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第九章 不幸を振りまく少女

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「仕事をどうしてもやめないというのなら、仕方ありません。両親も許可しているのだから、これから、一緒に仕事をしていきましょう」

 美彩はあきらめのため息を吐きながら、仕事の依頼内容を彼らに話すことにした。説得をあきらめたが、一度自分の気持ちを相手にぶつけたおかげか、今までのもやもやとした気持ちが少し減った気がした。美彩は気持ちを切り替えることにした。

「今回の依頼者は、霊に憑りつかれた少女の母親です。取り憑かれた少女の名前は、曾根崎笑美(そねざき笑美)。17歳。私たちと同じ大学に通う一年生で、母親が娘の身の回りに起きた謎の現象を気味悪がって、私たちのもとに相談にきました。彼女の周りにいた人間は、何もないところで突然転んだり、自分一人しかいないはずなのに、背後から声が聞こえたり、ふらふらと誰かに呼ばれるように歩いていて、危うく事故に遭いかけたなどと証言しているようです」

「それは霊の嫌ないたずらだよね。霊の行動がエスカレートしたら」

「そう、霊の行動がエスカレートしたら、最悪の場合、死人が出る可能性もあります」

「だったらすぐにでも祓う必要があるだろ。それなのに、まだ面談の日が決まっていないのはなぜだ?」

 説明していると、途中で彼らに口を挟まれる。面談をしようにもなかなか日程が決まらないのには理由がある。

「彼女自身が、憑りつかれていることに何も感じないということです」

 母親は、さっさと霊を娘から引き離して欲しいと言っている。それなのに、娘の方は自分に霊などついていないの一点張りで、自分の周りの人間が被害をうけているのに、気にも留めていない。そんなこんなで、なかなか二人そろって面談に来ることができない状況なのだ。

「あのね、一つ、面談を早める方法が思いついたんですけど」

 面談をせずに、直接依頼をこなすことはできるが、それでは成功報酬や祓う方法などの詳しいことを話せないまま仕事をすることになる。霊などと言う、得体のしれない者を扱ってはいるが、無償でやっているわけではない。お金を取って、霊媒をしているのだ。契約内容を互いに理解することも必要なことである。

 二人の知名度やら、人脈を使えば案外簡単に面談日を取り付けることができるかもしれない。美彩自身が失敗した方法を彼らに提案する。

「同じ大学に通っていることを生かして、憑りつかれている彼女と接触して、うちに呼んでほしいの」

 美彩の思いきった発言に、二人は一瞬、ぽかんとした顔をしていたが、話の内容を理解するなり、二つ返事で引き受けてくれた。

「そんなこと、お安い御用ですよ。ねえ、久瑠兄。僕たち二人にかかれば、楽勝だとおも」

「美彩さんは彼女の連絡先を知っていますか?」

『すでに美彩も接触はしているが、取り付く島もなかった。背後に憑りついている霊も確認したが美彩にはこれが精いっぱいだ。なにせ、極度の人見知りだからな。察してやれ』

「シラコ!余計なこと言わないでくれる?それに、あの子が依頼者の娘かもわからな」

『十中八九、あの女で間違いないだろう』

 美彩が同級生から聞いた噂の女子生徒が依頼者だとシラコは言い切ったが、確証はない。しかし、あっさりと美彩の提案を飲んだ二人は、次の日からさっそく行動を起こしてくれたのだった。


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