朔夜蒼紗の大学生活⑥

折原さゆみ

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「文化祭に、今話題の西炎(さいえん)がゲストに来るんですよ!」

『さいえん?』

 ジャスミンと綾崎さんの会話に耳を傾けることにしたら、どうやら綾崎さんが文化祭に来るゲストについて熱く語ろうとしているところだったようだ。しかし、私はその【さいえん】とやらがなにかわからない。ジャスミンも私と同様で、2人で首をかしげて綾崎さんの言葉を復唱する。見事なハモリを見せた。

 私の大学では文化祭が11月の最初の週末に2日間行われることになっていた。2日間、大学の中庭に仮設のステージが作られ、そこで部活やサークルの有志が歌やバンドを披露する。そこに外部からのゲストも呼んでいることは知っていた。

 昨年の文化祭に参加したが、あまり記憶に残っていない。そもそも、あまり芸能関係に興味がないので、誰が来てもわからないので、盛り上がれないのだ。それに、昨年は翼君のことが気になってあまり周りが見えていなかった。

「そいつってどんなやつなの?」

 ジャスミンが私の代わりに綾崎さんに質問する。

「はあああ」

 綾崎さんが本日2回目の深いため息を吐く。とはいえ、優しい彼女は簡単にゲストについての説明をしてくれた。

「西炎さんは、ボカロPとして最近、爆発的な人気が出て来た人ですよ。最初は自分の作った曲をボーカロイドに歌わせた動画をアニメーション付のMVとして動画に出していたんですけど、その後、自らも歌うようになって、彼自身の歌声に魅了された人が増えて、そこからレコード会社の目に留まって、そこから晴れてデビューを果たした期待のルーキーですよ!」

「ああ、そういえば、名前は聞いたことあるかも。ボカロPとか、それを歌う歌い手とか、綾崎さんはそういうのが好きなの?」

 質問したのはジャスミンなのに、あまり興味がないのか、退屈そうに綾崎さんの話を聞いている。私もさほど興味を持てないので、綾崎さんの話をただ頷くことしかできない。

「まったく、これだからおばさんたちは。私も彼が有名になり始めた時は、特に興味がなかったんですけど、友達からある動画を見せてもらって、一気にファンになりました!それがこれです!」

 【さいえん】を知らなかっただけでおばさん扱いはひどすぎる。私だって見た目だけなら立派な女子大生だし、ジャスミンなんて正真正銘の女子大生だ。綾崎さんと同い年のはずなのにひどい言い様である。

 とはいえ、興奮したように話す綾崎さんに訂正を入れるのも面倒なので黙っておく。綾崎さんは私たちにある動画を見せてくれた。

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