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2章 少年と王国騎士団員
第4話 少年達の決着と少女の執着心
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(ふん、第二能力を使ったところで所詮ただの異世界人が転生者である俺に勝てるものか……それにどうせ副作用で勝手に倒れて終わるだろう。転生者である俺でさえ最初は副作用のせいで剣を持ち上げることさえできなかったんだからな。勝ちとヴァリさんを手に入れるのは俺だ!)
マコトが相変わらずゲス思考を働かせながら副作用の腕の激痛をこらえ、カルラを切り刻んでいるとカルラがいきなり前屈みになった。
(走ってここまで来る気か?無謀だな。俺とあいつの間は目測5タル。あいつがこっちに来ても追いつかれる前に距離をとれる)
マコトがすっかり安心してもう一度剣を振ろうとした時、カルラが消えた。
(な、ど、どこだ?!)
「ここだよゲス野郎」
マコトの後ろから声が聞こえた。
「?!」
「オラァァァ!」
マコトが振り返るより速く、カルラの蹴りが飛んできた。
「ガ…ハァ……」
カルラの蹴りが背中にクリーンヒットしたマコトは半径100タルの円状の闘技場の壁まで飛んでいった。マコトは立ち上がろうとしたが、カルラがこちらに飛んできて蹴りを入れる方が速かった。
「のんびり倒れてんなよ転生者サマァァア!」
「グフッ、ガフッ、ゴハッ、ホゲッ、グ………」
何度も何度も蹴られたマコトはついに意識を失ってしまった。だが、意識が飛ぶ瞬間、カルラの声が聞こえた。
「雑魚が…泥沼試合にもなんなかったぞ」
三時間後
「ハッ」
「おお、目が覚めたか雑魚団長」
目が覚めたマコトの横では無傷のカルラが椅子に座って本を読んでいた。
「……『導具』の効果なのは分かってるけどやっぱり釈然としない」
「ま、俺のはかなりの当たりだからな」
「にしても僕が負けるとはな…」
そんな会話をしていたカルラはふと思った疑問を口しにした。
「てかお前戦闘時と普段で一人称変わってない?」
「僕の癖みたいなもんだ。キレると俺になっちゃうんだ。で、わざわざこんなとこに僕を笑うためだけに来たわけじゃないだろ?」
それを聞いたカルラはようやく本題に入れると思いながら話し始めた。
「ああ、誤解を解くのと俺の第二能力の説明に来た」
「じゃあ第二能力の方から聞かせてくれ。一体何だったんだあの速さと蹴りの威力は」
「あれは強化再生っていうんだ。強化再生が使用されている間、他者に破壊された部位が再生される度に発揮できる力が増していくって能力だ。気づかなかったか?俺が強化再生を使用してから脚を集中的に斬らせてたこと」
「ま…全く気づかなかった…」
「ちなみに発揮できる力が増えても体の強度は変わってないから強化された状態で全力を出すと強化された部位が破壊される。反作用は使用後に筋力が使用時間の三倍の間重力に負けるくらいの強度になっちまうんだ」
第二能力についての説明が終わったので、次はヴァリについての説明をしなくてはならないのだが…
「ハア~…聞きたくねえな~」
「いい加減誤解を解かせてくれよ」
「誤解ってゆーけど言い逃れできないよ!ヴァリさんはお前のことを婚約者っつってんだぞ?!誤解でそんなことなるかよ!」
「いいから聞け。殺すぞ」
「…分かったよ」
「じゃあ話すぞ。あれは今から四年前のこと…」
俺は12歳にして人生に嫌気がさして自殺した…そして女神と出会い…
「ちょっと待てーーい!」
マコトが急に話を遮った。
「どした?」
「お前転生者なん?!」
「そうだけど」
「なんで今まで隠してたの?!そしてなんでいきなり話す気になったの?!」
「目立ちたくなかった。これ以上隠すのは無理だと思った。以上!あとヴァリもこのこと知ってっから」
「え~…」
「あ、このこと俺とヴァリ以外の誰かに話したら冗談抜きでお前をぶっ殺すから☆」
「ヒギャァァ」
「じゃ、続き話すぞ~」
で、女神と出会った時、なんとかこの世界で生きるためにトルオの家を手に入れた。だがこの世界の知識がなかったから近所の家に行って情報をもらおうと思ったんだ。で、その家にいたのがあのヴァリ=アリだ。そして14歳だったあいつとは年齢も近かったからよく会って話すようになったんだが…三年前、あいつと会った一年後だな。俺がすっかりトルオにも馴染んで異世界ライフを満喫してた頃、牛乳屋の女の子と話していたときに強い殺意を感じた。その時は気のせいだと思ったんだが似たようなことが何回もあった。で、ある日目を覚ましたら見知らぬ家のベッドに寝かされていた。そして横から声が聞こえてきたんだ。
「カルラが悪いんだからね?あんな子と楽しそうに喋っちゃって。私結構耐えたんだよ?でももう限界。無理。耐えられない。だから連れてきちゃった。これからはずっと一緒だよ」
それはヴァリの声だったんだ。
「待って待ってちょっと待って」
またマコトが話を遮った。
「え、つまり、ヴァリさんは…メンヘラ?」
「ああ、それも無自覚のな」
「だからあの時やめろって言ったのか。で、続きは?」
その一週間後、王国騎士団が調査しに来てくれて助かったんだ。その間何があったかは黙秘させてもらう。ヴァリはこの一件のせいでトルオからシユウドに移ったんだ。でもこれで安心だと思っていたら大間違いだった。毎日二通以上届くラブレター、時々消える俺の所有物。他にも色々あった。だけどついに去年からそういうことがなくなって平和になった。
「で、今日再会したって訳だ」
カルラの過去話が終わったとき、マコトが最初に抱いた感想は…
「……大変なんだな。気をつけろよ」
という哀れみのものだった。
「大丈夫。俺は力を手に入れたんだ。簡単に捕まらねえよ」
「でもあいつ…」
「あいつがどうしたんだ?」
「『導具』のランクXだぞ?」
「………ゑ?」
カルラが驚きで固まっていると…
「見ィィィィツケタァァァァァア!」
壁をぶち破ってヴァリが現れた。
「ギィィヤァァァァァァ!助けて騎士団長ー!」
カルラはマコトに助けを求めたがマコトは…
「……ゴメン僕怪我人だから。頑張ってね☆」
という負けたことに対する腹いせのような返答をしてきた。
「さ、行きましょカルラ♡」
「イヤだーーーー」
カルラの意識はそこで途切れた。
「ハッ」
カルラが目を覚ますと、そこは見慣れない部屋で、横にヴァリが立っていた。
「あら起きたー?改めて久しぶり。カルラ」
「で、で、デジャヴーー?!」
カルラはそう叫ぶと再び意識を失った。
マコトが相変わらずゲス思考を働かせながら副作用の腕の激痛をこらえ、カルラを切り刻んでいるとカルラがいきなり前屈みになった。
(走ってここまで来る気か?無謀だな。俺とあいつの間は目測5タル。あいつがこっちに来ても追いつかれる前に距離をとれる)
マコトがすっかり安心してもう一度剣を振ろうとした時、カルラが消えた。
(な、ど、どこだ?!)
「ここだよゲス野郎」
マコトの後ろから声が聞こえた。
「?!」
「オラァァァ!」
マコトが振り返るより速く、カルラの蹴りが飛んできた。
「ガ…ハァ……」
カルラの蹴りが背中にクリーンヒットしたマコトは半径100タルの円状の闘技場の壁まで飛んでいった。マコトは立ち上がろうとしたが、カルラがこちらに飛んできて蹴りを入れる方が速かった。
「のんびり倒れてんなよ転生者サマァァア!」
「グフッ、ガフッ、ゴハッ、ホゲッ、グ………」
何度も何度も蹴られたマコトはついに意識を失ってしまった。だが、意識が飛ぶ瞬間、カルラの声が聞こえた。
「雑魚が…泥沼試合にもなんなかったぞ」
三時間後
「ハッ」
「おお、目が覚めたか雑魚団長」
目が覚めたマコトの横では無傷のカルラが椅子に座って本を読んでいた。
「……『導具』の効果なのは分かってるけどやっぱり釈然としない」
「ま、俺のはかなりの当たりだからな」
「にしても僕が負けるとはな…」
そんな会話をしていたカルラはふと思った疑問を口しにした。
「てかお前戦闘時と普段で一人称変わってない?」
「僕の癖みたいなもんだ。キレると俺になっちゃうんだ。で、わざわざこんなとこに僕を笑うためだけに来たわけじゃないだろ?」
それを聞いたカルラはようやく本題に入れると思いながら話し始めた。
「ああ、誤解を解くのと俺の第二能力の説明に来た」
「じゃあ第二能力の方から聞かせてくれ。一体何だったんだあの速さと蹴りの威力は」
