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それを察した彼が、退学に追い込んだのか。
だとすれば、少なくとも十数人は彼の手によって…。
ボクは改めて、ぞっとした。
ボクを守る為だとも言える。
けれど彼はただ、自分の獲物を取られるのがイヤだっただけだ。
そう…彼にとって、ボクは獲物だったんだ。
彼が喰らう為の…。
「でもお前もやるねぇ」
「…何がだよ?」
「そのノートだよ」
彼が指差したのは、ボクが抱えているノートだった。
「まさか細工をしているなんて思わなかった」
「じゃあ…この血はキミの?」
「うん」
彼はTシャツを捲り、お腹を見せた。
そこにはうっすら赤い線を引いたような、傷跡があった。
「ノートを持っていく時に、バッサリ切れた」
ボクはその傷跡に、釘付けになった。
多分…ノートのページ部分をお腹に当てたんだろう。
ノートの罠とは、ページ部分に薄いガラスの破片を仕込んでいたことだった。
薄くて軽いガラスの破片は磨いたことにより、殺傷能力を上げていた。
ボクは犯人がページを捲る時、その指か手に傷がつけばと思っていた。
まさかお腹に傷がついていたなんて、考えもしなかった。
「人間も動物も、追い詰め過ぎると何をするか分からないもんだ」
「ボクの…せめてもの反撃だったんだ」
ボクはノートを見下ろした。
でもまさか、こんな結末を引き寄せるなんて…!
「うん。効果的だった」
すぐ間近で声が聞こえ、顔を上げると、目の前に彼が来ていた。
「っ!?」
思わずノートを落とし、逃げようとした。
「逃げるなよ」
ぐいっと髪を掴まれ、壁に投げ付けられた。
「がはっ!」
肺に入っていた空気が一気に吐き出た。
「逃げるなんてヒドイ奴だな。今までずっと側にいたのに」
「キミがっ…」
「ん? なに?」
ボクはキミがいたから、救われていたのに…。
キミがいたせいで、イジメを受けていたなんて…!
感情の昂りが、涙となって溢れ出してきた。
「ああ、泣くなよ。泣かせたいワケじゃないんだから」
そっと伸びてきた彼の手を、ボクは渾身の力で払った。
<パシッ>
「…やってくれるな」
彼の笑みが、複雑に歪んだ。
「っ!? さっ最初からボクをイジメず、夏休みを過ぎた後から行動したのは何でなんだ? キミに何があったんだよ?」
ボクは犯人に聞きたかった。
何が原因で、ボクをイジメるようになったのか。
「ああ、簡単な話さ。夏休み、オレと遊んでいた時の話だ。偶然、街中でお前のクラスメート達と会って、一緒に遊ぶことになっただろう? アレが原因」
ボクは瞬時に記憶をよみがえらせた。
確かに1年の時の夏休みに、そういうことがあった。
街中で彼と遊んでいたら、当時仲の良かったクラスメート達と偶然出会った。
そして一緒にボウリングに行かないかと誘われ、ボクは頷いた。
「でっでもキミに聞いたら、一緒に行っても良いって言ったじゃないか!」
「そりゃあみんなの前で、イヤだとは言いにくいもんだろう? それにその時は、そいつらと一緒でもいいと思ってた。でも…」
そこではじめて、彼の表情が曇った。
「クラスメート達とはしゃいでいるお前を見て、暗い気持ちになったよ。お前はオレ以外の人間と一緒にいても、楽しそうだから」
「そんなのっ…キミだって同じだろう? ボク以外の人といても」
「オレはお前以外の奴と一緒にいても、おもしろいとも楽しいとも思ったことなんて、一度たりとも無い」
だとすれば、少なくとも十数人は彼の手によって…。
ボクは改めて、ぞっとした。
ボクを守る為だとも言える。
けれど彼はただ、自分の獲物を取られるのがイヤだっただけだ。
そう…彼にとって、ボクは獲物だったんだ。
彼が喰らう為の…。
「でもお前もやるねぇ」
「…何がだよ?」
「そのノートだよ」
彼が指差したのは、ボクが抱えているノートだった。
「まさか細工をしているなんて思わなかった」
「じゃあ…この血はキミの?」
「うん」
彼はTシャツを捲り、お腹を見せた。
そこにはうっすら赤い線を引いたような、傷跡があった。
「ノートを持っていく時に、バッサリ切れた」
ボクはその傷跡に、釘付けになった。
多分…ノートのページ部分をお腹に当てたんだろう。
ノートの罠とは、ページ部分に薄いガラスの破片を仕込んでいたことだった。
薄くて軽いガラスの破片は磨いたことにより、殺傷能力を上げていた。
ボクは犯人がページを捲る時、その指か手に傷がつけばと思っていた。
まさかお腹に傷がついていたなんて、考えもしなかった。
「人間も動物も、追い詰め過ぎると何をするか分からないもんだ」
「ボクの…せめてもの反撃だったんだ」
ボクはノートを見下ろした。
でもまさか、こんな結末を引き寄せるなんて…!
「うん。効果的だった」
すぐ間近で声が聞こえ、顔を上げると、目の前に彼が来ていた。
「っ!?」
思わずノートを落とし、逃げようとした。
「逃げるなよ」
ぐいっと髪を掴まれ、壁に投げ付けられた。
「がはっ!」
肺に入っていた空気が一気に吐き出た。
「逃げるなんてヒドイ奴だな。今までずっと側にいたのに」
「キミがっ…」
「ん? なに?」
ボクはキミがいたから、救われていたのに…。
キミがいたせいで、イジメを受けていたなんて…!
感情の昂りが、涙となって溢れ出してきた。
「ああ、泣くなよ。泣かせたいワケじゃないんだから」
そっと伸びてきた彼の手を、ボクは渾身の力で払った。
<パシッ>
「…やってくれるな」
彼の笑みが、複雑に歪んだ。
「っ!? さっ最初からボクをイジメず、夏休みを過ぎた後から行動したのは何でなんだ? キミに何があったんだよ?」
ボクは犯人に聞きたかった。
何が原因で、ボクをイジメるようになったのか。
「ああ、簡単な話さ。夏休み、オレと遊んでいた時の話だ。偶然、街中でお前のクラスメート達と会って、一緒に遊ぶことになっただろう? アレが原因」
ボクは瞬時に記憶をよみがえらせた。
確かに1年の時の夏休みに、そういうことがあった。
街中で彼と遊んでいたら、当時仲の良かったクラスメート達と偶然出会った。
そして一緒にボウリングに行かないかと誘われ、ボクは頷いた。
「でっでもキミに聞いたら、一緒に行っても良いって言ったじゃないか!」
「そりゃあみんなの前で、イヤだとは言いにくいもんだろう? それにその時は、そいつらと一緒でもいいと思ってた。でも…」
そこではじめて、彼の表情が曇った。
「クラスメート達とはしゃいでいるお前を見て、暗い気持ちになったよ。お前はオレ以外の人間と一緒にいても、楽しそうだから」
「そんなのっ…キミだって同じだろう? ボク以外の人といても」
「オレはお前以外の奴と一緒にいても、おもしろいとも楽しいとも思ったことなんて、一度たりとも無い」
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