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10お互いの秘密を知る①

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 夕食の豚肉の野菜炒めを二人で食べ終え、食器を片付けひと段落すると、考えなければならないことが山ほどあることに気付く。しかし、今一番に考えなければならないことは、翔琉君が私に依頼した内容だ。

 翔琉君から依頼された内容は意外なものだったが、あの男のことを考えるとそうでもないと思えてくる。しかし、あの男のことはわかるが、その相手も同じような人間だとは思いたくはなかった。いや、あの男と結婚した時点で同類かもしれない。

 彼が私に依頼した内容について、もっと詳しく聞いてみることにした。

「ええと、さっき私に相談された内容だけど、相談っていうか、私への依頼だけどね。その件についてもっと詳しく」

「詳しくと言われても、この件については、先生の方が詳しいかと思います」

「そんなこと言われても、そんな探偵じみたことをお願い事までされるほど、私たちの間に信頼関係とかあったかな。確かに私は翔琉君のことを事前に知っていて、翔琉君の方も、私が作家だと知っていてファンだから、当然作品のことも私自身のことも多少は知っている。でもさあ、それだけの話しでしょ。そこからどうして、君の両親の浮気調査をお願いされることになるのかな?」

 そう言うことなのだ。突然、目の前の男子高校生は、私に両親の浮気調査を依頼してきた。初対面の男子高生(顔は写真で知っていた)をいきなり自分の家に泊めてしまったが、それ以上の無理難題を私に押し付けてきた。

しかし、どうして彼の中で、私に依頼することになったのかのか興味がわいた。明日は土曜日で、今日は金曜日。多少の夜更かしも許されるというものだ。今日は二人きりで誰にも邪魔されることなく、とことん、話し合おうではないか。おそらく、彼と二人きりでゆっくり話す機会は、もう訪れることはないはずだ。


 私の予測だと、彼と次に出会うことになるのは、そう遠くない未来、柚子が彼を私の家に呼ぶときだろう。なんとなくだが、今回の翔琉君との出会いは、これからの私たちの将来を大きく変えそうな気がした。

「どうしても何も、先生が僕の両親の結婚のきっかけを作ったからに決まっています。先生の作品に両親は声優として、歌手として参加している。それによって、彼らは結婚に至った。お願いするのは不思議ではないでしょう?」

「よくわからない理論だよね。私の作品がきっかけで結婚したかもしれないけど、別に私の作品がなくても、結婚はしていたんじゃないの?それだけで私に依頼するのは間違っている。こういうのは、両親に直接聞くか、探偵を雇うか。いや、高校生に探偵は雇えないか……」

「どうしても、先生に調べて欲しいんだ。僕の直感が先生に頼んだ方がいいと言っている」

「直感って言われても、私以外にも頼める人はいると思うし、そもそも、なんで両親の浮気調査なんかしなくちゃいけないの?」

 話は平行線をたどっている。あくまで私に両親の浮気調査を依頼したい彼と、その理由を知りたい私で、話は一向に進む気配がない。

「ところで、先生の姪だけどさ、電車の中でも聞いたけど、柚子のことだよね?」

 そんな平行線の話は唐突に終わりをつげ、彼が新たな爆弾発言を私に投げかけた。
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