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流石アンジェラだ。予想斜め上の行動をする。会場内は静まり返り、アンジェリカが両親へ視線を動かすと呆気にとられて言葉がない様子だった。
まあ、無理もないだろう。何しろ貴方がたの可愛い娘は今し方この国の王太子妃になったばかりだというのにも関わらず、それを本人自ら放棄して今度は隣国の王太子の妃にして欲しいと願い出たわけだ。
誰でも呆気に取られ言葉など出るはずがない。
「だ、そうだよリクハルド王子?」
リクハルドはただ立ち尽くし黙り込んでいる。
「アンジェラ嬢、先ずは僕ではなくリクハルド王子に許可を頂かないといけないよ。何しろ君は彼の最愛の妃であるのだから。話はそれからだね」
アンジェラはその言葉にピンときた様子でリクハルドを振り返った。
「リクハルド様、申し訳ございません。私リクハルド様ではなくディルク様の妻になります。そういう事ですのでお許し下さいね?」
軽いな…とアンジェリカは苦笑した。まるで例えるならお茶を淹れた後から「今日はやはりダージリンの気分では無かったので、アールグレイにします」と変更するくらいの軽いさに見える。
此処までくると最早腹を立てていた自分が莫迦らしくさえ思えてきた。
「では、ディルク様。これで私を妃にして頂けますよね!」
「はは、本当に面白いね。面白い子は嫌いじゃないよ」
ディルクの言葉にアンジェラは嬉しそうに笑う。
「でも生憎、頭の弱い人は僕の妃には相応しくない。故に君では無理かな」
「え…それは、どういう」
「あぁ、ごめんね。難しかったかな?簡単に言うと、僕は君みたいな莫迦な女が嫌いなんだって事だよ。理解出来たかな?」
笑顔でそう話すディルクは想像以上に腹黒いかも知れないとアンジェリカは感じた。胡散臭いとは思ってはいたが…想像を超えた…。
「ディルク、様…で、では私を妃に」
「当然するつもりはないよ」
「そんなっ‼︎話が違いますっ!私をディルク様の妃にして下さる約束しましたよね⁈」
いやしてないですよね。寧ろそんな約束いつしたのだろうか…不思議だ。妄想なのか惚けているのかは分からないが絶対にアンジェラの思考回路は崩壊していると、アンジェリカだけでなく会場の誰もが思った。
「そもそも約束なんてしていないし、僕の妃は彼女にすると決めたんだ。君など考える余地もない」
あー…こっちもか。勝手に話を進めている。アンジェリカはディルクの妃になると承諾した覚えはないのだが…。
「酷いです‼︎ディルク様‼︎私の気持ちを弄ぶなんてっ!…リクハルド様~」
ディルクがダメだと思った瞬間アンジェラは又リクハルドに擦り寄った。変わり身が早過ぎる。
「やっぱり私にはリクハルド様しかいません!今気付きました!リクハルド様へのこの想いこそが真実の愛だと…」
そう言いながらアンジェラはリクハルドの胸に飛び込んだ。此処まできたらある意味喜劇だ。やっている本人はいたって真面目だろうが。
「アンジェラ…そ、そうか。そうか、そうなのか⁈私を愛してくれているのか!」
「はい、勿論です!私にはリクハルド様しか目に入りません…」
余りの展開に今まで黙り込んでいた国王はため息を吐くと口を開いた。
「この2人を暫く牢にでも放り込んでおけ。リクハルド、頭を冷やせ‼︎」
その後国王は参列者達に陳謝し、呆気なく婚儀は終わった。皆呆れた様子と白い目で連れて行かれるリクハルドとアンジェラを見ていた。
「アンジェリカ嬢、あの2人は確かに問題はある。寧ろ問題しかない。だが、そなたのやり様を肯定は出来ない。いくら妹であるアンジェラが愚か者だとしてもこの国の行く末を担う王太子の婚儀を妨害した罪は重い。よって厳重な処分を下さなければならない」
アンジェリカは息を呑んだ。もしかしたら、首を落とされる可能がある。覚悟はしている。それならそれで仕方がない。甘んじて受ける。
「アンジェリカ・フェレールに国外追放の処分を言い渡す」
アンジェリカはその瞬間、様々なしがらみから解放された。
まあ、無理もないだろう。何しろ貴方がたの可愛い娘は今し方この国の王太子妃になったばかりだというのにも関わらず、それを本人自ら放棄して今度は隣国の王太子の妃にして欲しいと願い出たわけだ。
誰でも呆気に取られ言葉など出るはずがない。
「だ、そうだよリクハルド王子?」
リクハルドはただ立ち尽くし黙り込んでいる。
「アンジェラ嬢、先ずは僕ではなくリクハルド王子に許可を頂かないといけないよ。何しろ君は彼の最愛の妃であるのだから。話はそれからだね」
アンジェラはその言葉にピンときた様子でリクハルドを振り返った。
「リクハルド様、申し訳ございません。私リクハルド様ではなくディルク様の妻になります。そういう事ですのでお許し下さいね?」
軽いな…とアンジェリカは苦笑した。まるで例えるならお茶を淹れた後から「今日はやはりダージリンの気分では無かったので、アールグレイにします」と変更するくらいの軽いさに見える。
此処までくると最早腹を立てていた自分が莫迦らしくさえ思えてきた。
「では、ディルク様。これで私を妃にして頂けますよね!」
「はは、本当に面白いね。面白い子は嫌いじゃないよ」
ディルクの言葉にアンジェラは嬉しそうに笑う。
「でも生憎、頭の弱い人は僕の妃には相応しくない。故に君では無理かな」
「え…それは、どういう」
「あぁ、ごめんね。難しかったかな?簡単に言うと、僕は君みたいな莫迦な女が嫌いなんだって事だよ。理解出来たかな?」
笑顔でそう話すディルクは想像以上に腹黒いかも知れないとアンジェリカは感じた。胡散臭いとは思ってはいたが…想像を超えた…。
「ディルク、様…で、では私を妃に」
「当然するつもりはないよ」
「そんなっ‼︎話が違いますっ!私をディルク様の妃にして下さる約束しましたよね⁈」
いやしてないですよね。寧ろそんな約束いつしたのだろうか…不思議だ。妄想なのか惚けているのかは分からないが絶対にアンジェラの思考回路は崩壊していると、アンジェリカだけでなく会場の誰もが思った。
「そもそも約束なんてしていないし、僕の妃は彼女にすると決めたんだ。君など考える余地もない」
あー…こっちもか。勝手に話を進めている。アンジェリカはディルクの妃になると承諾した覚えはないのだが…。
「酷いです‼︎ディルク様‼︎私の気持ちを弄ぶなんてっ!…リクハルド様~」
ディルクがダメだと思った瞬間アンジェラは又リクハルドに擦り寄った。変わり身が早過ぎる。
「やっぱり私にはリクハルド様しかいません!今気付きました!リクハルド様へのこの想いこそが真実の愛だと…」
そう言いながらアンジェラはリクハルドの胸に飛び込んだ。此処まできたらある意味喜劇だ。やっている本人はいたって真面目だろうが。
「アンジェラ…そ、そうか。そうか、そうなのか⁈私を愛してくれているのか!」
「はい、勿論です!私にはリクハルド様しか目に入りません…」
余りの展開に今まで黙り込んでいた国王はため息を吐くと口を開いた。
「この2人を暫く牢にでも放り込んでおけ。リクハルド、頭を冷やせ‼︎」
その後国王は参列者達に陳謝し、呆気なく婚儀は終わった。皆呆れた様子と白い目で連れて行かれるリクハルドとアンジェラを見ていた。
「アンジェリカ嬢、あの2人は確かに問題はある。寧ろ問題しかない。だが、そなたのやり様を肯定は出来ない。いくら妹であるアンジェラが愚か者だとしてもこの国の行く末を担う王太子の婚儀を妨害した罪は重い。よって厳重な処分を下さなければならない」
アンジェリカは息を呑んだ。もしかしたら、首を落とされる可能がある。覚悟はしている。それならそれで仕方がない。甘んじて受ける。
「アンジェリカ・フェレールに国外追放の処分を言い渡す」
アンジェリカはその瞬間、様々なしがらみから解放された。
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