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49彼らを接触させない方法
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「雨水君!」
「ああ、西園寺さんといつも一緒に居た男ね。何度か会っているけど、今日はどんな用件かしら?」
玄関で話すようなことでもないので、リビングに彼を招き入れる。リビングには暇そうにソファに座っている九尾がいた。
「オレを連れてきたのは、そこの九尾の眷属だとかいう少年だ。オレも朔夜の家に呼ばれただけで、まだ用件を聞いてない」
二人にソファに座るように勧め、雨水君を連れてきた翼君に、彼を呼びだした説明を求めることにした。
「翼君、さっき、駒沢の居場所が分かったと言っていましたよね。それはありがたいのですが、それと雨水君を呼んだ理由は」
「彼の居場所はすぐに判明しました。やはり、彼女のことが気になるのか、彼女のアパートにいました。たまたま、彼女は家を留守にしていたみたいで。今のところ、蒼紗さんが彼女と会って以降、彼らは接触していないと思います」
翼君は、私の話を遮り、興奮気味に話し出す。現在の姿は大学生くらいの少年でうさ耳も尻尾も生えていないが、生えていたら、興奮でケモミミや尻尾が動いていただろう。
彼の言葉から、二人が接触していないことがわかり、少し安堵した。しかし、今後も接触がないとは限らない。そもそも、すでに駒沢が彼女のアパートまで足を運んでいる。鬼崎さんが自宅のアパートに戻ったらアウトだ。私が彼らについて考えている間も翼君の話は続いている。
「そこで僕は考えました。そこで彼らが接触しないようにする良い方法を思いつきました!」
ここで翼君は、雨水君に視線を向けた。私は彼の行動の意味がわからず、首をかしげる。視線を向けられた雨水君も困惑した表情を浮かべている。見た目は青年にしか見えない私の家の居候は、私たちが理解していないことに気付いていないようで、嬉々として彼らが接触しない方法を述べ始めた。
「要するに、二人がその場から動けない状況にすればいいんですよ!ここで役に立つのが彼の能力というわけです!」
「雨水君の能力は確か、雨を降らすとかですよね?」
「その通りです!彼が駒沢という男の足止め、あるいは、鬼崎という女の足止めをしてもらいます。彼がどちらかをその場に引き留めてくれれば、もう片方を僕たちが対処する。いい考えでしょう?」
「面白いことを思いついたが、七尾の許可は取れたのか?」
「彼は僕たちと違って、主従関係にあるわけではないでしょう?許可を取る必要はないと思います!」
自信満々に自分のアイデアを語った翼君だが、すぐに彼の主である九尾に冷静に突っ込まれる。九尾は彼の提案に口をはさんだが、興味があるようだ。しかし、この案を採用すると、雨水君を危険に巻き込むことになる。
「九尾、まさか翼君の提案を受け入れる気じゃ」
「僕はいいよー。さっさとあの男からいろいろ聞き出そうじゃないか!」
「七尾!お前は家に居ると」
「だって、お前だけ面白いことに首を突っ込もうとしているのに、僕が見逃すわけがないだろう?」
何もない空間に突如、煙が立ち込め、七尾が姿を現した。何もない空間から突然姿を現すのは、九尾などですでに見慣れていて、特に驚きはなかった。ジャスミンも私よりも目にする回数が少ないのに、あまり驚いていなかった。慣れというのは恐ろしい。
「七尾さんもどうでしょう?僕のアイデアに乗ってくれますよね?」
どうにも翼君のテンションが壊れている。九尾の元眷属にそのような軽い口調で話していいものだろうかとこちらが心配になってしまう。どうにも、無理に明るく振舞っているように見えてしまう。
「翼君、戻ってきてから妙に元気がいいように見えますが、無理は」
「別にそこの少年のアイデアを使えばいいと思うけど。雨水君のことなら、どうせ今までだって、西園寺さんと一緒に行動して危険な目には合っているだろうし、今更心配する必要はないと思うわよ」
