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 鶏肉や野菜やハムなど、盛り沢山の具が入ったサンドイッチは本当に美味い。パンまで手作りなのは、素直に感心する。
「けどさぁ、毎日言っている気がするけど、本当にもう良いんだぜ? オレだって高校二年だし、メシぐらい一人で何とかなるし、学校だってサボらず行くし」
「そこに『ちゃんと』という言葉が付けば、ボクも安心して一人で行動させるんだけどね」
 涼しい顔で毒を吐きやがった。
 確かにオレは多少なりと、ズボラなところがある。そこは自覚していたが、そんなの今時の男子高校生ならあって当たり前だとも思うんだが…。
「…光雅だって、自分の時間が必要だろう?」
「今こうして綾と一緒にいる以外に、必要な時間なんてないよ」
 ううっ…! 反撃に困る攻撃…いや口撃をされてしまった。
「そうだ。今日は帰りに買い物するから、教室で待っててくれ」
「買い物ぐらい、友達と行けよ! 何でいっつもオレが付き合わなきゃいけないんだよ!」
「綾以外の人間とじゃ、つまらないから」
「ぐはっ!」
 テーブルの上に倒れ込んだオレを、光雅は楽しそうに見つめている。
「…と言うのは半分本音で」
「半分もかっ!」
「もう半分はお前の為だよ。買い物の内容は服のことだから」
「服ぅ~?」
「綾は服装に興味ないだろう? 着る物があまり高校生らしくない」
「悪かったなぁ!」
 どうせオレのズボラな性格は服装にも現われてるわっ!
「だからいつもボクが選んで買ってあげているだろう? 今度の食事会で、困るのは綾の方だ」
「うぐぐっ」
 食事会と言うのは月に一度、ウチの家族と光雅の家族で行う。どこで何を食べるかは親達が決めて、オレと光雅は前日知ることになる。
 そして普段家に滅多にいないオレの両親は、たまに会うと服装について困り顔になる。
 仕事が多忙でロクに家にいないクセに、こういう時だけ親の顔になるのは、正直言ってムカつく。
 …まあ自分達がアパレル関係で働いているのに、一人息子のオレが無関心では、立つ瀬がないというヤツだろう。
「駅前にご両親のお店が出来ただろう? そこで服を買って着れば、喜んでもらえるぞ?」
「駅前に出来たんだ」
 初耳のことに、目が丸くなる。
「知らなかったのか? メール、来てなかったか?」
 慌てて携帯電話を取り出し、確認するも…。
「…来てねぇよ」
 あんのバカ親っ! いつものことだが、何で一人息子のオレに連絡を寄越さず、光雅にばっかするんだ?
「まあ忙しいみたいだしな。今日行けば、顔を合わせられるかもしれないぞ」
「ぜってーイヤだ」
「まあまあ。とにかくボクはちょっと用事があって遅くなるけど、教室で待っててくれ」
 と言うが、オレに拒否権はない。
「…分かったよ」
 だからこう答えるしかない。
 光雅は満足そうに頷き、空の食器を片付け始めた。
 そして二人そろって登校する。マンションから学院まで、歩いて十分。
 しかし途中で、同じ学院の生徒達は光雅を見ては歩みを止め、頭を下げて挨拶をする。
「おはようございます、会長」
「おはようございます、真宮生徒会長」
「ああ、おはよう」
 対して光雅も笑顔で返事をする。
「あっ、安恵やすえさんもおはようございます」
「安恵書記、おはようございます」
「おう、おはようさん」
 オレにも気付き、慌てて挨拶をしてくる。苦笑しながら手を振り、挨拶を返す。そりゃこんなカリスマオーラバリバリの光雅の側にいたんじゃ、オレの存在も薄れるよな。
 校舎に着くと、オレは声も無く安堵のため息をつく。ここで一旦、光雅から逃げられるからだ。
「それじゃあ綾、ちゃんと授業を受けるんだぞ」
「分かってるって」
 光雅は少し寂しそうに微笑みながら、オレの頭を撫でる。
「それじゃあ昼休みに」
「ああ、生徒会室に行くから」
 光雅は現在高校二年生で、生徒会会長。
 オレは高校一年で、生徒会書記。…書記と言っても、光雅が推薦したからなったようなものだ。
「はぁあ…」
 二年の校舎に向かう光雅には、生徒達の熱い視線が集まっている。いや、視線だけじゃない。人も集まる。
「…いつまでこうなんだろうな?」
 低く呟き、一年の校舎に向かう。
 三階にあるオレの教室には、すでに大半の生徒がいた。まだホームルームがはじまるまで二十分もあるのに、真面目な生徒が多いこと。
「おはようさん」
「ヤス、おはよ」
「おはよー、ヤス」
 気さくに挨拶を交わしながら、窓際の席に着くなりオレは机の上に倒れ込んだ。
「あ~、つっかれたぁ」
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