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続編~中学校編②~
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楽しい夏休みのはずが、なんだかすっきりしない気持ちのまま、どんどんと過ぎていく。そして、あっという間に夏休みは終わってしまった。
夏休みが終わってしまうということは、すぐに自然学習の日がやってきてしまうということだ。自然学習の日は、明日に迫っていた。天気予報では、三日間とも晴れとなっていた。
天気が良く、晴れるのは当然うれしいが、オレの心はそれとは裏腹で、心の中は晴れ模様とは言い難い。むしろ、どんよりとした曇り模様で、今にも雷が鳴り、一雨きそうな心持ちだった。
「自然学習が楽しみですね。こうたろう君、福島さん。」
お盆休み後の部活で、別府えにしとばったり会った。その時に笑顔で言われた言葉が、思いのほか心に残っていた。オレは正直、彼女に会えた嬉しさよりも、自然学習の憂鬱の方が勝ってしまっていた。別府えにしと一緒でうれしいはずなのに、なぜかそれとは反対に嫌な予感もしていた。もちろん、くそ女も一緒のグループになってしまったことは忘れていない。彼女とくそ女が一緒のグループになってしまったことで、嫌な感じがするだけだと、オレは自分に言い聞かせることにした。
お盆休み後に会った彼女は、オレとは反対に、とても嬉しそうな表情をしていた。晴れ模様の雲一つない晴天のような笑顔だった。ただし、晴天が過ぎて災害が起こりそうな嫌な笑顔だとも言えた。
オレと夏休み中に会えたこと、オレと一緒のグループで自然学習を楽しめることの二つが彼女を笑顔にさせているのだろうか。もしそれだけならば、オレはここまで彼女の笑顔に疑問を持たないだろう。何となく、彼女の笑顔の理由は違う別にある気がした。
「そうだな。まあ、天気がいいことを祈るよ。」
「こうたろうは私と一緒に行動するから、邪魔しないでよ。」
他にも言いたいことがあったような気がするが、隣にくそ女がいたために、何を言いたいのかすっかり忘れてしまい、そのままその日は別れることになった。くそ女も、別府えにしに大した反論をすることはなかった。せいぜい、オレに腕を絡ませてくるだけだった。
自然学習では、学校の授業とは違い、グループ活動がメインとなる。そのため、グループのメンバーの良しあしで、楽しいか楽しくないかが大きく左右される。今回のオレのグループは、はたから見たら、楽しいグループに見えたかもしれない。しかし、オレにとっては楽しくないメンバーだった。
自然学習は二泊三日の予定で実施された。行き先はバスで二時間ぐらいの場所で、そこには山も海もある。一日目は山登りをして、夜に肝試しがある。二日目は、海に出て、いかだづくりが行われる。内海で波も来ないために、いかだを作り、レースをすることになっていた。そして夜にはキャンプファイヤーで、主な日程は終了となる。
バスでの移動だったが、座席決めでは特に問題はおこらなかった。グループでの活動がメインだが、最初からグループ単位で動く必要がないと判断した担任は、男子と女子で別れて座ることを指定したためだ。男子も女子も特に異論はおこらなかったため、無事に目的地に着くことができた。
「では、これから山登りに行きたいと思いますが、グループではぐれないようにしっかりと先生とガイドの指示に従って歩いてください。」
山登りのガイドと先生の指示にしたがい、オレたちはグループに固まって整列する。次々に歩き出していく生徒たち。オレたちのグループは呼ばれる順番が遅く、一番最後を歩くことになった。後ろには先生とガイドがいて、遅いと追い立てられるため、オレは別府えにしと落ち着いてゆっくりと話すことはできなかった。
「いい天気だから景色がきれいに見えるね。」
「そうだね、私たちの学年は晴れ女が多いんだよ。きっと。」
別府えにしは、いつ親しくなったのか不明だが、同じグループのくそ女ではない女子と仲良く話しながら歩いている。別にうらやましくなったわけではないが、せっかく恋人同士で付き合っているのに、一緒に話もしないのはどうかと思った。
「もう、愛想をつかれたんじゃない。それとも、もう、別府さんはこうたろうのこと眼中にないんだよ。薄情な女だね。」
そう言って、オレのそばにぴったりとくっついているのは、もちろんくそ女である。
「パシャ。」
カメラのシャッター音がその場に響き渡る。そういえば、自然学習中は、カメラマンが同行していたなと思い出す。くそ女はそれに気づくと、嬉しそうにオレに身体を密着させて、ピースサインをカメラに向ける。再度、カメラマンはシャッターを切っていた。オレはくそ女を振り払うことはせず、そのままされるがままになっていた。
ここで別府えにしがくそ女とオレが密着しているところを見て、嫉妬して声をかけてくれれば良かったのだが、彼女は本当にオレのことが眼中にないのか、まったく見向きもしなかった。彼女の行動に気を取られ、オレはくそ女から離れることを忘れていた。
それがのちに面倒なことを引き起こすとは、今のオレには思いつきもしなかった。
くそ女も、別府えにしも、それ以外のオレのグループのメンバーも体力だけはあったので、誰も疲れたと文句を言うことなく山登りは順調だった。決められた場所まで登り、その後は下山した。
