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きっかけ~小学校編~
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「おはようございます。朝から大変なことになっていますね。いったい何があったのですか。」
担任がやっと教室に入ってきた。クラスメイトはやっと現実に戻ったようだ。口々に自分たちに起きた出来事を話し出す。上履きがなくなっていたこと、自分たちの作品が破かれて、ゴミ箱から紙吹雪のように舞っていたこと、ゴミ箱の中にクラスメイトの人数分の封筒が入っていて、その中に自分たちの秘密が書かれていたこと、最後にCDプレーヤーから謎の音声が流れだしたことを必死で担任に説明していた。
説明を聞いた担任はたいそう驚いた顔をしていた。その後に面倒くさいことをしてくれたとばかりに児童を見回してにらみつける。
「いったい誰がこんなことをやらかしたのですか。やったものは正直に手を挙げなさい。今なら、話を聞くだけで許してあげましょう。」
古今東西、正直に手を挙げる奴や、正直に犯人だと名乗り出るものなどいるわけがない。その例外にもれず、誰も自分が犯人だと名乗り出ることはなかった。当然、今回の事件の犯人は私なので、私以外が手を挙げる必要はないのだが。それでも、私は女にあらかじめ指示しておいたので、女がしぶしぶ手を挙げた。
「まさか、今回のことは麗さんがやったのですか。いくら何でもそれは……。」
「いえ、私ではありません。ええと、ええと……。」
しきりに目を泳がせている女であるが、決心したのだろう。一度目をつむり、深呼吸して一気に犯人の名前を告げた。
「中道望君です。彼が今回の事件の犯人です。でも、事件を起こした原因は私にあります。叱るなら私を先に叱ってください。」
「僕はやっていない。濡れ衣だ。」
女が犯人を告げると間髪入れずに男が反論する。まあ、犯人ではないので当然の反応だろう。それでも、犯人になってもらうのだが。
「どういうことですか。のぞむが犯人だというのですか。」
「そんなわけがない。」
「のぞむはそんな悪い奴じゃない。」
「れいったら、何を言っているの。そんなひどいことをのぞむがしないことはれいが一番よく知っているでしょう。」
一気に話し出したクラスメイトに女は苦笑する。そして、理由を説明し始めた。
説明を指示したのは私なので、話の内容はすでに知っている。退屈になってきた私はクラスの後ろのロッカーの上に座り、じっと先生と女とクラスメイトの様子を観察することにした。
「ええと、実はのぞむはクラスメイトの別府えにしさんのことが好きで告白したみたいなんです。それで、見事に振られたみたいで。私はそのことが信じられませんでした。のぞむは私のことが好きだったはずなのに、まさか私ではなくて、彼女に告白するとは思ってもみなかった。」
「告白なんてしていない。告白してきたのは別府さんだ。」
「私は告白されましたよ。驚いてふってしまいましたけど。それに私は転校してしまう。告白はうれしかったけど、付き合えないでしょう。」
ここで、私も会話に参加する。
「告白したことをのぞむは私に伝えてきた。ふられてすごい落ち込みようだったから、私はその時に提案した。そんなに落ち込むくらい好きなら、彼女の思い出に残るような盛大なお別れ会をしたらいいんじゃないかと。」
それがこんな結果になるなんて……。いかにも女が、自分が提案したせいで今回の事件が起きたと言わんばかりの演技をする。女の発言は、親の七光りもあって嘘でも真実に変わることがある。
今にも泣きだしそうな、すでに泣いているように手で両手を隠して泣きまねをしていた。当然、本当には泣いているはずがない。私が泣きながら説明しろと指示していたからだ。
「その話は本当なの。のぞむ。」
担任は本人に直接事実を確認することにしたようだ。もちろん、男は否定するに決まっている。
「僕はやっていません。朝学校に来て、上履きが盗まれることを知りました。それに……。」
「そんなことは今は忘れましょう。今日は私のお別れ会ですよね。せっかくみんなが準備してくれたと思うから、早く始めてくださいよ。私、実はとても楽しみにしていたんですよ。」
ここで、大きく息を吸う。そして、一気に叫ぶように伝える。
「だって、れいさんとのぞむくん中心で一生懸命準備してくれたんでしょう。朝のこれも私のお別れ会の余興だと思えば、とてもいい思い出だよ。ありがとう、こんな楽しい余興を準備してくれて。」
のぞむくんに向かって言い放つ。言われたのぞむくんは固まって動けないでいる。さて、こんなところでいいだろう。
「た、たしかにお別れ会はしなくちゃ。犯人捜しは後でもいいかも。」
「せっかく準備してきたからね。」
ちらほらと私に賛同する意見が出される。先生は犯人捜しをしたいようで、渋い顔で考え込んでいる。
「それはできません。こんなクラス全体に被害が出るような事件が起きているのですから、先に犯人を見つけることが先決です。」
担任は犯人捜しを優先することにしたらしい。
こうして、お別れ会当日は、犯人探しというつまらない話し合いで終わってしまった。私は面倒くさくなったので早退することにした。先生もよもや、転校する私が腹いせにクラス全体に嫌がらせのような事件を起こすとは思っていなかったのだろう。多少の疑いは持たれていたようだが、最終的には犯人ではないと思ってくれたようだ。具合が悪くなったと伝えるとあっさり早退を認めてくれた。