「オレも構わない。翼だったか。オレはどっちの足止めをすればいいんだ?」
ジャスミンもなんだか翼君のアイデアに賛成していた。巻き込まれているはずの雨水君も乗り気で、反対を示しているのはこの場に私だけのようだ。駒沢と鬼崎さんを接触させない方法として、採用されそうな流れになってきた。
「我らとしては、男の方に用事がある。聞きたいことがたくさんあるからな。だから、お前は男がアパートから出られないくらいの大雨を降らしてくれればいい。女の方は」
「そっちは綾崎さんが適任だわ。私から連絡をしておいてあげる」
私の心配をよそに、彼らは翼君の案を取り入れて、駒沢たちを接触させないようにする話を進めていた。しかも、その作戦に綾崎さんも加えるというジャスミンの言葉に、さすがにそれはやめて欲しいと割って入る。
「綾崎さんまで巻き込まないでください!」
「そこまで心配する必要はないでしょ。だって、鬼崎さんの足止めだもの。彼女は能力者ではないと聞いているけど、違うのかしら?」
「彼女自身に脅威はない。退学になるように記憶の改ざんしたのと、われらのことを記憶から消去しただけだから、そちらに向かわせるのは問題ないだろうな」
「ほら、狐の神様も言っているのだし、そうすれば、私たちは駒沢の方に専念できるでしょう?それにしても、鬼崎さんにかなりえぐいことをしていたのね」
九尾とジャスミンが私を無視して話を進めていく。そういえば、ジャスミンに話すと言っていたが、鬼崎さんについて話すのをすっかり忘れていた。それなのに、九尾の一言で納得してしまったのは、どうかと思う。
「パン!」
私たちが話しているのを遮るかのように、手のひらをたたく音が部屋に鳴り響く。音を出したのは翼君だった。
「急がないと、駒沢が用事を済ませて家を去るか、彼女が家に戻るかもしれません」
結局、私の意見は無視され、私とジャスミン、雨水君、九尾に七尾、翼君は鬼崎さんのアパートに向かうことになった。綾崎さんは、ジャスミンが連絡を取った結果、私に協力してくれるらしい。鬼崎さんを探して、見つけ次第、家に戻らないように話をするなどの方法で引き留めてくれる役を引き受けてくれることになった。
「あとで、綾崎さんにお礼をしておかなくてはいけませんね」
「私にはお礼はないの?今回、私は結構、蒼紗の役に立っていると思うけど」
「それなら、オレも役に立ったと言える」
家を出る際、先に九尾たち人外は出ていったので、玄関に残っていたのは私とジャスミン、雨水君の三人だった。
「な、何が言いたいんですか?」
「さあ、お礼を綾崎さんにだけするのは、不公平だなと思っただけよ。ねえ、雨水君。そんな薄情な人、見たことないわよねえ」
「オレは一人、知っているが、すでにこの世にいない」
いったい、どこで通じ合う場面があったのだろうか。二人はにやにやしながら私をじっと見つめてくる。これは私に何か期待しているか、面白いおもちゃを見つけた子供のような表情である。同じような表情をした二人に、どうしてやろうかと考え込む。
「お二人は、私からのお礼を望んでいるのですね」
考えたが二人を満足させるような回答を私は持ち合わせていない。それなら、私が考えたお礼でいいだろう。これが二人を満足させるかは不明だが、やってみるしかない。
「チュッ」
まずはジャスミンに対してのお礼を行う。女子同士だからと思ったが、これは思いのほか恥ずかしい。
「なっ、蒼紗。これはもしや!」
「パシャシャシャシャシャ」
私の行動に驚いて固まりつつも、顔が徐々に赤く染まっていくジャスミン。その様子を連射しているのは雨水君だ。
「面白いな。佐藤は西園寺が好きだと思っていたが、朔夜に見事に乗り換えたんだな」
「今度は雨水君の番です」
余裕をかましている雨水君に思い切って抱き着いてみる。さすがに、異性にジャスミンと同じお礼はやってはいけない気がしたので自重した。私としても、異性にそんな大胆なことはできない。
「なっ」
「蒼紗から離れなさい。この外道」
ガシッと身体を掴まれ、一瞬にして、私と雨水君の距離は離れた。
「ふふふふ」
