上 下
6 / 27

5

しおりを挟む
アンジェリカの言葉を受けアンジェラは唖然としていた。まさかあの姉がこんな事をするなんて。いつも自分の言いなりで口答えなど一切しなかった。それはこれから先も変わる事なんてないと思っていたのに。完全に誤算だ。

まあ、今はそんな事はどうでもいい。この状況をどうにかしなくてはならない。このままではこの婚姻自体が破談になってしまうかも知れない…。

アンジェリカの言葉に皆一様に不審な目でアンジェラに視線を向けていた。隣にいるリクハルドすら疑いの眼差しを向けてくる…。不味い。アンジェラは唇を噛んだ。最悪だ。

大体あの手紙もとい請求書って何⁈意味が分からない!

確かに読み上げられたドレスや装飾品類に、身に覚えはもの凄くある。だが普通それらの請求書を作成する⁈しかもこんな日に!…意外と双子の姉は陰湿な性格なのだとアンジェラは今更ながに理解した。

兎に角、この状況を打破する方法を考えなくてはならない。今頭に浮かんでいる方法は1つだけ。これしかない。


「酷いわ…お姉様。私そんな事身に覚えありませんっ!」

泣き落としでシラを切り通す、これしかない。

アンジェラは目に涙を浮かべながらかなり大袈裟に声をあげた。両手は祈るように前でキツく握りしめる。

「寧ろ今お姉様が話された事は全てお姉様が私になさっていた事ですっ」

そして罪をアンジェリカに逆に擦りつける。流石私だわ。完璧だ。アンジェラは内心ほくそ笑む。

会場内は一気にまた騒然とした。







アンジェリカは唇を噛む。流石アンジェラだ。泣き落としまでは予想の範囲内だが、まさか逆にアンジェリカに罪を被せてくるとは。打開策をアンジェリカは考えるが良い案が思い浮かばない…。嫌な汗が身体を伝う。

もし、アンジェラの様にアンジェリカが泣き落としをした所で勝ち目はないだろう。あの演技に敵うはずがない…。

「アンジェリカ嬢、アンジェラはこう申しているがどうなんだ。もしこの話が本当なら許し難いことだ」

リクハルドはアンジェラの泣き落としに引っかかった。リクハルドは単純だった。この国の行く末が心配になる程に…。

「王太子殿下、私は神に誓ってその様な事はしておりません。先程お話させて頂いた事が全てです」

「まだその様な嘘を申すつもりか⁈」

アンジェラの形勢逆転だ。完全にリクハルドはアンジェラの言葉を鵜呑みにしている。リクハルドの言葉に参列者達も皆アンジェリカが嘘を吐いたと騒ぎ出した。

「リクハルド様、怒らないで…」

泣き落としの次はアンジェラお得意の第2弾、優しいフリだ。

「きっとお姉様は私がリクハルド様と結婚して王太子妃になる事を妬んでおいでなんです。同じ双子なのにどうして私だけこんなに不甲斐なく可愛くなくて不幸なのか…と。可哀想なお姉様…」

アンジェラはそう言うとリクハルドの腕にしがみ付いた。男性は触れられると喜ぶと認識しているアンジェラお得意のアプローチ方法第3弾、スキンシップ。

アンジェリカはため息を吐く。自分は不幸だと一言も言っていないし、思ってもいない。いやアンジェラの姉に生まれてきた事だけは不幸といえるかも知れないが。そもそも可愛くないは関係ないだろう…。

「アンジェラ、君は本当に女神の様に心が深く清らかだ。君を選んだ私の目に狂いはなかった」

「リクハルド様…」

リクハルドはアンジェラを庇うように1歩前へと足を踏み出した。

「アンジェリカ嬢…いや、アンジェリカ・フェレール。我妻、王太子妃であるアンジェラを侮辱し罪を捏造した事は不敬罪にあたる!故にアンジェリカ・フェレールを国外追放する‼︎」










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今さら跡継ぎと持ち上げたって遅いです。完全に心を閉ざします

匿名希望ショタ
恋愛
 血筋&魔法至上主義の公爵家に生まれた魔法を使えない女の子は落ちこぼれとして小さい窓しかない薄暗く汚い地下室に閉じ込められていた。当然ネズミも出て食事でさえ最低限の量を一日一食しか貰えない。そして兄弟達や使用人達が私をストレスのはけ口にしにやってくる。  その環境で女の子の心は崩壊していた。心を完全に閉ざし無表情で短い返事だけするただの人形に成り果ててしまったのだった。  そんな時兄弟達や両親が立て続けに流行病で亡くなり跡継ぎとなった。その瞬間周りの態度が180度変わったのだ。  でも私は完全に心を閉ざします

