31 / 59
第六章 真実と結末
2
しおりを挟む
「これがオレの視点からの話し。久瑠兄は、オレに幻滅した。オレって、最低な男だったんだよ」
話を終えた久瑠羽は、自嘲気味に笑った。久瑠徒はそんな弟にかける言葉が見つからず、口を開いては閉じることを繰り返す。そんな気まずい雰囲気を壊したのは、彼女だった。
「久瑠羽が久瑠徒を装っていたのは知っていたから、別にそこが問題じゃないわ。私は二人から愛されていた、そのことがとっても嬉しかった」
「何を言って」
「だから、二人が私のことを愛してくれていたのは知っていたと言っているの。それなのに、そんなことがいつまでも続くんじゃないかと思っていたのに」
久瑠羽は彼女の言葉に驚きを隠せない。他人の顔を覚えるのが苦手だと言っていたし、実際に初対面では兄の久瑠徒と弟の久瑠羽を間違えていた。それなのに、実は自分が兄ではなく、弟だと気づいていたとしたら。
「もし、それが本当なら、お前はオレと弟をだましていたということだろ。オレが浮気していたというのなら、お前も弟と浮気していたということだ」
「ちが、私は二人とも愛していた。二人を好きになってしまった」
「もう、そんな戯言は聞きたくない。さっさと成仏しろ。そして、身体を美彩さんに返すんだ」
久瑠徒は、弟の話を聞いてようやく彼女との思い出に決着をつけることができた。この一週間、美彩と過ごしてきたが、どうにも心が晴れることがなかった。美彩は、表面上は楽しそうに微笑んでいたが、実は自分と二人きりで満足していなかったということだ。
「そう、久瑠徒はそんなこと言うんだね。私が死んで、もう他に好きな人ができた?もしかして、この身体の持ち主?」
「ちがう!」
「違わない!」
「もうやめろ!醜い言い争いはここまでにしよう」
久瑠徒と美彩が口論を始めた。いまさらそんなことをしても、彼女がこの世に戻ってくることはない。久瑠羽は、美彩の母親から聞かされた彼女の秘密をここで暴露することにした。彼女の自殺の原因は、自分たち兄妹に話していなかった秘密が原因だ。そう考えると、彼女の言動にも辻褄があう。
「先輩、実は大学卒業後、結婚する予定でしたよね?しかも、親同士が決めた相手で、年が20歳以上離れている男性と。それが嫌だったんですよね」
「本当なのか?だから、オレと別れようとし」
「だったら何だっていうの?そうだとしても、いまさらそんなこと言っても、遅いでしょう?私は確かにそれが嫌で自殺した。でも、今となってはラッキーかもと思ったの。だって、幸運にも私は新たな身体を手に入れた」
『それは無理だ。所詮、お前は魂のみの存在。お前の身体はとうに燃やされて跡形もない。他人の身体で生きることはできない』
「シラコさん!」
『まったく、こんなことになるだろうとは思っていたが、本当にそうなるとはな。さて、お前に選択肢を与えよう。期限は今日の日付が変わる頃まで』
久瑠徒の身体から突然、白いヘビが姿を現した。久瑠羽が思わず叫んでしまったが、今回はどうやら久瑠徒にもシラコの姿が見えているようで、自分の身体に巻き付いた白ヘビに腰を抜かして、リビングの床に倒れこむ
「私の答えは決まっているわ。この身体を」
『そうか。なら仕方ない』
シラコは、久瑠徒の身体から離れると、美彩に問いかける。美彩は問いかけに応じるが、その答えはシラコのお気に召さなかったようだ。
『待とうとは思ったが、お前の態度は変わりそうにない。期限内にいただいてしまおうか。もう、アレが始まる頃だからな』
「な、何を言い出すのかしら?そこの白ヘビは?」
『これ以上は見ていられない。そこの兄弟』
突然、シラコに呼ばれた須見兄弟は慌てて返事をする。その返事に気をよくしたのか、シラコはチロチロと長い舌を出している。
『よく見ておくがいい。結局のところ、この世に未練がある者の末路は大抵ろくなものにならないことをな』
シラコは音もなく美彩に近づくと、その首筋に思い切りかみついた。