私の些細なお礼がこの場の空気を和ませたかと思うと、なんだかうれしくなる。私の行動に驚いた二人だが、最後にはおかしくてたまらないという感じで私と一緒に笑い出した。
「では、笑って緊張がほぐれたところで、いざ、出陣といたしますか」
「オー」
九尾たちからだいぶ遅れて、私たちは家を出た。
「行ってきます」
その際、家に誰もいないが、しっかりと挨拶をすることは忘れなかった。空を見上げると、雨水雲に覆われて、お世辞にも良い天気とは言えなかった。
「ああ、西園寺さんといつも一緒に居た男ね。何度か会っているけど、今日はどんな用件かしら?」
玄関で話すようなことでもないので、リビングに彼を招き入れる。リビングには暇そうにソファに座っている九尾がいた。
「オレを連れてきたのは、そこの九尾の眷属だとかいう少年だ。オレも朔夜の家に呼ばれただけで、まだ用件を聞いてない」
二人にソファに座るように勧め、雨水君を連れてきた翼君に、彼を呼びだした説明を求めることにした。
「翼君、さっき、駒沢の居場所が分かったと言っていましたよね。それはありがたいのですが、それと雨水君を呼んだ理由は」
「彼の居場所はすぐに判明しました。やはり、彼女のことが気になるのか、彼女のアパートにいました。たまたま、彼女は家を留守にしていたみたいで。今のところ、蒼紗さんが彼女と会って以降、彼らは接触していないと思います」
翼君は、私の話を遮り、興奮気味に話し出す。現在の姿は大学生くらいの少年でうさ耳も尻尾も生えていないが、生えていたら、興奮でケモミミや尻尾が動いていただろう。
彼の言葉から、二人が接触していないことがわかり、少し安堵した。しかし、今後も接触がないとは限らない。そもそも、すでに駒沢が彼女のアパートまで足を運んでいる。鬼崎さんが自宅のアパートに戻ったらアウトだ。私が彼らについて考えている間も翼君の話は続いている。
「そこで僕は考えました。そこで彼らが接触しないようにする良い方法を思いつきました!」
ここで翼君は、雨水君に視線を向けた。私は彼の行動の意味がわからず、首をかしげる。視線を向けられた雨水君も困惑した表情を浮かべている。見た目は青年にしか見えない私の家の居候は、私たちが理解していないことに気付いていないようで、嬉々として彼らが接触しない方法を述べ始めた。
「要するに、二人がその場から動けない状況にすればいいんですよ!ここで役に立つのが彼の能力というわけです!」
「雨水君の能力は確か、雨を降らすとかですよね?」
「その通りです!彼が駒沢という男の足止め、あるいは、鬼崎という女の足止めをしてもらいます。彼がどちらかをその場に引き留めてくれれば、もう片方を僕たちが対処する。いい考えでしょう?」
「面白いことを思いついたが、七尾の許可は取れたのか?」
「彼は僕たちと違って、主従関係にあるわけではないでしょう?許可を取る必要はないと思います!」
自信満々に自分のアイデアを語った翼君だが、すぐに彼の主である九尾に冷静に突っ込まれる。九尾は彼の提案に口をはさんだが、興味があるようだ。しかし、この案を採用すると、雨水君を危険に巻き込むことになる。
「九尾、まさか翼君の提案を受け入れる気じゃ」
「僕はいいよー。さっさとあの男からいろいろ聞き出そうじゃないか!」
「七尾!お前は家に居ると」
「だって、お前だけ面白いことに首を突っ込もうとしているのに、僕が見逃すわけがないだろう?」
何もない空間に突如、煙が立ち込め、七尾が姿を現した。何もない空間から突然姿を現すのは、九尾などですでに見慣れていて、特に驚きはなかった。ジャスミンも私よりも目にする回数が少ないのに、あまり驚いていなかった。慣れというのは恐ろしい。
「七尾さんもどうでしょう?僕のアイデアに乗ってくれますよね?」
どうにも翼君のテンションが壊れている。九尾の元眷属にそのような軽い口調で話していいものだろうかとこちらが心配になってしまう。どうにも、無理に明るく振舞っているように見えてしまう。
「翼君、戻ってきてから妙に元気がいいように見えますが、無理は」