「あれは強化再生っていうんだ。強化再生が使用されている間、他者に破壊された部位が再生される度に発揮できる力が増していくって能力だ。気づかなかったか?俺が強化再生を使用してから脚を集中的に斬らせてたこと」
「ま…全く気づかなかった…」
「ちなみに発揮できる力が増えても体の強度は変わってないから強化された状態で全力を出すと強化された部位が破壊される。反作用は使用後に筋力が使用時間の三倍の間重力に負けるくらいの強度になっちまうんだ」
第二能力についての説明が終わったので、次はヴァリについての説明をしなくてはならないのだが…
「ハア~…聞きたくねえな~」
「いい加減誤解を解かせてくれよ」
「誤解ってゆーけど言い逃れできないよ!ヴァリさんはお前のことを婚約者っつってんだぞ?!誤解でそんなことなるかよ!」
「いいから聞け。殺すぞ」
「…分かったよ」
「じゃあ話すぞ。あれは今から四年前のこと…」
俺は12歳にして人生に嫌気がさして自殺した…そして女神と出会い…
「ちょっと待てーーい!」
マコトが急に話を遮った。
「どした?」
「お前転生者なん?!」
「そうだけど」
「なんで今まで隠してたの?!そしてなんでいきなり話す気になったの?!」
「目立ちたくなかった。これ以上隠すのは無理だと思った。以上!あとヴァリもこのこと知ってっから」
「え~…」
「あ、このこと俺とヴァリ以外の誰かに話したら冗談抜きでお前をぶっ殺すから☆」
「ヒギャァァ」
「じゃ、続き話すぞ~」
で、女神と出会った時、なんとかこの世界で生きるためにトルオの家を手に入れた。だがこの世界の知識がなかったから近所の家に行って情報をもらおうと思ったんだ。で、その家にいたのがあのヴァリ=アリだ。そして14歳だったあいつとは年齢も近かったからよく会って話すようになったんだが…三年前、あいつと会った一年後だな。俺がすっかりトルオにも馴染んで異世界ライフを満喫してた頃、牛乳屋の女の子と話していたときに強い殺意を感じた。その時は気のせいだと思ったんだが似たようなことが何回もあった。で、ある日目を覚ましたら見知らぬ家のベッドに寝かされていた。そして横から声が聞こえてきたんだ。
「カルラが悪いんだからね?あんな子と楽しそうに喋っちゃって。私結構耐えたんだよ?でももう限界。無理。耐えられない。だから連れてきちゃった。これからはずっと一緒だよ」
それはヴァリの声だったんだ。
「待って待ってちょっと待って」
またマコトが話を遮った。
「え、つまり、ヴァリさんは…メンヘラ?」
「ああ、それも無自覚のな」
「だからあの時やめろって言ったのか。で、続きは?」
その一週間後、王国騎士団が調査しに来てくれて助かったんだ。その間何があったかは黙秘させてもらう。ヴァリはこの一件のせいでトルオからシユウドに移ったんだ。でもこれで安心だと思っていたら大間違いだった。毎日二通以上届くラブレター、時々消える俺の所有物。他にも色々あった。だけどついに去年からそういうことがなくなって平和になった。
「で、今日再会したって訳だ」
カルラの過去話が終わったとき、マコトが最初に抱いた感想は…
「……大変なんだな。気をつけろよ」
という哀れみのものだった。
「大丈夫。俺は力を手に入れたんだ。簡単に捕まらねえよ」
「でもあいつ…」
「あいつがどうしたんだ?」
「『導具』のランクXだぞ?」
「………ゑ?」
カルラが驚きで固まっていると…
「見ィィィィツケタァァァァァア!」
壁をぶち破ってヴァリが現れた。
「ギィィヤァァァァァァ!助けて騎士団長ー!」
カルラはマコトに助けを求めたがマコトは…
「……ゴメン僕怪我人だから。頑張ってね☆」
という負けたことに対する腹いせのような返答をしてきた。
「さ、行きましょカルラ♡」
「イヤだーーーー」
カルラの意識はそこで途切れた。
「ハッ」
カルラが目を覚ますと、そこは見慣れない部屋で、横にヴァリが立っていた。
「あら起きたー?改めて久しぶり。カルラ」
「で、で、デジャヴーー?!」
カルラはそう叫ぶと再び意識を失った。
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