…。魔女なんかには興味ないけど、その顔をされるのはイヤだなぁ」
そう語るマノンの両目は、赤く染まっていた。
『人形』の体に巻き付く影は、徐々にその体を締め上げる。
「誰を喰らおうが殺そうが構わないけど、ボクの姉さんに手を出すことは許さないよ?」
ギシギシッ ミシッ
やがて『人形』の体中にヒビが入り、ついには全身砕け散った。
バラバラと『人形』の破片が、辺りに飛び散る。
あっと言う間の出来事に、マカは気を取られていたが、すぐに我に返る。
「マノンっ! 被害者達を喰らうなよ!」
「食べないよ。ただの女に、興味ないもの」
砕け散った『人形』の中から、被害者達の魂が溢れ出してきた。
それと同時に、何十枚もの顔が出てくる。
「本当に…喰らっていたのね」
ルナはその光景を見て、絶句した。
「昔のことは知らないけどね。製造者は随分キレ者みたいだね」
マノンは両肩を竦めた。
「さて、と」
マノンは階段を下り始めた。
四人に緊張感が走る。
「ちょっと姉さんと二人っきりで話がしたいんだ。キミ達、外してもらうよ」
マノンが手を上げ、パチンと指を鳴らした。
するとルナ・カルマ・ナオの影が動き、3人を覆い隠してしまった。
「おいっ!」
マカが慌てて声をかけるも、すぐに床の影に戻ってしまった。
マカの体は未だ影に捕らわれており、身動き一つできない。
冷たくも強力な影の力。
戦いで消耗しているマカがどうしようもできない。
「まったく…。無茶な戦い方をするもんだね。勝算が低い時は、いったん引きなよ」
「お前みたいにチョコマカ逃げられたら、こっちが困るんだ!」
「だって姉さん達、獲物を見つけた犬みたいに追いかけてくるんだもん。ボク、怖くてさ」
「大嘘つくなっ!」
影に捕らわれながらも、ジタバタ動く。
「まっ、今回本当は首突っ込むつもりはなかったんだけどね。流石に姉さんに傷を付けられちゃ、出てこないわけにはいかないからね」
一階に下りてきたマノンは、マカの顔を見て、眉を寄せた。
「それじゃあお前は、早い段階から『マスク・ドール』の存在を知っていたのか?」
「知ったのはつい一週間ぐらい前だよ。夜中におかしな動きをしているヤツがいるから、ちょっと見学したんだ。まあ狙っていたのは一般の普通の女達だったし、ほっとこうかと思ってたんだ」
「お前なぁ!」
「だって興味ないもん。…まあ標的が能力者に移ったら、流石に動かないわけにはいかなかったけどね」
「…お前の喰らう分を、横取りされるからか」
「そうだよ。目的が同じになるなら、無視はできないからね。ボクの体はまだ充分じゃないし」
「どこがだ? 『人形』を破壊するほどの力を、お前はもう持っているじゃないか」
顔をしかめるマカを見て、マノンは苦笑した。
「それは今が夜だからだよ。残念ながら、ボクはまだ夜の眷属なんだ。おかげで太陽の出ている時間には、身を潜めなきゃいけない。派手な動きも、夜限定なんだよ」
「あの『マスク・ドール』も夜限定だったな…」
「魔女は元が夜の属性だからじゃない? 月の魔力も関係あるって聞いたことあるし」
そう言ってマノンは顔を上げた。
浮かぶ月は、血のように赤い。
「にしても、あんまり無茶しないようにね? 姉さん」
マノンはニッコリ微笑み、マカの血に濡れた頬に触れた。
「姉さんを倒すのはボクの役目なんだ。あんなガラクタに傷一つでも付けるのは、許さないよ?」
「それは魔女に言ってくれ。私だって、好き好んでケガしたワケじゃない」
「しかも顔を傷つけるなんて、絶対に許さないから」
そう言ってマノンは舌を伸ばし、マカの顔をべろっと舐めた。
「んなっ!?」
「大切な顔なんだから、大事にしなよ?」
「お前に言われると、鳥肌が立つわ!」
「アハハ。…さて、それじゃあそろそろ行くよ」
マノンは自分の背後の影を動かし、姿を隠した。
「マノンッ!」
「じゃあね、姉さん。ケガはちゃんと治しなよ?」
そのままマノンは影に隠れ、消えてしまった。
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