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まあここまでなら、どこかにありそうなちょっと変わった住人の話になる。
しかしその住人の作品は、とても変わっていた。
一言で言うなら、『子供には絶対に見せられない』作品ばかり作っていたからだ。
人間の裸をモデルにした石像ならば、美術館にもある。
けれどその住人の場合、人間の交わった姿で石像を作ったりする。
他にもグロテスクな絵も書いたりしているので、一部のマニアからは大ウケしているらしいが、大半の一般人からはドン引きされていた。
「…まっ、オレも最初見た時はビックリしたもんな」
何の前触れもなく見せられた時は、流石に心臓が嫌な音を立てた。
冷めた性格をしているとはいえ、やっぱり感受性は子供なんだな、と改めて思った。
「自己分析能力が高過ぎるのも、厄介だよな」
肩を竦めたオレの目の前には、ウワサの洋館がある。
大きな門の前で、ため息をついた。
「はあ…」
そう言えば誰かが言ってたな。
ため息は幸せが逃げるんだって。
でもすでに諦めているオレは、門を押し開けた。
門の向こうには華やかな庭が広がる。
色とりどりの季節の花々が咲き誇り、甘く良い香りがしてくる。
白い道を歩いていくと、洋館の飴色の扉の前に立つ。
「美園、来たぞ」
声をかけてすぐに、扉は開かれた。
「―いらっしゃい、柚季」
出てきたのは男のオレから見ても、綺麗な男だった。
年齢は多分二十代後半ぐらい、男とは思えないほどの色気があった。
長い間、邸にこもっているせいか、肌は雪のように白い。
なのに薄い唇は、まるで口紅を塗ったかのように赤く艶めいていた。
芸術家は変わった人間が多いというけれど、美園はまさに『変わった人間』の部類に入ると思う。
「今日は来るのが少し遅かったね」
「ああ…。少し教室に残ってたんだ。友達を今日こそ作ろうと思って」
そう言いながらオレはリビングに入り、ランドセルをソファーに置く。
「その様子だと、失敗だったみたいだな」
「うっせ」
ジロッと美園を睨み、ソファーに座った。
「…アイスティー」
「はいはい」
美園はクスッと笑うと、リビングを出て行った。
キッチンでアイスティーを作る為に。
一人残されたオレは、改めて部屋を見回した。
この部屋は来客を通すこともあるので、部屋の内装はまともだ。
…もっとも、どこの貴族の部屋だ?と思うぐらい、芸術品に溢れているが。
調度品も飾られている食器なども、全てが有名ブランドの物。
芸術品だってそうだ。
置いてある芸術品の1つが、ウチの親父の三か月分の月給になると教えられた時は、息が一瞬止まった。
最初は流石に緊張していたが、今では慣れたもの。
ふかふかして肌触りの良いソファーに、ゴロンと横になれる。
「う~ん…。相変わらず眠たくなるほど良いソファーだ」
祖父母の家は和風だ。
畳とかキライじゃないけど、気持ち良い物には弱いのが子供というもの。
思わずウトウトしていると、美園が戻ってきた。
「柚季、持ってきたよ」
「…あ~」
半ボケの顔を向けると、美園は苦笑した。
そして持ってきた銀のトレーをガラスのテーブルの上に置くと、しゃがみ込み、オレの頭を撫でた。
「眠いなら、ベッドに移動する?」
「いや、そこまでじゃない」
友達の作り方を考えていたせいで、ちょっと頭が疲れていた。
眼を擦りながら上半身を起こすと、美園がどこか不満そうな顔をしていることに気付く。
しかしその住人の作品は、とても変わっていた。
一言で言うなら、『子供には絶対に見せられない』作品ばかり作っていたからだ。
人間の裸をモデルにした石像ならば、美術館にもある。
けれどその住人の場合、人間の交わった姿で石像を作ったりする。
他にもグロテスクな絵も書いたりしているので、一部のマニアからは大ウケしているらしいが、大半の一般人からはドン引きされていた。
「…まっ、オレも最初見た時はビックリしたもんな」
何の前触れもなく見せられた時は、流石に心臓が嫌な音を立てた。
冷めた性格をしているとはいえ、やっぱり感受性は子供なんだな、と改めて思った。
「自己分析能力が高過ぎるのも、厄介だよな」
肩を竦めたオレの目の前には、ウワサの洋館がある。
大きな門の前で、ため息をついた。
「はあ…」
そう言えば誰かが言ってたな。
ため息は幸せが逃げるんだって。
でもすでに諦めているオレは、門を押し開けた。
門の向こうには華やかな庭が広がる。
色とりどりの季節の花々が咲き誇り、甘く良い香りがしてくる。
白い道を歩いていくと、洋館の飴色の扉の前に立つ。
「美園、来たぞ」
声をかけてすぐに、扉は開かれた。
「―いらっしゃい、柚季」
出てきたのは男のオレから見ても、綺麗な男だった。
年齢は多分二十代後半ぐらい、男とは思えないほどの色気があった。
長い間、邸にこもっているせいか、肌は雪のように白い。
なのに薄い唇は、まるで口紅を塗ったかのように赤く艶めいていた。
芸術家は変わった人間が多いというけれど、美園はまさに『変わった人間』の部類に入ると思う。
「今日は来るのが少し遅かったね」
「ああ…。少し教室に残ってたんだ。友達を今日こそ作ろうと思って」
そう言いながらオレはリビングに入り、ランドセルをソファーに置く。
「その様子だと、失敗だったみたいだな」
「うっせ」
ジロッと美園を睨み、ソファーに座った。
「…アイスティー」
「はいはい」
美園はクスッと笑うと、リビングを出て行った。
キッチンでアイスティーを作る為に。
一人残されたオレは、改めて部屋を見回した。
この部屋は来客を通すこともあるので、部屋の内装はまともだ。
…もっとも、どこの貴族の部屋だ?と思うぐらい、芸術品に溢れているが。
調度品も飾られている食器なども、全てが有名ブランドの物。
芸術品だってそうだ。
置いてある芸術品の1つが、ウチの親父の三か月分の月給になると教えられた時は、息が一瞬止まった。
最初は流石に緊張していたが、今では慣れたもの。
ふかふかして肌触りの良いソファーに、ゴロンと横になれる。
「う~ん…。相変わらず眠たくなるほど良いソファーだ」
祖父母の家は和風だ。
畳とかキライじゃないけど、気持ち良い物には弱いのが子供というもの。
思わずウトウトしていると、美園が戻ってきた。
「柚季、持ってきたよ」
「…あ~」
半ボケの顔を向けると、美園は苦笑した。
そして持ってきた銀のトレーをガラスのテーブルの上に置くと、しゃがみ込み、オレの頭を撫でた。
「眠いなら、ベッドに移動する?」
「いや、そこまでじゃない」
友達の作り方を考えていたせいで、ちょっと頭が疲れていた。
眼を擦りながら上半身を起こすと、美園がどこか不満そうな顔をしていることに気付く。
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