1 / 9
深夜
しおりを挟む
深夜、女性は1人で家路を歩いていた。
まだ20代で、スーツに身を包んだ女性は美しい顔立ちをしていた。
10代の頃は読者モデルもしたことのある女性は、しかし今は不安そうな表情を浮かべていた。
すでに日にちは変わり、電車も終電が終わった時刻。
残業で遅くなり、同僚からはタクシーで帰るように言われた。
けれど給料日前で手持ちが少なかった為、いつものように電車に乗って帰って来た。
しかし駅からでもタクシーに乗れば良かったと後悔していた。
駅から住んでいるアパートまで、歩いて15分程度。
だからタクシーを使うこともないだろうと思ってしまった。
しかし暗い道、すでに人気は無く、近くにある家の電気も消えている所が多い。
それが余計に心細くさせる。
カバンを強い力で掴み、早足で歩く。
しかし…背後から気配を感じていた。
ヒールの音は、女性のもの。
他には何の音もしないのに、気配だけが感じる。
後ろから、じっと見られていることが分かる。
「いやっ…いやっ!」
女性は恐怖に顔を歪め、ついには走り出した。
それでも足音は自分の分しかない。
やがて自分のアパートが見えてきた。
ほっとした女性の口が、何かで覆われた。
「っ!?」
悲鳴を上げるヒマもなく、女性は街灯のない暗い道に引きずりこまれた。
そして―
バリバリッ
ビジャッ
何かを引き裂き、何かが飛び散る音が闇の中に響いた。
女性を暗い道に引きずり込んだのは、大きな人型のモノ。
道に女性を押し倒し、両腕を大きく振るっている。
道に倒された女性はすでに動かない。
そのモノが動くたびに、道路には女性の血が飛び散る。
やがてその手に、女性の顔の皮が―。
そのモノはゆっくり立ち上がり、両膝を曲げ、高く飛んだ。
家の屋根を飛び移りながら、その場を後にした。
後に残されたのは、顔の皮を剥ぎ取られた女性の死体のみ。
そして一部始終を、離れたビルの屋上から見つめているモノがいた。
黒づくめの服装をしたマノンだ。
「…ふぅん。また厄介な事件になりそうだね」
いつもなら笑顔で語るマノンだが、今は眼が険しい光を帯びている。
「まっ、姉さんの相手じゃないな」
そういうと己の影に自分自身をかぶせ、姿を消した。
まだ20代で、スーツに身を包んだ女性は美しい顔立ちをしていた。
10代の頃は読者モデルもしたことのある女性は、しかし今は不安そうな表情を浮かべていた。
すでに日にちは変わり、電車も終電が終わった時刻。
残業で遅くなり、同僚からはタクシーで帰るように言われた。
けれど給料日前で手持ちが少なかった為、いつものように電車に乗って帰って来た。
しかし駅からでもタクシーに乗れば良かったと後悔していた。
駅から住んでいるアパートまで、歩いて15分程度。
だからタクシーを使うこともないだろうと思ってしまった。
しかし暗い道、すでに人気は無く、近くにある家の電気も消えている所が多い。
それが余計に心細くさせる。
カバンを強い力で掴み、早足で歩く。
しかし…背後から気配を感じていた。
ヒールの音は、女性のもの。
他には何の音もしないのに、気配だけが感じる。
後ろから、じっと見られていることが分かる。
「いやっ…いやっ!」
女性は恐怖に顔を歪め、ついには走り出した。
それでも足音は自分の分しかない。
やがて自分のアパートが見えてきた。
ほっとした女性の口が、何かで覆われた。
「っ!?」
悲鳴を上げるヒマもなく、女性は街灯のない暗い道に引きずりこまれた。
そして―
バリバリッ
ビジャッ
何かを引き裂き、何かが飛び散る音が闇の中に響いた。
女性を暗い道に引きずり込んだのは、大きな人型のモノ。
道に女性を押し倒し、両腕を大きく振るっている。
道に倒された女性はすでに動かない。
そのモノが動くたびに、道路には女性の血が飛び散る。
やがてその手に、女性の顔の皮が―。
そのモノはゆっくり立ち上がり、両膝を曲げ、高く飛んだ。
家の屋根を飛び移りながら、その場を後にした。
後に残されたのは、顔の皮を剥ぎ取られた女性の死体のみ。
そして一部始終を、離れたビルの屋上から見つめているモノがいた。
黒づくめの服装をしたマノンだ。
