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アンジェラがリクハルドの背後で微かに微笑んだのがアンジェリカには分かった。
国外追放…少し予定外の事も起こったが、結果的には良かったのだろう。これで晴れて解放される。だがアンジェラに痛い目を見せようと思ったのに逆に返り討ちに合い、断念する他ないのが心残りではあるが…致し方ない。
「アンジェリカ・フェレールを連れて行け」
リクハルドがそう口を開いた時だった。アンジェリカを背に庇う様にしてディルクが前へ出た。
「ちょっと待ってくれる?リクハルド王子は彼女を追放するという事で間違いないよね?」
「…あ、あぁ」
ディルクから改めて念を押され、リクハルドは不審な表情を浮かべる。
「なら彼女は僕が妃に貰うよ」
ディルクから放たれた意外すぎるその言葉に、アンジェリカは一瞬何を言われたのか理解出来なかった。しかも何故「なら」なのか。意味が分からない。
暫しの間会場内が静まり返り沈黙が続いた。
「ディルク王子、どういうつもりだ…」
ディルクの言葉に暫し呆然としていたリクハルドだったがふと我に帰り、戸惑いながらも沈黙を破った。
「だって彼女のこと国外追放するんだよね?それなら彼女は僕が貰い受ける。別段驚く事ではないし、簡単な話だよ。それ以上でもそれ以下でもない。理解出来たかな?」
「い、今は冗談を言うような場面ではないっ」
リクハルドは馬鹿にされたと感じたらしく、ディルクを睨みつけた。
「冗談?僕がこんな冗談を言うと思われているなんて心外だな。僕は本気でアンジェリカ嬢を妃に迎えるつもりだよ」
今目前で繰り広げられているこれは一体…何が起きているのだろうか…。アンジェリカは呆然としてリクハルドとディルクのやり取りを見ていた。リクハルドの言う通り正に冗談としか思えない。
リクハルドは頭に血が上り真っ赤な顔をしながらディルクに怒りをぶつけていた、がディルクは一体何が楽しいのか笑みを浮かべていた。完全にリクハルドを嘲笑っているようにしかアンジェリカには見えない…。
「え、なに。どういう、事?…お待ちください、ディルク様!気は確かですか?お姉様を妃に迎えるなんて…そんな、こと」
リクハルドとディルクの間に割って入るアンジェラに、この状況で間に割り込むなど流石アンジェラだと思った。図々しいというか、度胸があるというか…。
「先程から僕はそう申しているが、何か不都合な事でもおありかな?アンジェラ嬢。いや王太子妃様、の方がよろしいかな?」
まるで揶揄う様なディルクの言葉にアンジェラは目を見開き、悔し気な表情を浮かべ震えた。
「そ、んな…どうして…だって、だって私の時は、軽く遇らわれたのに…それなのに」
「アンジェラ?どうしたんだ」
アンジェラの様子が明らかに可笑しい事に気がついたリクハルドは、振り返り手を差し出すが…その手は空を舞った。何故ならアンジェラはリクハルドの横をすり抜けディルクにしがみ付いたからだ。
「ディルク様‼︎どうしてですかっ⁈どうしてアンジェリカなんですか⁈どうして私じゃないんですか⁈あんな地味でなんの取り柄もなくて可愛げもない女性としての魅力なんて皆無のアンジェリカをどうして⁈」
流石に言い過ぎだ…とアンジェラの酷い物言いにアンジェリカは苦笑した。
「君は余程自分に自信があるんだね」
アンジェラの異様な言動に周囲は唖然としている。だが当の本人は頭に血が上り半狂乱になっており何も見えていない様子だった。
「そうだわ……そうよ。それが良いわ。簡単じゃない。…ディルク様、今からでも遅くありません!アンジェリカなどやめて私をディルク様の妃にして下さい‼︎」
国外追放…少し予定外の事も起こったが、結果的には良かったのだろう。これで晴れて解放される。だがアンジェラに痛い目を見せようと思ったのに逆に返り討ちに合い、断念する他ないのが心残りではあるが…致し方ない。
「アンジェリカ・フェレールを連れて行け」
リクハルドがそう口を開いた時だった。アンジェリカを背に庇う様にしてディルクが前へ出た。
「ちょっと待ってくれる?リクハルド王子は彼女を追放するという事で間違いないよね?」
「…あ、あぁ」
ディルクから改めて念を押され、リクハルドは不審な表情を浮かべる。
「なら彼女は僕が妃に貰うよ」
ディルクから放たれた意外すぎるその言葉に、アンジェリカは一瞬何を言われたのか理解出来なかった。しかも何故「なら」なのか。意味が分からない。
暫しの間会場内が静まり返り沈黙が続いた。
「ディルク王子、どういうつもりだ…」
ディルクの言葉に暫し呆然としていたリクハルドだったがふと我に帰り、戸惑いながらも沈黙を破った。
「だって彼女のこと国外追放するんだよね?それなら彼女は僕が貰い受ける。別段驚く事ではないし、簡単な話だよ。それ以上でもそれ以下でもない。理解出来たかな?」
「い、今は冗談を言うような場面ではないっ」
リクハルドは馬鹿にされたと感じたらしく、ディルクを睨みつけた。
「冗談?僕がこんな冗談を言うと思われているなんて心外だな。僕は本気でアンジェリカ嬢を妃に迎えるつもりだよ」
今目前で繰り広げられているこれは一体…何が起きているのだろうか…。アンジェリカは呆然としてリクハルドとディルクのやり取りを見ていた。リクハルドの言う通り正に冗談としか思えない。
リクハルドは頭に血が上り真っ赤な顔をしながらディルクに怒りをぶつけていた、がディルクは一体何が楽しいのか笑みを浮かべていた。完全にリクハルドを嘲笑っているようにしかアンジェリカには見えない…。
「え、なに。どういう、事?…お待ちください、ディルク様!気は確かですか?お姉様を妃に迎えるなんて…そんな、こと」
リクハルドとディルクの間に割って入るアンジェラに、この状況で間に割り込むなど流石アンジェラだと思った。図々しいというか、度胸があるというか…。
「先程から僕はそう申しているが、何か不都合な事でもおありかな?アンジェラ嬢。いや王太子妃様、の方がよろしいかな?」
まるで揶揄う様なディルクの言葉にアンジェラは目を見開き、悔し気な表情を浮かべ震えた。
「そ、んな…どうして…だって、だって私の時は、軽く遇らわれたのに…それなのに」
「アンジェラ?どうしたんだ」
アンジェラの様子が明らかに可笑しい事に気がついたリクハルドは、振り返り手を差し出すが…その手は空を舞った。何故ならアンジェラはリクハルドの横をすり抜けディルクにしがみ付いたからだ。
「ディルク様‼︎どうしてですかっ⁈どうしてアンジェリカなんですか⁈どうして私じゃないんですか⁈あんな地味でなんの取り柄もなくて可愛げもない女性としての魅力なんて皆無のアンジェリカをどうして⁈」
流石に言い過ぎだ…とアンジェラの酷い物言いにアンジェリカは苦笑した。
「君は余程自分に自信があるんだね」
アンジェラの異様な言動に周囲は唖然としている。だが当の本人は頭に血が上り半狂乱になっており何も見えていない様子だった。
「そうだわ……そうよ。それが良いわ。簡単じゃない。…ディルク様、今からでも遅くありません!アンジェリカなどやめて私をディルク様の妃にして下さい‼︎」
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