夫と親友が、私に隠れて抱き合っていました ~2人の幸せのため、黙って身を引こうと思います~

小倉みち
恋愛
 元侯爵令嬢のティアナは、幼馴染のジェフリーの元へ嫁ぎ、穏やかな日々を過ごしていた。  激しい恋愛関係の末に結婚したというわけではなかったが、それでもお互いに思いやりを持っていた。  貴族にありがちで平凡な、だけど幸せな生活。  しかし、その幸せは約1年で終わりを告げることとなる。  ティアナとジェフリーがパーティに参加したある日のこと。  ジェフリーとはぐれてしまったティアナは、彼を探しに中庭へと向かう。  ――そこで見たものは。  ジェフリーと自分の親友が、暗闇の中で抱き合っていた姿だった。 「……もう、この気持ちを抑えきれないわ」 「ティアナに悪いから」 「だけど、あなただってそうでしょう? 私、ずっと忘れられなかった」  そんな会話を聞いてしまったティアナは、頭が真っ白になった。  ショックだった。  ずっと信じてきた夫と親友の不貞。  しかし怒りより先に湧いてきたのは、彼らに幸せになってほしいという気持ち。  私さえいなければ。  私さえ身を引けば、私の大好きな2人はきっと幸せになれるはず。  ティアナは2人のため、黙って実家に帰ることにしたのだ。  だがお腹の中には既に、小さな命がいて――。

【完結】王太子殿下に真実の愛だと見染められましたが、殿下に婚約者がいるのは周知の事実です

葉桜鹿乃
恋愛
「ユーリカ……、どうか、私の愛を受け止めて欲しい」 何を言ってるんだこの方は? という言葉を辛うじて飲み込んだユーリカ・クレメンス辺境伯令嬢は、頭がどうかしたとしか思えないディーノ・ウォルフォード王太子殿下をまじまじと見た。見つめた訳じゃない、ただ、見た。 何か否定する事を言えば不敬罪にあたるかもしれない。第一愛を囁かれるような関係では無いのだ。同じ生徒会の生徒会長と副会長、それ以外はクラスも違う。 そして何より……。 「殿下。殿下には婚約者がいらっしゃいますでしょう?」 こんな浮気な男に見染められたくもなければ、あと一年後には揃って社交界デビューする貴族社会で下手に女の敵を作りたくもない! 誰でもいいから助けて欲しい! そんな願いを聞き届けたのか、ふたりきりだった生徒会室の扉が開く。現れたのは……嫌味眼鏡で(こっそり)通称が通っている経理兼書記のバルティ・マッケンジー公爵子息で。 「おや、まぁ、……何やら面白いことになっていますね? 失礼致しました」 助けないんかい!! あー、どうしてこうなった! 嫌味眼鏡は今頃新聞部にこのネタを売りに行ったはずだ。 殿下、とりあえずは手をお離しください! ※小説家になろう様でも別名義で連載しています。

これでも全属性持ちのチートですが、兄弟からお前など不要だと言われたので冒険者になります。

りまり
恋愛
私の名前はエルムと言います。 伯爵家の長女なのですが……家はかなり落ちぶれています。 それを私が持ち直すのに頑張り、贅沢できるまでになったのに私はいらないから出て行けと言われたので出ていきます。 でも知りませんよ。 私がいるからこの贅沢ができるんですからね!!!!!!

「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。

window
恋愛
ソフィア伯爵令嬢は公爵位を継いだ恋人で幼馴染のジャックと結婚して公爵夫人になった。何一つ不自由のない環境で誰もが羨むような生活をして、二人の子供に恵まれて幸福の絶頂期でもあった。 「長男は僕に似てるけど、次男の顔は全く似てないから病院で検査したい」 ある日ジャックからそう言われてソフィアは、時間が止まったような気持ちで精神的な打撃を受けた。すぐに返す言葉が出てこなかった。この出来事がきっかけで仲睦まじい夫婦にひびが入り崩れ出していく。

殿下が真実の愛に目覚めたと一方的に婚約破棄を告げらて2年後、「なぜ謝りに来ない!?」と怒鳴られました

冬月光輝
恋愛
「なぜ2年もの間、僕のもとに謝りに来なかった!?」 傷心から立ち直り、新たな人生をスタートしようと立ち上がった私に彼はそう告げました。 2年前に一方的に好きな人が出来たと婚約破棄をしてきたのは殿下の方ではないですか。 それをやんわり伝えても彼は引きません。 婚約破棄しても、心が繋がっていたら婚約者同士のはずだとか、本当は愛していたとか、君に構って欲しかったから浮気したとか、今さら面倒なことを仰せになられても困ります。 私は既に新しい縁談を前向きに考えているのですから。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… 6月8日、HOTランキング1位にランクインしました。たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

処理中です...