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異世界転移をした彼女は異世界の常識を変えようと試みるが、勇者がくそ過ぎて困りました

27この世界の女性は敵も味方も破廉恥だと思います。

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 旅は続いていく。ソフィアのおかげで、一行はモンスターと遭遇しても、女性陣の服が溶けたり、糸に絡まったりして、破廉恥な姿になることがなくなった。女性陣のソフィアに対する信頼度はどんどん高まっていく。


「やっと、マウンテンマウスまでたどり着いたか。それでも、まだ海を越えてナインランドが待っているという、恐ろしいほどの旅の長さ。もうこれ、いっそのこと、船で旅した方がいいんじゃないか。」

「船で旅をするなら、いっそ海賊にでもなって、あれを探すとか。一つの欠片とか。ああ、でもそれって、この異世界と世界観が違うから、ますますこの世界がおかしくなりそう……。

「それあり、だ。だって、あの作品の女性ってすごいボン、キュン、ボンだろう。いいなあ。」


 地道に旅を続けて早一カ月。歩き疲れて悲鳴を上げるかと思われたが、実際にそうはならなかった。カナデが驚異の粘りを見せていたのではなく、単純に旅の移動手段が徒歩だけではなかったことが一番の理由だろう。

 とはいえ、これからもまだ先が長いならば、いい加減、もっと効率の良い移動手段を考えなければならない。それでも、徒歩だけの旅ではなく、鉄道が走っていたことが幸いだった。新幹線のようなものは存在していないが、蒸気機関車が存在し、それに乗ってだいぶ距離を稼ぐことができた。


「ピヨピヨピヨ。」

 ユーリたちは現在、ジャポンの本州の端までたどり着いた。そこの宿で休憩していたところだった。

「敵が近くに潜んでいるようです。」

 イザベラが真面目な顔をして、ユーリに話しかける。ちなみに、このひよこの鳴き声のような音を出していたのは、エミリアが首から下げていたネックレスだった。魔王の気配を察すると、音が鳴る仕組みのようだが、音が出たのは今回が初めてだった。手に入れたのが、マウンテンマウスの県境に入る直前に立ち寄った宿なので、音が鳴る機会がなかったのだ。


「あっちみたいだけど、どうする、ユーリ様。」

 イザベラとは反対に、首から下げているエミリアの反応は薄い。魔王本人が近くに潜んでいる場合には、発せられる音が変わるらしい。このピヨピヨした間抜けな音が聞こえてくるということは、魔王の仲間ではあるが、魔王本人ではないということなので、やる気が出ないのだろう。


「間抜けな音だな。こんな音が出るタイマーがあったよな。あれに似ているな。」

「まさか、魔王発見器の音がこんな音なんて情けない……。でも、これは魔王本人を感知した音ではないから、魔王本人が現れた場合の音は、さすがにこんな間抜けではないはず。」

 カナデとユーリは、魔王の仲間が近くにいるとわかっても、どうにも緊張感に欠けていた。





「何やら面白い音がしましたが、鳥でも飼っていらっしゃるのかしら。」

「別に飼っていませんが……。うるさかったらごめんな、えええええええ。」

 そんな緊張感の欠片も感じられない二人話かけたのは、見知らぬ女性だった。ただし、カナデは本能でその女性が自分たちにかかわりがある重要人物だと感じ取った。女性の服装があまりにも露骨に証明していたからだ。カナデは思わず、女性の身体を穴が開くほど見つめてしまった。その隣では、ユーリも同じように女性の身体を見つめていた。


「私の身体に、何か変なものでもついているのかしら。ああ、ごめんなさい。突然めまいが……。」

 女性は、唐突に頭に手を当てて、急にゆらりと倒れ始める。身体は、床に衝突するかと思われたが、実際に床と女性が接触することはなかった。


「大丈夫ですか。お嬢さん。具合が悪いなら、早く言わないとだめですよ。部屋はどこですか。私が責任をもって部屋まで送り届けましょう。」

 とっさに抱きかかえていたのは、ユーリだった。若い女性とくれば、見境なくデレデレするのは、治る兆しを見せず、どんどん悪化の一途をたどっていた。

「いえ、お気になさらず、ただの貧血ですから。でも、せっかく手を貸していただけるのなら、部屋まで支えてもらおうかしら。」

 ユーリにとって都合の良い展開が待ち受けている。部屋まで送り届けて、その後、彼女の部屋で何も起こらないはずがない。


「そ、そんなに身体を押し付けなくても……。」

 むにゅっと音がして、ユーリの腕に女性が密着する。その際にたわわな胸がユーリの腕に圧迫されて、形を変える。


「ちょっつ。」

「ちょろいねえ、こんなのが今回の勇者なんて、魔王様が悲しむわ。」

 ぼそっとつぶやかれた言葉を拾ってしまったカナデは、ある可能性にたどりつく。



「あの、もしかして、あなたは魔王様の手下ですか。」

 ついうっかり本人に確認を取ってしまった。とはいえ、もしそうだとしても、今の女性の恰好は敵だとしても見過ごすことができなかった。


 女性は、真っ赤なチャイナ服を身にまとっていた。ただし、そのチャイナ服の胸の部分は例によってなぜか穴がハート型に穴が開いている。そして、下半身も言わずもがな、下着が見えそうなほどのスリットが入っていた。きっと下着は紐パンの類なのだろう。あれだけはだけても見えないのは普通の下着ではありえない。足は編みタイツで、スリットから見える網目が艶めかしい。

 こんな目立つ格好をしていて、なおかつユーリに声をかけてくるのだから、魔王の手下と思っても仕方ないだろう。


「どうして、そう思うのかしら。」


「いや、ただ、あなたの目立つ格好と、もう一つ決定的なのは……。」


「ピヨピヨピヨピーーーーーーーー。」

 女性が近づいてきたときから、鳴りやまぬ魔王発見器の存在が決定的証拠となっていた。しかし、彼女だけにエミリアの首から下げているネックレスが反応したわけではなかった。いつの間にか、ユーリたちの周りには女性が集まり始めていた。


「こ、これは、お、オレは今日にもでも死んでもいいかもしれない……。」

「ユーリ様、お下がりを。ここは我々が何とかして見せます。」

「ユーリ様に近づくやつは殺す。」


 シーラとルーがユーリと女性たちの間に割って入り、けん制する。


「これは、また男の願望のお披露目会かよ。」

 カナデはがっくりと肩を落とす。話しかけてきた女性はまだましな方だと思えるほどだった。ユーリたちを囲む女性は五人ほど。どこのコスプレ会場から抜け出してきたかのような破廉恥極まりない恰好の女性たちが目の前にいたのだった。

 巫女装束にナースにポリス、サンタにバニースーツ。恐ろしいほどの男性の願望が形になって目の前に現れたかのようだった。

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