レッツ腐男子生活!

折原さゆみ

文字の大きさ
上 下
1 / 8

1目覚めたら……

しおりを挟む
「ああ、今日も仕事疲れた」

 私は仕事に明け暮れている、実家暮らしの彼氏なしの腐女子である。黒髪ショートのメガネ、府中絵吏香(ふちゅうえりか)今年で25歳。腐女子ということもあり、趣味はBL(ボーイズラブ)作品を読み漁ること。仕事の癒しやストレス発散も込めて、いつもお世話になっている。

 今日も仕事で残業があり、帰宅は夜の8時過ぎ。実家暮らしの良いところは、帰宅したら家族がいて、温かい食事が用意されていることだ。家族の多少の小言も我慢する。

「お疲れ。今日の夕食はおでんよ」
「そんなに疲れるのなら、やめちゃえば。今時、もっと良い仕事あるでしょう?バカなの?」

 仕事でヘロヘロになっているところへ温かい言葉をかけてくれたのは母親。彼氏がどうとか結婚がどうとか言ってくるが、基本的に私に優しい。反対に私を口撃してきたのは妹の真理香(まりか)だ。年は5つ下で今年大学2年生の20歳。明るい茶髪のボブで、化粧も派手な今時の大学生。どうにも私のことが嫌いらしく、目が合えば私に対してきつめの言葉を投げてくる。

「お父さんもまだ仕事から帰ってきていないの。仕事が忙しいみたい」

 父親もまだ帰っていないらしい。しかし、私の空腹は限界に近い。キッチンからはおでんの良い匂いがしてきて、私の腹が大きく音を立てる。

「先に食べていいわよ。私とマリカはもう食べたから」
「ありがとう」

 私の家族はこんな感じで、現状、特に問題なく普通に生活している。明日も明後日も、同じような平穏な生活が続くと思っていた。



「なんか、股に違和感が……。ていうか、胸もないし、股間に何かついてる」

 いつものように夕食を取って、入浴して日付が変わる前にベッドに入って寝たはずだ。おでんも大根がしみておいしかったし、他のたまごやはんぺん類に異常はなかった。だとしたら、寝ている間に身体に異変が起きたのか。

 朝、目覚ましの音で目が覚めると、なぜか全裸だった。長そでのパジャマの上下とタンクトップ、パンツがベッドわきに落ちていた。そして、先ほどの発言となるわけだ。

 ここで発狂して叫ばなかったのは、夢の続きかと思ったからだ。そもそも、二次元でもあるまいし、現実世界である日突然、性転換することなどありえない。だからこそ、落ち着いていられたのだが、どうにもおかしい。基本的に朝の目覚めは良い方なので、目覚ましの音が鳴るだけで起きてしまう私がまだ夢の中なわけがない。

 性転換して男になってしまった事実が、徐々に私の頭の中に浸透していく。脳に確実にいきわたった瞬間。

「ええええええええええ!」

「うるさい!朝から何?」

 思わず叫んでしまった。起きてから10分が経過していた。私の叫び声を聞き、隣の部屋から妹が迷惑そうにやってきた。いや、妹ではなく。

「リオ兄。な、なんで裸なの?も、もしかして、僕をま」

「マリカ、だよね?」

「なに言ってんだ?俺はマオでお前の弟。そ、そうだよな。今日は特別寝相が悪かったんだな。うん、ていうか、さっさと服着ろよ。見苦しい」

 マリカ(なぜか今はマオ【弟】)は私の裸(男)を見て、顔を赤らめていた。しかし、すぐに不機嫌な様子に戻り、部屋から出ていった。

「性別転換、した世界か……」

 私は二次元でよくある「目覚めたら性転換した世界」に飛ばされた?らしい。ということは、これからもっと驚くべきことがたくさんあるはずだ。自分や妹の性転換に驚いていたが、心してかからないといけない。

「二次元、嗜んできた良かったわ」

 過去の私に感謝しながら、妹(弟)に言われた見苦しい姿を家族に晒さないため、部屋にあったクローゼットから下着と灰色のスウェット上下を取り出し、身に着ける。性転換した世界なので、服は男物らしい。先ほどのパジャマも下着も見たことのない男物だと気付く。

「まあ、男なのに女ものだったら逆におかしいか」

 とりあえず、服を着たので朝食を食べに二階の部屋から一階のリビングに向かうことにした。部屋の間取りは昨日までの私の実家と同じだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

処理中です...