クラスが騒ぎ出して面白いものが見ることができた。男の驚く姿も確認できた。大満足の一日だった。
担任がやっと教室に入ってきた。クラスメイトはやっと現実に戻ったようだ。口々に自分たちに起きた出来事を話し出す。上履きがなくなっていたこと、自分たちの作品が破かれて、ゴミ箱から紙吹雪のように舞っていたこと、ゴミ箱の中にクラスメイトの人数分の封筒が入っていて、その中に自分たちの秘密が書かれていたこと、最後にCDプレーヤーから謎の音声が流れだしたことを必死で担任に説明していた。
説明を聞いた担任はたいそう驚いた顔をしていた。その後に面倒くさいことをしてくれたとばかりに児童を見回してにらみつける。
「いったい誰がこんなことをやらかしたのですか。やったものは正直に手を挙げなさい。今なら、話を聞くだけで許してあげましょう。」
古今東西、正直に手を挙げる奴や、正直に犯人だと名乗り出るものなどいるわけがない。その例外にもれず、誰も自分が犯人だと名乗り出ることはなかった。当然、今回の事件の犯人は私なので、私以外が手を挙げる必要はないのだが。それでも、私は女にあらかじめ指示しておいたので、女がしぶしぶ手を挙げた。
「まさか、今回のことは麗さんがやったのですか。いくら何でもそれは……。」
「いえ、私ではありません。ええと、ええと……。」
しきりに目を泳がせている女であるが、決心したのだろう。一度目をつむり、深呼吸して一気に犯人の名前を告げた。
「中道望君です。彼が今回の事件の犯人です。でも、事件を起こした原因は私にあります。叱るなら私を先に叱ってください。」
「僕はやっていない。濡れ衣だ。」
女が犯人を告げると間髪入れずに男が反論する。まあ、犯人ではないので当然の反応だろう。それでも、犯人になってもらうのだが。
「どういうことですか。のぞむが犯人だというのですか。」
「そんなわけがない。」
「のぞむはそんな悪い奴じゃない。」
「れいったら、何を言っているの。そんなひどいことをのぞむがしないことはれいが一番よく知っているでしょう。」
一気に話し出したクラスメイトに女は苦笑する。そして、理由を説明し始めた。
説明を指示したのは私なので、話の内容はすでに知っている。退屈になってきた私はクラスの後ろのロッカーの上に座り、じっと先生と女とクラスメイトの様子を観察することにした。
「ええと、実はのぞむはクラスメイトの別府えにしさんのことが好きで告白したみたいなんです。それで、見事に振られたみたいで。私はそのことが信じられませんでした。のぞむは私のことが好きだったはずなのに、まさか私ではなくて、彼女に告白するとは思ってもみなかった。」
「告白なんてしていない。告白してきたのは別府さんだ。」
「私は告白されましたよ。驚いてふってしまいましたけど。それに私は転校してしまう。告白はうれしかったけど、付き合えないでしょう。」
ここで、私も会話に参加する。
「告白したことをのぞむは私に伝えてきた。ふられてすごい落ち込みようだったから、私はその時に提案した。そんなに落ち込むくらい好きなら、彼女の思い出に残るような盛大なお別れ会をしたらいいんじゃないかと。」
それがこんな結果になるなんて……。いかにも女が、自分が提案したせいで今回の事件が起きたと言わんばかりの演技をする。女の発言は、親の七光りもあって嘘でも真実に変わることがある。
今にも泣きだしそうな、すでに泣いているように手で両手を隠して泣きまねをしていた。当然、本当には泣いているはずがない。私が泣きながら説明しろと指示していたからだ。
「その話は本当なの。のぞむ。」
担任は本人に直接事実を確認することにしたようだ。もちろん、男は否定するに決まっている。
「僕はやっていません。朝学校に来て、上履きが盗まれることを知りました。それに……。」
「そんなことは今は忘れましょう。今日は私のお別れ会ですよね。せっかくみんなが準備してくれたと思うから、早く始めてくださいよ。私、実はとても楽しみにしていたんですよ。」
ここで、大きく息を吸う。そして、一気に叫ぶように伝える。
「だって、れいさんとのぞむくん中心で一生懸命準備してくれたんでしょう。朝のこれも私のお別れ会の余興だと思えば、とてもいい思い出だよ。ありがとう、こんな楽しい余興を準備してくれて。」
のぞむくんに向かって言い放つ。言われたのぞむくんは固まって動けないでいる。さて、こんなところでいいだろう。
「た、たしかにお別れ会はしなくちゃ。犯人捜しは後でもいいかも。」
「せっかく準備してきたからね。」
ちらほらと私に賛同する意見が出される。先生は犯人捜しをしたいようで、渋い顔で考え込んでいる。
「それはできません。こんなクラス全体に被害が出るような事件が起きているのですから、先に犯人を見つけることが先決です。」
担任は犯人捜しを優先することにしたらしい。
こうして、お別れ会当日は、犯人探しというつまらない話し合いで終わってしまった。私は面倒くさくなったので早退することにした。先生もよもや、転校する私が腹いせにクラス全体に嫌がらせのような事件を起こすとは思っていなかったのだろう。多少の疑いは持たれていたようだが、最終的には犯人ではないと思ってくれたようだ。具合が悪くなったと伝えるとあっさり早退を認めてくれた。
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