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「はぁ~」
「どうしたの? ミナ」
「んっ…。中学時代の友達のお葬式って、行くの結構辛いなぁって思って」
マカとミナは制服姿で、アキとユマの葬式の行列に並んでいた。
二人は生前仲が良く、死んだ時期が近いことから、学校近くの葬祭会館で合同の葬式になった。
今日も学校は休みで、葬式は自由参加だったが、来ている者は多かった。
「そうだね…。ミナはアキ達と仲良かったみたいだしね」
「中学時代はね。最近じゃ全然話してなかったしぃ」
話しながら、自分達の番がきた。
焼香ではなく、色とりどりの花を、二人の写真の前に置かれた台に置くというものだった。
大きなパネルに入れられた二人の写真は、満面の笑顔だった。
マカとミナは二本ずつ花を取り、一本ずつ置いていく。
マカはアキの写真の前で立ち止まった。
…アレから調べてみたのだが、アキのことで少々引っ掛かっていた。
アキはあの儀式を行う数日前に、一人の少年と知り合っていたらしい。
その人物はいつも黒い服装で、深くフードを被っている。
そしてその口元にはいつも笑みが浮かんでいたそうだ。
アキはその少年と仲が良かった。
しかしそのことを知っている者達は、その少年が誰なのか、誰一人として知る者はいなかった。
いつもアキとつるんでいて、他の者とは軽く一言交わすぐらいで、名前も顔も知らないと言う。
そして今日。
もしかしたら来ているかもしれないと思ったが、…どうやら来ていないらしい。
おそらく、その人物が儀式のことを教えたのだろう。
儀式によって起こされる恐怖を教えぬまま…。
あの儀式はあのままいけば、フーカとミナは黒き手に殺されていた。
そして気は暴走し、あの小屋だけでは押さえ切れないものになっていただろう。
通常、弱くなった霊場や、神力の弱くなった場で行われるのが正しい方法。
しかし今回のように、邪気が満ちる場であれば、それを行うものは自ら生贄となるも同然。
邪気を活発化させる為の生贄だ。
マカはぎりっと歯を噛んだ。
アキを利用し儀式をやらせた人物は、恐らくアキがミナを誘うことを予想してやらせたのだろう。
ミナの過去を知っていたマカだが、そのことをミナに言ったことはなかった。
誰にでも触れられたくない事情がある。
マカはそれを誰よりも分かっているからこそ、口を閉ざしていた。
なのに…こんなミナの弱味に付け入るようなやり方は、まるでマカに対する挑戦だ。
そんなことをする人物は、この世でただ一人っ…!
「…マカ?」
「えっ?」
「そろそろ行こうよ。後ろにまだ人がいるから」
「あっ、うん…」
ミナに手を引かれ、マカはその場から立ち去った。
二人は葬祭会館を出ると、外の眩しさに眼を細めた。
「良い天気だね!」
「そうだね。こんな快晴なら、二人も迷わずいけるだろうね」
二人で空を見上げた。
「ねっ、マカ。ちょっと今日はあたしに付き合って」
「良いけど…どこへ?」
「んっ。あたしとアキとユマが行っていた中学。久し振りに行ってみたいと思って」
「でも学校、やってるんじゃない?」
「外から見るだけで良いの。それだけで…満足だから」
辛さを隠して言うミナを見て、マカは苦笑した。
「…分かった。じゃ、一緒に行こうか」
「うん! 案内している間に聞いて欲しいんだ。あたしとアキ達のこと」
「オッケー。じゃ、今日はとことんミナに付き合うよ」
二人は手を繋ぎ、歩き出した。
途中フーカに出会うも、互いに軽く頭を下げるだけ。
アキのことがなければ、ミナとフーカは出会うことはなかった。
つまり、繋がりは無い。
マカは少し痛む心を隠しながら、繋がる手を強く握り締めた。
決して離さぬように―。
