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第2章

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あの日、森を彷徨い一晩野宿をして過ごした。その後リアスとオスクは無謀だと感じながらも城へと向かった。

城へと辿り着いたものの、まさか正門から堂々と乗り込む訳にも行かないので取り敢えず物陰から隠れて様子を伺う。無論正門には2人門番がおり壁も少し高めに設定されている為身動きが取れない。

「リアスさん…どうやって侵入するんですか…」

オスクは大分弱気になりながらリアスを見遣る。

「……登るしかないだろう」

「え…」

暫しの間がありリアスはそう言った。オスクは率直過ぎる言葉に制止する。白昼堂々と壁をよじ登り城内に侵入するなど直ぐに見つかって終いに決まっている。自殺行為も甚だしい。

「流石にそれは、その不味いんじゃ…」

昨夜、レーヴァンに捨てられたとリアスは嘆いていた。まさか自棄やけになってるんじゃ…オスクは焦った。まだ死にたくない。死ぬにしてもこんなしょうもない死に方は嫌だ…。

白昼堂々と壁をこそ泥よろしくよじ登り捕まり打首…余りに滑稽で情けない。せめて騎士の端くれらしく闘って15年の生涯を終えるくらいはしたい。

「仕方がないだろう…他に方法はない」

いやいや、もう少しちゃんと考えましょうよ!何故無駄に自信満々なのだろうか…オスクは心の中で突っ込みを入れた。直接言えない自分が情けない所だ。

「せめて暗くなるまで待つか…あ」

門の中へ入る馬車にオスクは目をつけた。どうやら食料などを積んでいる様だ。あれを上手く利用すれば…。オスクは思案してリアスに提案しようとしたが、いない。

「リアスさん⁈」

リアスは物陰を隠れて歩いて行ってしまう。オスクは急いで後を追った。暫く歩くとリアスは立ち止まり辺りを見渡すと…オスクはその時嫌な予感がした。

「えっ!あ、ちょっと‼︎リアスさん⁈」

見張りの兵士がいない事を確認するとリアスは徐に走り出し壁に…ペタっと張り付いた。

「リアスさん‼︎不味いですよ!一旦落ち着きましょう⁈」

オスクは慌ててリアスを壁から剥がそうとするが…剥がれない。オスクは必死だ。

「そこで、何をしてる」

その時背後から男の声が聞こえてオスクは身体をびくりと震わせる。ゆっくり振り返り…オスクは剣を抜いた。







リアスとオスクは男の背後を歩いている。

「それにしても驚いた。まさか白昼堂々と壁をよじ登る者がいるとはな。ある意味称賛出来る」

冗談めかして話す男をオスクは訝しげに見ていた。この男は何者なのか。声を掛けられた時兵士かと思ったが、どうやら違うらしい。格好からして傭兵の様に見えるが…漂う雰囲気が傭兵に感じられない。兎に角怪しい。

男に笑いながら「私について来なさい」と言われた。あの状況だった故、取り敢えず男に付いて行こうと考えたが…リアスを壁から剥がせない。任務を遂行しなければとかアルレット様を救ってレーヴァン様にとか色々と言いながら兎に角壁に引っ付く。

意外にも困り果てたオスクの代わりに、男がリアスを壁から引き剥がしてくれた。

オスクはリアスを横目で伺うも何やら独り言を呟いている。…かなり病んでる様子だ。…深いため息を吐いた。

「よし、君達は馬は乗れるか」

男は街外れまで来るとそう言った。小さな小屋の隣にある馬小屋。男の言葉にオスクは頷いた。

「生憎馬は2頭しかいない。君達には2人で乗って貰う」

オスクとリアスは男に言われるがままに従い馬に跨る。リアスは全く機能しない故オスクが手綱を握った。何処へ行くのか分からないが、あのまま壁を登り兵士に見つかり捕まるよりはマシな気がした。

オスクに人を見る目があるかと言われたら、否としか答えられないが…この男がどうしても悪い人間には見えなかった。本能的に付いて行った方が良いとも感じている。何故だかは分からないが。










「大丈夫?疲れちゃったかな」

青年はアルレットを抱きかかえる様にして自分の前に乗せていた。城から一晩中走り続けて、空が白み始めている。アルレットの体力は限界に近い様子だった。

「ごめんね、もう少しかかるんだ。僕に体重かけて少し眠るといいよ」

青年は一旦その場に止まると、うとうとしているアルレットを自分へ抱きつかせ落ちない様に紐で自分とアルレットを縛る。

「おやすみ」

優しく頭を撫でると青年は再び走り出す。仲間は速度を落とし青年を先で待っていた。

「お待たせ」

アルレットはゆっくりと眠りに落ちていく。この青年について来てしまって本当に良かったのだろうか。悪い人には思えないが…迷いはあった。だがあのまま1人であの場にいた所でサロモンやセブランに見つかり再び捕まるだけだ。ならば一か八かで青年に付いて行った方がマシな気がした。

おやすみ。

優しい手と優しい声。何故だがとても落ち着いた。こんな心地は初めてで…とても不思議な感覚だった…。


それから目的地に辿り着いたのはその日の昼前くらいだった。途中川辺で馬に水を飲ませたりして休息を取ったが、その間もアルレットは眠ったままでいた。その安心した寝顔に、青年からは笑みが溢れた。






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