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 アキちゃんが車から降り、私も降りる。
 足元がふらついたが、すぐにアキちゃんが支えてくれた。

 白い息を吐き、辺りを見渡す。火照った身体に寒気が気持ちいい。
 私は背筋を伸ばして大きく息を吸った。肺に凛とした空気が取り込まれて、ここは住んでいるところよりも寒い世界なのだ、と認識する。残念ながら雪は降り止んでいた。

 アキちゃんは「寒い。」と呟いて歩き出す。私はその背中を追った。どうやらバイブを挿れていないと優しくはしてくれないらしい。


 アキちゃんと草津の街を堪能する。
 湯畑へ向かうメインストリートではもくもくと煙が上がっている。煙は排水溝から上がっているようだ。
 流れているのも暖かいお湯らしい。流石だ。

 冬の草津は初めてだ。前回も来たことがある、温泉卵のお店を見つけたのでアキちゃんの服を引っ張って入っていく。
 アキちゃんは「あんなにいじめたのに元気だなぁ」と言うが、私は気にしない。

 程なくしてカップに入った温泉卵が渡される。もらったスプーンでつんつん、と突くとプルンと震えて、とても美味しそうだ。
 「なんかエロい……」と呟くと、アキちゃんから「なんでだよ」とツッコミが入る。
 理由は分からないけど、昔から温泉卵にエロスを感じてしまう。性癖なのかもしれない。

 アキちゃんはつるり、と一口で温泉卵を飲み込んでしまった。
 「もったいないよー」と言うが、「卵なんて一口だろ。」と気にも止めない。
 私はちびちびと大事に食べる。
 これがアキちゃんとの思い出の味……と、心に刻み込む。

 ごくり、と残っただしを飲み込んで、立ち上がる。
 「次行こ、次。」と言うと、アキちゃんは渋々といった感じで立ち上がる。
 「もうちょっと温まっていたかった。」なんて、言ってることがじじくさい。

 また湯畑への道を歩いていく。
 「夕飯食べれなくなるよー」とアキちゃんからの静止の言葉を振り切って、温泉まんじゅうもいただく。
 中にあんこがぎっしりと詰まっていてとても美味しい。
 サービスでお茶までいただき、満足だ。


 途中何度かお店――主に食べ物を扱っているところに吸い込まれたが、メインストリートを歩いていくと、急に開けて、湯畑が現れた。
 何度見ても感動するな、と思う。
 アキちゃんは「俺、初めてだ。」と言い、ふらふらと湯畑の方へ近付いていった。

 私は慌ててその後を追う。

 「写真撮ろ!写真!」と言い、アキちゃんと湯畑を連写する。
 もちろん自撮りでアキちゃんとも撮る。
 この写真は大事にしよう。と思っていたところで、
 「今撮った分だけ今夜お前の恥ずかしい写真撮ってやる」と言われて身がすくむ。何枚撮ったのだろうか。

 「ちょっとくらいいいじゃない、観光地だし。」と言えば、
 「俺が撮るのだっていいだろ、観光地だ。」と言われ、
 「それとこれとは話が別じゃない!」と言ったけれど、
 「一緒の話だ。もう決めた。」と、断固として譲らない。
 
 どうやらアキちゃんは写真を撮られるのが嫌らしい、と学んだ。
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