【終わり】
「どうしたの? ミナ」
「んっ…。中学時代の友達のお葬式って、行くの結構辛いなぁって思って」
マカとミナは制服姿で、アキとユマの葬式の行列に並んでいた。
二人は生前仲が良く、死んだ時期が近いことから、学校近くの葬祭会館で合同の葬式になった。
今日も学校は休みで、葬式は自由参加だったが、来ている者は多かった。
「そうだね…。ミナはアキ達と仲良かったみたいだしね」
「中学時代はね。最近じゃ全然話してなかったしぃ」
話しながら、自分達の番がきた。
焼香ではなく、色とりどりの花を、二人の写真の前に置かれた台に置くというものだった。
大きなパネルに入れられた二人の写真は、満面の笑顔だった。
マカとミナは二本ずつ花を取り、一本ずつ置いていく。
マカはアキの写真の前で立ち止まった。
…アレから調べてみたのだが、アキのことで少々引っ掛かっていた。
アキはあの儀式を行う数日前に、一人の少年と知り合っていたらしい。
その人物はいつも黒い服装で、深くフードを被っている。
そしてその口元にはいつも笑みが浮かんでいたそうだ。
アキはその少年と仲が良かった。
しかしそのことを知っている者達は、その少年が誰なのか、誰一人として知る者はいなかった。
いつもアキとつるんでいて、他の者とは軽く一言交わすぐらいで、名前も顔も知らないと言う。
そして今日。
もしかしたら来ているかもしれないと思ったが、…どうやら来ていないらしい。
おそらく、その人物が儀式のことを教えたのだろう。
儀式によって起こされる恐怖を教えぬまま…。
あの儀式はあのままいけば、フーカとミナは黒き手に殺されていた。
そして気は暴走し、あの小屋だけでは押さえ切れないものになっていただろう。
通常、弱くなった霊場や、神力の弱くなった場で行われるのが正しい方法。
しかし今回のように、邪気が満ちる場であれば、それを行うものは自ら生贄となるも同然。
邪気を活発化させる為の生贄だ。
マカはぎりっと歯を噛んだ。
アキを利用し儀式をやらせた人物は、恐らくアキがミナを誘うことを予想してやらせたのだろう。
ミナの過去を知っていたマカだが、そのことをミナに言ったことはなかった。
誰にでも触れられたくない事情がある。
マカはそれを誰よりも分かっているからこそ、口を閉ざしていた。
なのに…こんなミナの弱味に付け入るようなやり方は、まるでマカに対する挑戦だ。
そんなことをする人物は、この世でただ一人っ…!
「…マカ?」
「えっ?」
「そろそろ行こうよ。後ろにまだ人がいるから」
「あっ、うん…」
ミナに手を引かれ、マカはその場から立ち去った。
二人は葬祭会館を出ると、外の眩しさに眼を細めた。
「良い天気だね!」
「そうだね。こんな快晴なら、二人も迷わずいけるだろうね」
二人で空を見上げた。
「ねっ、マカ。ちょっと今日はあたしに付き合って」
「良いけど…どこへ?」
「んっ。あたしとアキとユマが行っていた中学。久し振りに行ってみたいと思って」
「でも学校、やってるんじゃない?」
「外から見るだけで良いの。それだけで…満足だから」
辛さを隠して言うミナを見て、マカは苦笑した。
「…分かった。じゃ、一緒に行こうか」
「うん! 案内している間に聞いて欲しいんだ。あたしとアキ達のこと」
「オッケー。じゃ、今日はとことんミナに付き合うよ」
二人は手を繋ぎ、歩き出した。
途中フーカに出会うも、互いに軽く頭を下げるだけ。
アキのことがなければ、ミナとフーカは出会うことはなかった。
つまり、繋がりは無い。
マカは少し痛む心を隠しながら、繋がる手を強く握り締めた。
決して離さぬように―。
【終わり】
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