2 / 59
第一章 入学式
2
しおりを挟む
入学式は、何事もなく終了した。美彩は、眠気と戦いながらも、何とか眠らず入学式を乗り切った。そのため、誰が代表挨拶をしたのか、学長がどんな話をしていたのか全く覚えていなかった。
「では、この後、各学部、学科でのガイダンスがありますので、指定の教室まで移動してください」
美彩は眠い目をこすりながら、ガイダンスが行われる教室まで移動しようと席を立ち、人の流れに沿って講堂を出ようと歩き出す。
「あれ、陽炎じゃん。おまえ、この大学の試験受けていたんだな」
聞き覚えのある声に呼び止められた。嫌々、声のした方に視線を向けると、そこには髪を茶髪に染めた、スーツ姿の新入生がいた。
「私が試験を受けていちゃいけないわけ?ていうか、私に何の用?」
「いや、見知った顔を見かけたら、声をかけるのは普通だろ。ところで、お前、いまだに人には見えないものが見えるとか言っているのか?」
男子学生の言葉に、美彩は一瞬、言葉を詰まらせる。しかし何とか平静を保ちながら、軽く答えようとした。
「な、何を言っているのかわからないんだけど、そ、そんなこと、言ったおぼえは」
『ああ、思い出した。こいつはお前をいじめていたやつか』
美彩の身体に巻き付いているシラコの言葉にかすかに頷く。美彩は男子学生を見た瞬間から、身体の震えが止まらなくなっていた。これ以上、目の前の男と会話をしていたら、倒れてしまうと自覚があった。
「もしそうなら、相談に乗って欲しい奴がいるんだ、おい、顔が真っ青だけど大丈夫か?」
「だ、大丈夫。と、とりあえず、今からガイダンスがあるから、話はその後でもいいよね。高橋君、学部は?」
「オレか?オレは工学部。お前は?」
「私は、文学部。じゃあ、またね」
急いで立ち去る美彩を高橋は引き留めようとするが、美彩は無視して講堂を出て、ガイダンスが行われる教室に早足で向かう。高橋も工学部のガイダンスに参加するため、美彩を追うことはなかった。
「はあ、はあ」
急いで走ってきたため、ガイダンスが行われる教室にたどりつくころには、美彩の息は絶え絶えとなっていた。すでに他の同じ学科の生徒たちは席に着いており、美彩は空いていた席に、静かに着席する。あたりを見渡すと、入学式で見た時よりも、全体的に落ち着いた学生が多いことに気付く。髪を染めている人などもいるが、大人しめな印象を受けた。
「では、この後、各学部、学科でのガイダンスがありますので、指定の教室まで移動してください」
美彩は眠い目をこすりながら、ガイダンスが行われる教室まで移動しようと席を立ち、人の流れに沿って講堂を出ようと歩き出す。
「あれ、陽炎じゃん。おまえ、この大学の試験受けていたんだな」
聞き覚えのある声に呼び止められた。嫌々、声のした方に視線を向けると、そこには髪を茶髪に染めた、スーツ姿の新入生がいた。
「私が試験を受けていちゃいけないわけ?ていうか、私に何の用?」
「いや、見知った顔を見かけたら、声をかけるのは普通だろ。ところで、お前、いまだに人には見えないものが見えるとか言っているのか?」
男子学生の言葉に、美彩は一瞬、言葉を詰まらせる。しかし何とか平静を保ちながら、軽く答えようとした。
「な、何を言っているのかわからないんだけど、そ、そんなこと、言ったおぼえは」
『ああ、思い出した。こいつはお前をいじめていたやつか』
美彩の身体に巻き付いているシラコの言葉にかすかに頷く。美彩は男子学生を見た瞬間から、身体の震えが止まらなくなっていた。これ以上、目の前の男と会話をしていたら、倒れてしまうと自覚があった。
「もしそうなら、相談に乗って欲しい奴がいるんだ、おい、顔が真っ青だけど大丈夫か?」
「だ、大丈夫。と、とりあえず、今からガイダンスがあるから、話はその後でもいいよね。高橋君、学部は?」
「オレか?オレは工学部。お前は?」
「私は、文学部。じゃあ、またね」
急いで立ち去る美彩を高橋は引き留めようとするが、美彩は無視して講堂を出て、ガイダンスが行われる教室に早足で向かう。高橋も工学部のガイダンスに参加するため、美彩を追うことはなかった。
「はあ、はあ」
急いで走ってきたため、ガイダンスが行われる教室にたどりつくころには、美彩の息は絶え絶えとなっていた。すでに他の同じ学科の生徒たちは席に着いており、美彩は空いていた席に、静かに着席する。あたりを見渡すと、入学式で見た時よりも、全体的に落ち着いた学生が多いことに気付く。髪を染めている人などもいるが、大人しめな印象を受けた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる