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3.彼らの関係

☆その24、恋人とはセックスしよう②

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「ねえ、エンボちゃん、待って」


ようやく目が開いて、視線が合う。
痛いくせに、つらいくせに……なんでちょっと嬉しそうなんだよ。訳わかんねえ。


「あいつとも、いつもこうしてたの」
「なに、が?」
「ナマで。……してた?」


聞いてどうする。
でも、聞かずにはいられなかった。そして。


「ううん、一回もしてない。だって、万が一、子どもでもでき、たら……」


……ああ、どうして、

どうして、本当のことなんだと分かってしまうんだろう。どんなに疑って、どんなに警戒しても、エンボちゃんはそれをすぐ飛び越えてしまう。嘘がつけない、あるいは、嘘をつくという発想が希薄。損なほど馬鹿正直。


そういうところが、最初から……


「ほんとにしてないの? 一回も?」


離れようとするエンボちゃんを逃さないために、起き上がって、繋がったまま耳元で囁く。

彼女は俺だけだと言った。

その言葉の持つ意味を、破壊力を、彼女はきっと分かってない。考えてもいない。

気が狂いそうだった。抱きしめたまま、彼女の秘部に指をそわせて、クリトリスを強く一押しする。早くイけ。早く。


「う、あ、あぁっ!」
「痛かったでしょ、あんな挿れ方して。痛くなくなるまでこうしててあげるから、いっぱいイッていいよ」
「やだ、どうして、抜かなきゃ……ッ!」


まだそんなことを。
ふざけてんのか。


「いま抜いたらまた痛くなるから、駄目」


彼女の身体は言葉と真逆だ。撫でるたびにきゅうきゅう締め付けて、ひくひく震えてを誘ってくる。

悪魔みたいな、かわいい子。


「このまま、俺咥えたまま、イッて」
「いや、だめ、まって……!」
「意地悪してごめん」


俺だけの……ものには、なってくれない。
かわいい、かわいい、俺の彼女。


「大好きだよ」
「ンん、ん……ーーッ!」
「ッあぁ……」


小さな身体でしがみつきながらイッた。強烈な刺激に、俺もつい射精そうになる。ゴムはしてない。先走りは多分もう出てる。


背筋がぞくっと震えた。

唇の端が、ひとりでに上がってしまう。


「気持ちいい?」
「うん……ごめんなさい……」
「なんで謝るの?」
「だって……」
「ん……?」
「全然、秋人さんをきもちよく、させられなかったのに」


自分の顔を見られないように、彼女の顔中にキスを繰り返しながら話した。多分、俺は今ひどい顔をしている。彼女が見たら、逃げかねないような顔を。見られるわけにはいかない。


「なに言ってんの、エンボちゃん。全部気持ちよかったよ。エンボちゃんのキスもフェラもパイズリも、してくれたこと全部」
「でも、わたし、下手だから」
「うん、慣れてはいないと思ったけど。でも頑張ってくれてるのが分かったし、正直、危なかった」
「危ない?」
「イくかと思ったってこと。エンボちゃん、飲まされるの嫌でしょ?」
「秋人さんのなら、別にいいよ……」
「……じゃあ、今度は飲んで。でも」
「ひゃッ」
「今はこっち」
「っ、あ、やだぁ……っ」


やだとか言いながら、ナカの緊張はほどけて、ゆるやかに奥をこするとエンボちゃんはすぐ甘い声を出した。多分あいつは聞けなかったであろう、濡れた声。

もっともっと欲しい。
何もかも、全部。


「どう? もう痛くない?」
「う、うん。でも」
「ねえ、エンボちゃん」


どうすればいいのかは、分かっていた。


「俺も、名前で呼びたい」


あの男への感情も、未練も。
全部利用して使い果たしてやる。
重ねられるもんなら重ねてみろ。もう遅い。


「エンボちゃんが名前で呼ばれるの、あんまり好きじゃないって知ってるけど、でも」


孕んでしまえ。


「呼んでください……私も、秋人さんに呼ばれたい……」
「ん……ありがと」
「っ、あ、あぁ……!」
「映子ちゃん……かわいいね、映子……」


彼女の名前を呼びながらセックスする。
頭つかんで、髪をぐしゃぐしゃにして、耳元で名前を呼び続ける。すると彼女はどんどん反応を悦くして、甘くてせつない声でよろこび続けた。もっと、もっと、と乞われるままに名前を呼ぶ。


「映子」


繋がったところがびちゃびちゃになって。
彼女の目がぼんやりと霞みはじめて。

ふとした拍子に言われた。


「……すき……」
「すき、あッ……あきひとさんが、秋人さんだけが、すき、ぃ……!」


本当、
たちが悪い。

いまさら、初めて言うなんて。


「俺も好きだよ」


きっとそれは、違う種類だ。
それでもいい。言質はとった。不可侵をための切符は、手に入れた。

逃げられないように、腰を、つかんで。


「大好きだよ、映子」


一番奥へ。



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