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 しかし両親の強い勧めで結局は…。高等部に上がる時だってそうだ。そして生徒会入りも…。
「ふぅ…」
 声は出さず、息だけ吐き出す。
 いい加減、開放されたいと思う反面、光雅に大切にされることが心地良かったりもする。
 でも本当に、高等部を卒業したらどうするんだろう?
 この近くに大学はない。電車で三十分も行けば、いくつかはある。けれど光雅の偏差値を考えれば、都心の大学へ行った方が良いのは明らかだった。
 そうなれば光雅はマンションから離れなければならなくなり、オレは…開放される。
 さすがに大学までは口出ししないだろう。大学に入ればきっと、光雅の関心だってオレ以外に向く。…いや、向いてくれないと困るんだ。
 悶々としているうちに、昼休み。
「は~あぁ…」
 重く深いため息をつき、手ぶらで生徒会室に向かう。
 生徒会室は特別教室棟の四階にある。昼休みの時間、そこはオレと光雅の貸切となる。
「朝食は洋風だったから、昼食は和風にしてみたんだ」
 三重箱を開けながら、隣に座る光雅は楽しそうだ。
 中身はオレの好物ばかり入っている。炊き込みご飯のおにぎりを食べながら、オレは疑問を問いかけてみた。
「なぁ、光雅。高等部卒業したら、どうするんだ?」
「う…ん。ちょっと悩んでいる」
 珍しく歯切れ悪く、光雅は悩んでいた。
「進学先か? 光雅のレベルなら、都心の大学の方が良いよな?」
 心が少し痛んだ。側にいて欲しいと思う反面、開放を望むオレの矛盾した願いは、心を締め付ける。
 しかし次の瞬間、光雅の口から出たのは予想もできない言葉だった。
「…本音を言うなら、留年したいんだけど」
「んぐっ!」
 おにぎりが変な所に詰まった! 慌ててお茶を飲み干す。
「ごほっがはっ。なっ何バカ言ってんだよ! 何も問題なく進級・卒業できるだろうがっ」
「でもホラ、高校で留年するのが一番良いんだよ」
「何が、どこが良いんだよ!」
「義務教育中では不可能だけど、高校なら留年できるだろう? そうすれば綾と同級生になれるし、そしたら大学も同じ時期に入れるじゃないか」
 …コイツ、本気で言ってる。
 眩しい笑顔で楽しそうに語る光雅は、決して冗談を言ってはいない。本当に、そう思って、考えているんだ。
「だからしばらく休学しようかと思って」
「…はい?」
「休めば出席日数が足りなくて、留年ってことになるだろう?」
「……休学の理由は?」
「それはまあ、後からどうとでも」
 なるだろうな、コイツなら。
 オレの方が頭を抱えて、悩んでしまう。歳の差の効力も、高校では通用しないのかもしれない。
 光雅なら、ヤル。必ず実行する。そして来年には、同じクラスになる可能性も高い。更には光雅と同時期に大学に通う確立も、かなり高い…!
「そっそんなことしなくても良いんじゃないか? 大人しく真面目に進級して、卒業しろよ」
「でも綾と一緒にいられる時間が増えるなら、ボクは何だってするよ」
「何で…何でオレなんだよ?」
 泣きそうな声で言うと、光雅は真面目な表情を浮かべた。
 コレはマズイ! 身の危険を感じて光雅から離れようとしたが、すぐに肩に手が回され、引き寄せられた。
「―言わなきゃ分からない?」
「…分かりたく、ない」
「ヒドイなぁ。ボクはずっと、お前の側にいたいのに」
 空いているもう片方の手が、オレの指に絡まる。
「好きだから」
 そして耳元で熱く低く、囁いてくる。
「綾のことを愛しているから。一分、一秒でも側にいたい」
「光雅…」
「綾もボクのこと、好きだよね?」
「…自信家だな」
「そうかな? 自覚があるだけだと思うけど」
 肩を強く引かれ、顔が近付いてきた。
「んっ…!」
 そして重なる唇。軽く開いた口の中に、光雅の舌が入り込んでくる。甘い…。口の中が蕩けそうなほど甘くて、熱いキスを味あわされる。
「んむっ…ふぅ…」
 上顎の部分を舐められると、下半身に甘い痺れが走る。逃げようとする舌を絡め取られ、キスはより一層深くなる。
 意識が溶けそうになるのを必死で押さえ、空いている手で光雅の胸を押してキスを中断させた。
「やめろって…。他のヤツらが入ってきたら、どうするんだよ?」
「見せ付けてやれば良い。綾はボクの物だってことを」
 そう言いつつ耳を舐めてくる。
「イヤだってば!」
 渾身の力で光雅から離れた。
「綾?」
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