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時間だけが過ぎていく。城に来てから、ひと月も経ってしまった。クラウスも回復し、もう通常の状態に戻っている。ただ、屋敷には帰れない故これからどうするか考えている様子に見えた。

自分などの所為でクラウスの一生を台無しにしてしまった……ロゼッタはこのひと月、気を病みずっと借りている部屋に篭っていた。ベッドに蹲り、起き上がる気力がない。

どうすればいいか、正直分からない。ただ一つ言える事は、あの人に会って話さないといけないという事。

フェルナンドが分からない。

今はこんな風になってしまったが、昔は仲が良かった。多分世間一般的なの従兄妹同士よりも、遥かに。それなのに何故こんな風になってしまったのだろう。

優しくて、面倒見もいい、頭も良く、格好良くて……大好きだった。

いつも一緒だった。幼い自分の手を握り、彼は優しく笑って頭を撫でてくれた。だがいつの頃だったか……彼はまるで屋敷に来る事がなくなってしまった。

フェルナンドの両親は相変わらず訪ねてくるのに、彼だけがいない。彼が来ないなら自分が会いに行けばいい。幼い自分は単純にそう思い両親に連れられ彼の屋敷に行くも、彼と会える事はなかった。それでも諦められなくて、両親と一緒でなくとも、頻繁に屋敷に赴いた。だが、やはり彼はいなかった。

寂しくて、悲しくて、会いたくて、苦しくて……今思えば恋焦がれた年頃の娘の様だと苦笑せざるを得ない。


それから数年フェルナンドとは会う事なく日々を過ごした。始めは暫く虚無感のようなものに襲われていたが、月日が経つ毎にそれも薄れていく。

ただ、たまにふとした瞬間に彼を思い出す……。

何故急に屋敷に来なくなったのか、会いに行っても会ってくれなくなったのか……もしかして、嫌われてしまったのだろうか。そう考えた時、胸の奥が痛んだ。



やがてロゼッタは十二歳になり、学院に入った。確かフェルナンドは屋敷を出で騎士団の宿舎に入ったと聞いたが、学院にも在籍している筈だ。少しだけ胸が高鳴るのを感じた。

もしかしたら、会えるかも知れない。

だがそんな期待は違う形で崩れてしまった。彼は変わってしまったのだろうか。久々に見かけたフェルナンドの隣には常に複数の女性達の姿があった。友人と称するより、侍らせていると言った方がしっくりくる。


「やあ、ロゼッタ。久しぶりだね。入学おめでとう」

数年ぶりに話しかけられた時、感じたのは嬉しさではなく不快感。

気持ち悪い……。

そう思ってしまった。沢山の女性に囲まれた彼が、穢く思えた。あんなに大好きだったのに、分からなくなった。





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