「…ふぅん。また厄介な事件になりそうだね」
いつもなら笑顔で語るマノンだが、今は眼が険しい光を帯びている。
「まっ、姉さんの相手じゃないな」
そういうと己の影に自分自身をかぶせ、姿を消した。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
誘いの動画【マカシリーズ・22】
hosimure
ホラー
ケータイにまつわる都市伝説は数多い。
オレの周囲でも最近、ケータイの都市伝説がウワサになって、流行っている。
とあるサイトからダウンロードできる動画がある。
しかしその動画には、不思議な魅力があり、魅入られた人間は…。
【マカシリーズ】になります。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
表現する気持ち【マカシリーズ・18】
hosimure
ホラー
摩訶不思議な雑貨を扱うソウマの店に、一人の少女がやって来た。
彼女は生まれつき体が弱く、そんな自分を何とかしたいと言ってきた。
店主・ソウマは彼女の願いを叶える品物を売りつけた。
それを身に付ければ、願いは叶うのだと言って…。
さまざまな結婚式【マカシリーズ・15】
hosimure
ホラー
読者の皆様、はじめまして。
わたくし、結婚アドバイザーのルミと申します。
いつもは普通の結婚式も担当いたしますが、わたしにだけ扱える、結婚式というものがございます。
その仕事内容、ご覧になってみますか?
【連作ホラー】伍横町幻想 —Until the day we meet again—
至堂文斗
ホラー
――その幻想から、逃れられるか。
降霊術。それは死者を呼び出す禁忌の術式。
歴史を遡れば幾つも逸話はあれど、現実に死者を呼ぶことが出来たかは定かでない。
だがあるとき、長い実験の果てに、一人の男がその術式を生み出した。
降霊術は決して公に出ることはなかったものの、書物として世に残り続けた。
伍横町。そこは古くから気の流れが集まる場所と言われている小さな町。
そして、全ての始まりの町。
男が生み出した術式は、この町で幾つもの悲劇をもたらしていく。
運命を狂わされた者たちは、生と死の狭間で幾つもの涙を零す。
これは、四つの悲劇。
【魂】を巡る物語の始まりを飾る、四つの幻想曲――。
【霧夏邸幻想 ―Primal prayer-】
「――霧夏邸って知ってる?」
事故により最愛の娘を喪い、 降霊術に狂った男が住んでいた邸宅。
霊に会ってみたいと、邸内に忍び込んだ少年少女たちを待ち受けるものとは。
【三神院幻想 ―Dawn comes to the girl―】
「どうか、目を覚ましてはくれないだろうか」
眠りについたままの少女のために、 少年はただ祈り続ける。
その呼び声に呼応するかのように、 少女は記憶の世界に覚醒する。
【流刻園幻想 ―Omnia fert aetas―】
「……だから、違っていたんだ。沢山のことが」
七不思議の噂で有名な流刻園。夕暮れ時、教室には二人の少年少女がいた。
少年は、一通の便箋で呼び出され、少女と別れて屋上へと向かう。それが、悲劇の始まりであるとも知らずに。
【伍横町幻想 ―Until the day we meet again―】
「……ようやく、時が来た」
伍横町で降霊術の実験を繰り返してきた仮面の男。 最愛の女性のため、彼は最後の計画を始動する。
その計画を食い止めるべく、悲劇に巻き込まれた少年少女たちは苛酷な戦いに挑む。
伍横町の命運は、子どもたちの手に委ねられた。
携帯彼氏の災難!?【マカシリーズ・6】
hosimure
ホラー
かつてのクラスメートの女の子から、携帯彼氏・ハズミを押し付けられてしまったマカ。
その存在に困り、何とか開放する為動き出すも、共にいるうちに情が移ってしまい……。
携帯彼氏に対し、出したマカの選択とは………!?
普通の女の子とは全く違うタイプのマカに、さすがの【携帯彼氏】もタジタジになる?
珍しく、ラブコメ風に仕上げています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる