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「依琉!? どうしたの? ウチに来るなんて」




離れの邸の玄関に、同じ部の依琉が来た。




相変わらずの美形ぶりに、生徒達がザワめく。




「お嬢、この方は?」




「あっ、お婆。私と同じ部の依琉。副部長をしているの」




「はじめまして。神無月のお祖母さま。依琉と申します」




依琉は礼儀正しく挨拶をする。




すると祖母は微笑んだ。




「これはこれは。お嬢から話は聞いています。奥の部屋へどうぞ。何か冷たいものでも出しますから」




「おかまいなく。ボクは道案内で来ただけですから」




「道案内?」




神無月が首を傾げると、依琉はスッと体の位置をズラした。




すると外には若い男女がいる。




「あの人達が用事あるみたいでね。ボクは近くを通りかかっただけ。ここの場所を尋ねられて、案内してきたんだ」


「ウチに…。そう、ありがと」




神無月は草履を履くと、外に出た。




「いらっしゃいませ。ウチにご用とか」




「ええ。ここには言葉や文字で、まじないをしてくれると聞いたものですから…」




男性の方が、弱々しく答える。




そして傍らの女性を見た。




「僕達、夫婦なんです。でも彼女がちょっと病気がちでして…。こちらのお守りはよく効くと聞いたものですから」




「…そうでしたか。少々お待ちください」




神無月は中に戻り、祖母に話をする。




「病克服のお守りが欲しいんだって。お婆、作る?」




祖母は鋭い視線で、二人を見た。




「そうだね。…まっ、それで気が済むなら良いでしょう。教室にご案内しといで」




「はーい」




神無月は二人を教室に通した。




そして祖母と二人を残し、退室する。

そして奥にある台所へ行き、麦茶をコップに注いで玄関に戻った。




依琉がまだそこにいたからだ。




「依琉、これどうぞ」




「ありがと。のど渇いてたんだ」




麦茶を飲むと、依琉は笑みを浮かべる。




「しかし神無月の巫女姿、改めて見ると新鮮だね。いつも制服姿しか見ないから」




「プライベートでは滅多に会わないしね。私も依琉の私服姿見るのは久し振りだわ」




「そうだね」




二人でクスクス笑っていたが、ふと依琉の目に真剣味が宿る。




「…さっきの夫婦、仲が良さそうに見えたね。本心はともかく」




「また何か<視>えたの? …と言うより、<視>えなくとも、分かる気がするけどね」




肩を竦める神無月の姿を見て、依琉は笑った。




「そうだね。気付かぬのは彼女だけ。それが不幸か幸か…」


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