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少し前を歩くオリフェオに、腕を掴まれた状態でフィオナは歩いていた。
図書室を出る際に少しもたついていたら、徐に手が伸びてきて掴まれたのだ。振り解く訳にもいかず、そのままにされている。

「あ、あの……⁉︎」

暫く歩いていると、急にオリフェオは立ち止まった。フィオナは間に合わず彼の背中に軽く追突する。

「勘違いするな。私は眠りを妨げられたからであって、決してお前を助けようとした訳ではないからな」

何も言ってないのにも関わらず、急に言い訳を始めた。フィオナに背を向けている為彼が今どんな表情をしているかは分からないが、明らかに照れているのは分かった。

「はい、殿下。ありがとうございます」

フィオナはオリフェオのそんな様子に、思わず笑いそうになる。意外と悪い方ではないかも知れない。

「お前は莫迦なのか?人の話を聞いていな……っ⁉︎」

「⁉︎」

オリフェオが言葉を言い終える前に何かが彼の頭に追突した。赤い小さな塊だった。
彼はその衝撃で地面に尻餅をつくが、フィオナの腕を掴んでいたのでフィオナもそのままオリフェオの上に倒れ込んだ。

ピ~~~……。

「キャッ……」

思わず小さな悲鳴を上げた。

「一体、何なんだっ」

彼に抱きとめられる形となり、慌てて立ち上がろうとするが、確りと抱き締められており身動きが取れない。

「何だ、あれは。鳥、か……?」

困惑した声を上げるオリフェオの視線の先を辿ると、確かにそこには赤い小鳥がいた。衝突した衝撃の所為か、目を回してのびていてピクピクと動いている。しかもよく見ると、身体に紐が巻かれていた。

ピ……。

「お待ちなさいっ‼︎」

暫し呆然としていたフィオナ達の元に、誰かが走って来た。

「全く油断も隙もありませんわ!一体何回逃げたら気が済みますの⁉︎今度こそ丸焼きにって、フィオナちゃんじゃありませんの!」

現れたのは、シャルロットとブレソールだった。怒り顔だったシャルロットの顔が、フィオナを見た瞬間、花が咲いた様に綻ぶが、直ぐに顔を顰めた。

「ちょっと、そこの下郎!私の可愛い可愛いぃ~フィオナちゃんに一体何をなさってるのかしらぁ」

下郎は流石に言い過ぎでは……と苦笑する。しかもこれでも曲がりなりにも王子なのだが……下郎……。

「無礼だぞ。下郎とは口の悪い女だ」

貴方には言われたくないと、思います……。

「で、お前は誰だ」

いい加減離して欲しいのに、逆にオリフェオはそう言いながら更に腕にぎゅっと力を込める。少し、息苦しい……。

「誰って……あら、貴方はいつかのダンスパーティーの不届き者じゃないですの!」
 
「ダンスパーティー……、そうかお前、あの時の無礼者か」

絶対揉め事を起こしそうな二人の再会に、無意識に顔が引き攣るのを感じた。
シャルロットの後ろではブレソールが小鳥を回収しているのが見える。両手で包む様に大切に扱っている。あの赤い小鳥は、彼の鳥の様だ。

「本当に懲りませんわね!またしてもフィオナちゃんに近付こうとは、赦せませんわ‼︎覚悟は宜しくって?」



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