「別にそこの少年のアイデアを使えばいいと思うけど。雨水君のことなら、どうせ今までだって、西園寺さんと一緒に行動して危険な目には合っているだろうし、今更心配する必要はないと思うわよ」
「オレも構わない。翼だったか。オレはどっちの足止めをすればいいんだ?」
ジャスミンもなんだか翼君のアイデアに賛成していた。巻き込まれているはずの雨水君も乗り気で、反対を示しているのはこの場に私だけのようだ。駒沢と鬼崎さんを接触させない方法として、採用されそうな流れになってきた。
「我らとしては、男の方に用事がある。聞きたいことがたくさんあるからな。だから、お前は男がアパートから出られないくらいの大雨を降らしてくれればいい。女の方は」
「そっちは綾崎さんが適任だわ。私から連絡をしておいてあげる」
私の心配をよそに、彼らは翼君の案を取り入れて、駒沢たちを接触させないようにする話を進めていた。しかも、その作戦に綾崎さんも加えるというジャスミンの言葉に、さすがにそれはやめて欲しいと割って入る。
「綾崎さんまで巻き込まないでください!」
「そこまで心配する必要はないでしょ。だって、鬼崎さんの足止めだもの。彼女は能力者ではないと聞いているけど、違うのかしら?」
「彼女自身に脅威はない。退学になるように記憶の改ざんしたのと、われらのことを記憶から消去しただけだから、そちらに向かわせるのは問題ないだろうな」
「ほら、狐の神様も言っているのだし、そうすれば、私たちは駒沢の方に専念できるでしょう?それにしても、鬼崎さんにかなりえぐいことをしていたのね」
九尾とジャスミンが私を無視して話を進めていく。そういえば、ジャスミンに話すと言っていたが、鬼崎さんについて話すのをすっかり忘れていた。それなのに、九尾の一言で納得してしまったのは、どうかと思う。
「パン!」
私たちが話しているのを遮るかのように、手のひらをたたく音が部屋に鳴り響く。音を出したのは翼君だった。
「急がないと、駒沢が用事を済ませて家を去るか、彼女が家に戻るかもしれません」
結局、私の意見は無視され、私とジャスミン、雨水君、九尾に七尾、翼君は鬼崎さんのアパートに向かうことになった。綾崎さんは、ジャスミンが連絡を取った結果、私に協力してくれるらしい。鬼崎さんを探して、見つけ次第、家に戻らないように話をするなどの方法で引き留めてくれる役を引き受けてくれることになった。
「あとで、綾崎さんにお礼をしておかなくてはいけませんね」
「私にはお礼はないの?今回、私は結構、蒼紗の役に立っていると思うけど」
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「な、何が言いたいんですか?」
「さあ、お礼を綾崎さんにだけするのは、不公平だなと思っただけよ。ねえ、雨水君。そんな薄情な人、見たことないわよねえ」
「オレは一人、知っているが、すでにこの世にいない」
いったい、どこで通じ合う場面があったのだろうか。二人はにやにやしながら私をじっと見つめてくる。これは私に何か期待しているか、面白いおもちゃを見つけた子供のような表情である。同じような表情をした二人に、どうしてやろうかと考え込む。
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「チュッ」
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「なっ」
「蒼紗から離れなさい。この外道」
ガシッと身体を掴まれ、一瞬にして、私と雨水君の距離は離れた。
「ふふふふ」
私の些細なお礼がこの場の空気を和ませたかと思うと、なんだかうれしくなる。私の行動に驚いた二人だが、最後にはおかしくてたまらないという感じで私と一緒に笑い出した。
「では、笑って緊張がほぐれたところで、いざ、出陣といたしますか」
「オー」
九尾たちからだいぶ遅れて、私たちは家を出た。
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