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断罪からの華麗なる論破①

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「その手紙、私も拝見してよろしいでしょうか?殿下」

純真無垢な少女に嫉妬し、陰でおとしめていた性悪で高慢ちきな女、というレッテルを貼られ、さっそく冷たい視線を向けられているファンテーヌだが、動じることなく言葉を発する。
僕はその要求を飲み、法務大臣に頷いた。
お辞儀を返した大臣が手紙を渡すと、ファンテーヌはサッと目を通し、静かな声で言った。

「確かにひどいわ……それに、私の字で書かれているように見えます」

「では、シャーリー嬢への侮辱を認めるのだな?」

「いいえ」

ピシャリと否定して、ファンテーヌは顔を上げる。

「私はこんな手紙、書いた覚えはございません」

「しかし、そなたの字であると言ったではないか」

「私の字に見える、と申し上げただけです。
この場にいらっしゃる貴い身分の方々のお耳に入れるのは忍びありませんが、ちまたには他人の文章を巧妙に真似て悪事に使う贋作師などが大勢います。
そのようなことを生業としている者を雇えばこんな手紙くらい、捏造するのは簡単なことです」

貴族達が不安げにざわつき始める。深窓の令嬢などは世間知らずだから初耳だろうが、ある程度年齢を重ねた貴族ならば思い当たることがあるようだ。

「確かに、そういった者がいるという話はよく聞きます」

「実は我が家も被害に遭ったことが……夫の字をそっくり真似した、偽の権利書が出回ったことがありますわ」

「ううむ。すると、あの手紙の真偽もわからなくなってきましたな」

まんまと貴族達に手紙への不信感を植え付けることに成功したファンテーヌは、すかさず次の手に打って出る。

「ところで、私もシャーリー様へ一つ、お訊ねしたいことがあります。
何故貴女あなたは、その手紙の字が私のものだと思ったのです?」

「え?それは……ファンテーヌ様からもらったお茶会の招待状と、同じ字だったから……」

「それは変です。私は淑女のたしなみとして、手紙や招待状、時候のご挨拶などの文書はすべて、我が家で雇っている専門の女官に代筆をさせております。
ただし国王陛下ならびに王太子殿下におきましてはその限りではなく、僭越ながら私の手によって書きしたためましたものを送らせていただいております。

ですから私の字体がどんなものであるか知っているのは、家族を除けば陛下とアンドリュー殿下だけ……
なのにこの手紙の分は、確かに私の字にそっくりで、あまつさえ貴女はそれを知っている……どうしてなのですか?」

彼女の言い分は至極もっとも。家族およびこれから家族になる予定の者以外に手書きの字を見せないのは、大貴族の令嬢の常識だ。
ファンテーヌに注がれていた不穏な視線が、いっせいにシャーリーに向けられる。

いいぞファンテーヌ、その調子。君のターンは今のところ完璧だ。何たってこのゲームはただの乙女ゲーではない。

昨今の悪役令嬢ブームに乗っかって、その勢いで作られた“追放された悪役令嬢が個性豊かなイケメン達に求婚・溺愛され、元婚約者と性悪ヒロインをザマァして返り咲く”という、おいおい今更それかよという内容。

つまり主役はシャーリーこっちじゃなくてファンテーヌあっち
という訳で僕は……悪役令嬢からヒロインに乗り換えて、ザマァされる王子でえっす!!!

ところでこのゲーム、タイトルが『悪役令嬢じゃいられない!!秘密のシャイニー・キングダム~断罪された私と7人の求婚者~』なんだけど、絶妙にダサくない?
販売前に死んじゃったからわからないけど、売れたのかなあ……売れなかったろうなあ……


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