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「何か機嫌悪そうだな?」
「分かるかい? やっぱり柚季はわたしと通じるものがあるんだね」
確かに美園の表情は分かりにくい。
けれどその黒い瞳には、感情の色が浮かぶ。
オレはどうやら、そういう僅かな感情を察するのが上手いらしい。
…だから美園に気に入られてしまったんだっけ。
オレは手を伸ばし、美園の陶器のように白くスベスベした頬を撫でる。
「オレに友達ができるのが気に食わないのか?」
「正直に言えば。柚季は子供ながらに魅力的だからね。いつわたしの元を離れるか、不安になるんだ」
大人のクセに、頬に触れているオレの手にすり寄る。
何だか黒猫に懐かれた気分。
「オレは別に友達ができたって、お前を捨てないぞ?」
「でも確実にわたしと過ごす時間は減るだろう? それがとても悲しいんだ」
それはまあ…否定できないな。
今は学校が終わった放課後や休日には、必ずと言って良いほど美園の元に訪れる。
だけど友達ができれば、減ってしまうのはしょうがない。
オレよりも大人なんだから、そういうところは理解してほしいんだが…ムリだろうな。
今も捨てられそうな子猫のような表情をしているし。
「柚季…。わたしの柚季」
美園の低く艶めいた声が、熱を持つ。
あっ、ヤバイな。
オレを見る眼も熱っぽく潤んでいる。
「わたしを捨てないでくれ」
なのに声は胸を締め付けるほどに切ない。
だからこそ、近付いてくる赤い唇からは逃れられない。
「んっ…」
オレは両手を伸ばして、美園の首に回した。
美園の両手もオレの腰に回る。
美園の唇はその赤さに反して、とても冷たい。
まるで氷のような冷たさだ。
オレはそれが寂しくて、何度も自分からキスをする。
そうすればオレの熱が移って、美園の唇も温かくなるから。
「柚季、愛しているよ。わたしの柚季…!」
オレの小さな体を、必死に抱き締める美園が、少し哀れに思ってしまう。
オレは別に一人でも良かった。
孤独にも耐えられる性格だったから。
でも…美園は違う。
一人が怖くて、孤独が悲しい。
誰かにいてほしくて、誰かに愛してほしいと願う。
だからオレは…美園の側にいることを選んだ。
美園がオレを選んでくれたように…。
美園はオレを抱き締めたまま、ソファーに押し倒す。
「まっ待った待った。ベッドに行こう、な?」
「ベッドに行かなくても良いって言ったのは、柚季じゃないか」
…そんな楽しそうに笑いながら言うことじゃないだろう?
「それは昼寝の場合。その…セックスはベッドが良い」
「ふふっ、良いよ。寝室へ行こうか」
そう言って笑うと、美園はオレの体を抱き上げた。
しかしこの格好…いわゆるお姫様抱っこと言うヤツだ。
やめてほしかったが、美園があんまりに嬉しそうに微笑むから、言葉が出なかった。
寝室はこの洋館にはいくつもある。
リビングから近いのは、廊下を出て三メートルも歩いた所だ。
前にテレビで紹介されたような寝室だ、とオレは思った。
「分かるかい? やっぱり柚季はわたしと通じるものがあるんだね」
確かに美園の表情は分かりにくい。
けれどその黒い瞳には、感情の色が浮かぶ。
オレはどうやら、そういう僅かな感情を察するのが上手いらしい。
…だから美園に気に入られてしまったんだっけ。
オレは手を伸ばし、美園の陶器のように白くスベスベした頬を撫でる。
「オレに友達ができるのが気に食わないのか?」
「正直に言えば。柚季は子供ながらに魅力的だからね。いつわたしの元を離れるか、不安になるんだ」
大人のクセに、頬に触れているオレの手にすり寄る。
何だか黒猫に懐かれた気分。
「オレは別に友達ができたって、お前を捨てないぞ?」
「でも確実にわたしと過ごす時間は減るだろう? それがとても悲しいんだ」
それはまあ…否定できないな。
今は学校が終わった放課後や休日には、必ずと言って良いほど美園の元に訪れる。
だけど友達ができれば、減ってしまうのはしょうがない。
オレよりも大人なんだから、そういうところは理解してほしいんだが…ムリだろうな。
今も捨てられそうな子猫のような表情をしているし。
「柚季…。わたしの柚季」
美園の低く艶めいた声が、熱を持つ。
あっ、ヤバイな。
オレを見る眼も熱っぽく潤んでいる。
「わたしを捨てないでくれ」
なのに声は胸を締め付けるほどに切ない。
だからこそ、近付いてくる赤い唇からは逃れられない。
「んっ…」
オレは両手を伸ばして、美園の首に回した。
美園の両手もオレの腰に回る。
美園の唇はその赤さに反して、とても冷たい。
まるで氷のような冷たさだ。
オレはそれが寂しくて、何度も自分からキスをする。
そうすればオレの熱が移って、美園の唇も温かくなるから。
「柚季、愛しているよ。わたしの柚季…!」
オレの小さな体を、必死に抱き締める美園が、少し哀れに思ってしまう。
オレは別に一人でも良かった。
孤独にも耐えられる性格だったから。
でも…美園は違う。
一人が怖くて、孤独が悲しい。
誰かにいてほしくて、誰かに愛してほしいと願う。
だからオレは…美園の側にいることを選んだ。
美園がオレを選んでくれたように…。
美園はオレを抱き締めたまま、ソファーに押し倒す。
「まっ待った待った。ベッドに行こう、な?」
「ベッドに行かなくても良いって言ったのは、柚季じゃないか」
…そんな楽しそうに笑いながら言うことじゃないだろう?
「それは昼寝の場合。その…セックスはベッドが良い」
「ふふっ、良いよ。寝室へ行こうか」
そう言って笑うと、美園はオレの体を抱き上げた。
しかしこの格好…いわゆるお姫様抱っこと言うヤツだ。
やめてほしかったが、美園があんまりに嬉しそうに微笑むから、言葉が出なかった。
寝室はこの洋館にはいくつもある。
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