恐怖の感染連鎖

hosimure

文字の大きさ
上 下
4 / 7

4

しおりを挟む
拾って見ると、春ぐらいに撮られたウチのクラスの集合写真だった。

担任も映っている。

この頃はまさか、こんな事態になるなんて、誰も予想していなかっただろうな。

そしてこの後のことも…。

少しずつ平和になりつつあったクラスに、翌日再び暗雲が立ち込めた。

朝早く、屋上へ行ったクラスの女子が、悲鳴を上げた。

彼女への花束やお供え物が、全て焼けていたという。

クラスどころか、学校中が一気に騒然となった。

これはきっと、『みぃ』がまだ許していない証拠だと―。

「でも屋上には誰でも入れるんでしょ? たちの悪い、イタズラかもしれないじゃない」

「イタズラって、誰がしたんだよ!」

「それはホラ…ここんとこ、ほとんど毎日のように、ウチのクラスの生徒達が屋上へ行っているじゃない? だから他のクラスの生徒が、驚かせようとしたのかも?」 

しどろもどろに答えると、クラスメートの不満が一気に爆発した。

「もうイヤっ!」

「何であたし達がこんな目に合わなくちゃいけないの?」

いや、それはアンタ達が彼女をイジメたからでしょうが。

…とは言えない。

アタシはKYではないのだ。

「誰かのイタズラだとしても、これじゃあ今までやってきたことに意味なんてないじゃん」

「それより、これから『みぃ』の祟りが今よりもっとひどくなる可能性があるのが怖いよ」

平淡な声で言われた一言に、一気にクラスの雰囲気が固まる。

「まっまあまあ! そう暗くならないでよ! きっとお供えとお祈りを続けていけば、良くなるわよ」

「お前に何が分かるんだよ!」

「そうだ! 部外者のクセに!」 

あらら…。怒りの矛先がこっちを向いたよ。

せっかく慰めようとしていたのに。

拗ねてしまったアタシは、とんでもない言葉を口にした。

「…なら、誰か生け贄になったら?」

「生け贄?」

「そう。昔は神様などの怒りは、生け贄を以て静めたと言われているの。誰か1人でもいいから、生け贄になれば物事は収まるんじゃないの?」

言った後、あまりに重過ぎる沈黙に、思わず言い過ぎたことに気付いた。

「なっなーんてね! 大昔の話だから、気にしないでよ!」

慌てて明るく言うも、クラスメート達はブツブツ何かを言っている。

「生け贄、かぁ」

「…どうせこのまま生き続けたって、良いことないもんね」

「『みぃ』にずっと祟られたままじゃあな」 

げっ★

予想以上にとんでもない反応!

「まっ待ってよ! 『みぃ』が本当にいるのか分からないじゃない!」

「『みぃ』はいるよ。じゃなきゃ、オレ達がこんな目に合うはずないじゃないか」

そう言ったのは、頭や腕に包帯を巻いている男子生徒だ。

体育の時間に、ケガをした。

あの棒は昔、校庭に植えられたものだったらしい。

使い方は今では分からないものの、生徒達はよじ登っていたりして、遊んでいたらしい。

けれど木の根元が腐り、あの日あの時に倒れてしまった。

それも偶然のことなんだけど、クラスメート達の中では『みぃ』の仕業とされてしまっている。

暗く、重い雰囲気の中、担任が戻って来た。

ほっとするのも束の間、例の火事は人為的なものらしいという話だった。

再びクラスが凍りつく。 

誰が、というものは分からないものの、人為的なことなら、『みぃ』の怒りは増したかもしれない―と。

あ~あ。こうなると、もう何を言ってもムダだな。

アタシはもう口を閉じることにした。

その後、クラスの様子は暗いままだった。

相変わらず不幸な出来事が起これば、『みぃ』のせい。

みんなどんどん表情が無くなっていった。

だからアタシももう口出しをするのを止めた。

何を言っても聞かないだろうし、反抗されるのなら損だ。

そうしてアタシが転校してきて1ヶ月が過ぎた頃、事件は起こった。

担任が車の運転を誤り、重傷を負ってしまったのだ。

それは命に関わるほどで、生死の問題ともなった。

それが一気にクラスメート達の恐怖を煽ったのだ。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

出会いの高速道路

hosimure
ホラー
俺は仕事上、高速道路をよく使っていた。 だがある日、同僚から高速道路に現れる女の子の幽霊について聞いた。 信じていなかった俺だが、ある夜、高速道路を1人であるく女の子の姿を見つけてしまい…。

神隠し

hosimure
ホラー
 アタシの住んでいる所は田舎で、娯楽に欠けていた。  そのせいか、高校の友人達がとある空き家で肝試しをしようと言い出した。  そこは「出る」と評判の空き家。  本当は行きたく無かったけれど、みんなから仲間外れにされるのがイヤだったアタシは参加してしまった。  そして肝試しで体験したこととは…!?

大丈夫おじさん

ホラー
『大丈夫おじさん』、という噂を知っているだろうか。 大丈夫おじさんは、夕方から夜の間だけ、困っている子どもの前に現れる。 大丈夫おじさんに困っていることを相談すると、にっこり笑って「大丈夫だよ」と言ってくれる。 すると悩んでいたことは全部きれいに片付いて、本当に大丈夫になる… 子どもに大人気で、けれどすぐに忘れ去られてしまった『大丈夫おじさん』。 でも、わたしは知っている。 『大丈夫おじさん』は、本当にいるんだってことを。

皆さんは呪われました

禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか? お勧めの呪いがありますよ。 効果は絶大です。 ぜひ、試してみてください…… その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。 最後に残るのは誰だ……

荷物が届く

翔子
ホラー
この街では、通販などの荷物は自分で受け取る。宅配機能はない。 その際、徒歩で受け取る人を車に誘い込み誘拐しようとする人がいる。 道筋にはご注意を。

たたた

星来香文子
ホラー
とある離島で起きた、奇妙な出来事…… 何も信じられない、短編ホラーです。(全10話) ※カクヨムにも掲載しています

機織姫

ワルシャワ
ホラー
栃木県日光市にある鬼怒沼にある伝説にこんな話がありました。そこで、とある美しい姫が現れてカタンコトンと音を鳴らす。声をかけるとその姫は一変し沼の中へ誘うという恐ろしい話。一人の少年もまた誘われそうになり、どうにか命からがら助かったというが。その話はもはや忘れ去られてしまうほど時を超えた現代で起きた怖いお話。はじまりはじまり

こっくりさんの言ったこと

津田ぴぴ子
ホラー
バイトの同僚に誘われて、こっくりさんをやった時の話。

処理中です...