くそ女の言う通り、今日はいい天気で、雲一つない快晴。景色はとてもきれいだった。天気予報は見事に当たっていた。
夏休みが終わってしまうということは、すぐに自然学習の日がやってきてしまうということだ。自然学習の日は、明日に迫っていた。天気予報では、三日間とも晴れとなっていた。
天気が良く、晴れるのは当然うれしいが、オレの心はそれとは裏腹で、心の中は晴れ模様とは言い難い。むしろ、どんよりとした曇り模様で、今にも雷が鳴り、一雨きそうな心持ちだった。
「自然学習が楽しみですね。こうたろう君、福島さん。」
お盆休み後の部活で、別府えにしとばったり会った。その時に笑顔で言われた言葉が、思いのほか心に残っていた。オレは正直、彼女に会えた嬉しさよりも、自然学習の憂鬱の方が勝ってしまっていた。別府えにしと一緒でうれしいはずなのに、なぜかそれとは反対に嫌な予感もしていた。もちろん、くそ女も一緒のグループになってしまったことは忘れていない。彼女とくそ女が一緒のグループになってしまったことで、嫌な感じがするだけだと、オレは自分に言い聞かせることにした。
お盆休み後に会った彼女は、オレとは反対に、とても嬉しそうな表情をしていた。晴れ模様の雲一つない晴天のような笑顔だった。ただし、晴天が過ぎて災害が起こりそうな嫌な笑顔だとも言えた。
オレと夏休み中に会えたこと、オレと一緒のグループで自然学習を楽しめることの二つが彼女を笑顔にさせているのだろうか。もしそれだけならば、オレはここまで彼女の笑顔に疑問を持たないだろう。何となく、彼女の笑顔の理由は違う別にある気がした。
「そうだな。まあ、天気がいいことを祈るよ。」
「こうたろうは私と一緒に行動するから、邪魔しないでよ。」
他にも言いたいことがあったような気がするが、隣にくそ女がいたために、何を言いたいのかすっかり忘れてしまい、そのままその日は別れることになった。くそ女も、別府えにしに大した反論をすることはなかった。せいぜい、オレに腕を絡ませてくるだけだった。
自然学習では、学校の授業とは違い、グループ活動がメインとなる。そのため、グループのメンバーの良しあしで、楽しいか楽しくないかが大きく左右される。今回のオレのグループは、はたから見たら、楽しいグループに見えたかもしれない。しかし、オレにとっては楽しくないメンバーだった。
自然学習は二泊三日の予定で実施された。行き先はバスで二時間ぐらいの場所で、そこには山も海もある。一日目は山登りをして、夜に肝試しがある。二日目は、海に出て、いかだづくりが行われる。内海で波も来ないために、いかだを作り、レースをすることになっていた。そして夜にはキャンプファイヤーで、主な日程は終了となる。
バスでの移動だったが、座席決めでは特に問題はおこらなかった。グループでの活動がメインだが、最初からグループ単位で動く必要がないと判断した担任は、男子と女子で別れて座ることを指定したためだ。男子も女子も特に異論はおこらなかったため、無事に目的地に着くことができた。
「では、これから山登りに行きたいと思いますが、グループではぐれないようにしっかりと先生とガイドの指示に従って歩いてください。」
山登りのガイドと先生の指示にしたがい、オレたちはグループに固まって整列する。次々に歩き出していく生徒たち。オレたちのグループは呼ばれる順番が遅く、一番最後を歩くことになった。後ろには先生とガイドがいて、遅いと追い立てられるため、オレは別府えにしと落ち着いてゆっくりと話すことはできなかった。
「いい天気だから景色がきれいに見えるね。」
「そうだね、私たちの学年は晴れ女が多いんだよ。きっと。」
別府えにしは、いつ親しくなったのか不明だが、同じグループのくそ女ではない女子と仲良く話しながら歩いている。別にうらやましくなったわけではないが、せっかく恋人同士で付き合っているのに、一緒に話もしないのはどうかと思った。
「もう、愛想をつかれたんじゃない。それとも、もう、別府さんはこうたろうのこと眼中にないんだよ。薄情な女だね。」
そう言って、オレのそばにぴったりとくっついているのは、もちろんくそ女である。
「パシャ。」
カメラのシャッター音がその場に響き渡る。そういえば、自然学習中は、カメラマンが同行していたなと思い出す。くそ女はそれに気づくと、嬉しそうにオレに身体を密着させて、ピースサインをカメラに向ける。再度、カメラマンはシャッターを切っていた。オレはくそ女を振り払うことはせず、そのままされるがままになっていた。
ここで別府えにしがくそ女とオレが密着しているところを見て、嫉妬して声をかけてくれれば良かったのだが、彼女は本当にオレのことが眼中にないのか、まったく見向きもしなかった。彼女の行動に気を取られ、オレはくそ女から離れることを忘れていた。
それがのちに面倒なことを引き起こすとは、今のオレには思いつきもしなかった。
くそ女も、別府えにしも、それ以外のオレのグループのメンバーも体力だけはあったので、誰も疲れたと文句を言うことなく山登りは順調だった。決められた場所まで登り、その後は下山した。
くそ女の言う通り、今日はいい天気で、雲一つない快晴。景色はとてもきれいだった。天気予報は見事に当たっていた。
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