話を終えた久瑠羽は、自嘲気味に笑った。久瑠徒はそんな弟にかける言葉が見つからず、口を開いては閉じることを繰り返す。そんな気まずい雰囲気を壊したのは、彼女だった。
「久瑠羽が久瑠徒を装っていたのは知っていたから、別にそこが問題じゃないわ。私は二人から愛されていた、そのことがとっても嬉しかった」
「何を言って」
「だから、二人が私のことを愛してくれていたのは知っていたと言っているの。それなのに、そんなことがいつまでも続くんじゃないかと思っていたのに」
久瑠羽は彼女の言葉に驚きを隠せない。他人の顔を覚えるのが苦手だと言っていたし、実際に初対面では兄の久瑠徒と弟の久瑠羽を間違えていた。それなのに、実は自分が兄ではなく、弟だと気づいていたとしたら。
「もし、それが本当なら、お前はオレと弟をだましていたということだろ。オレが浮気していたというのなら、お前も弟と浮気していたということだ」
「ちが、私は二人とも愛していた。二人を好きになってしまった」
「もう、そんな戯言は聞きたくない。さっさと成仏しろ。そして、身体を美彩さんに返すんだ」
久瑠徒は、弟の話を聞いてようやく彼女との思い出に決着をつけることができた。この一週間、美彩と過ごしてきたが、どうにも心が晴れることがなかった。美彩は、表面上は楽しそうに微笑んでいたが、実は自分と二人きりで満足していなかったということだ。
「そう、久瑠徒はそんなこと言うんだね。私が死んで、もう他に好きな人ができた?もしかして、この身体の持ち主?」
「ちがう!」
「違わない!」
「もうやめろ!醜い言い争いはここまでにしよう」
久瑠徒と美彩が口論を始めた。いまさらそんなことをしても、彼女がこの世に戻ってくることはない。久瑠羽は、美彩の母親から聞かされた彼女の秘密をここで暴露することにした。彼女の自殺の原因は、自分たち兄妹に話していなかった秘密が原因だ。そう考えると、彼女の言動にも辻褄があう。
「先輩、実は大学卒業後、結婚する予定でしたよね?しかも、親同士が決めた相手で、年が20歳以上離れている男性と。それが嫌だったんですよね」
「本当なのか?だから、オレと別れようとし」
「だったら何だっていうの?そうだとしても、いまさらそんなこと言っても、遅いでしょう?私は確かにそれが嫌で自殺した。でも、今となってはラッキーかもと思ったの。だって、幸運にも私は新たな身体を手に入れた」
『それは無理だ。所詮、お前は魂のみの存在。お前の身体はとうに燃やされて跡形もない。他人の身体で生きることはできない』
「シラコさん!」
『まったく、こんなことになるだろうとは思っていたが、本当にそうなるとはな。さて、お前に選択肢を与えよう。期限は今日の日付が変わる頃まで』
久瑠徒の身体から突然、白いヘビが姿を現した。久瑠羽が思わず叫んでしまったが、今回はどうやら久瑠徒にもシラコの姿が見えているようで、自分の身体に巻き付いた白ヘビに腰を抜かして、リビングの床に倒れこむ
「私の答えは決まっているわ。この身体を」
『そうか。なら仕方ない』
シラコは、久瑠徒の身体から離れると、美彩に問いかける。美彩は問いかけに応じるが、その答えはシラコのお気に召さなかったようだ。
『待とうとは思ったが、お前の態度は変わりそうにない。期限内にいただいてしまおうか。もう、アレが始まる頃だからな』
「な、何を言い出すのかしら?そこの白ヘビは?」
『これ以上は見ていられない。そこの兄弟』
突然、シラコに呼ばれた須見兄弟は慌てて返事をする。その返事に気をよくしたのか、シラコはチロチロと長い舌を出している。
『よく見ておくがいい。結局のところ、この世に未練がある者の末路は大抵ろくなものにならないことをな』
シラコは音もなく美彩に近づくと、その首筋に思い切りかみついた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる