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第四話
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客室の一つに入ると、布団の上で女性が座っている。一番最初に見た時と比べて、大分健康的な状態みたいだ。
「あの、貴方は。」
「初めまして、私は恵風。こっちは早瀬。」
「あ、初めまして。環ちゃんからは話を聞いています。私は紫蘭と申します。」
早瀬が先に紫蘭の前へ歩いて行って腰を下ろすと、私も続いて歩いて行き、紫蘭の前に座った。
(そう言えば、貴方は私と会うのは初めてね。)
「そうですね、でも濤さんからは話を聞いてました。」
濤、と言う名前が出てくると、早瀬は少し視線を逸らした。
「えっと、それで今日は如何言ったご用件でしょうか。」
紫蘭は首を傾げながらそう言った。うん、何だろう。本当に炎陽ちゃんの母親なのかな。凄くお淑やかと言うか。うん、似てない。
(用、と言う程の物は無いわ。私は唯恵風に連れて来られただけだもの。)
「あ、そうなんですか?でしたら恵風さんは如何して此処に?」
「大した用は無いんだ。よくある世間話をしたいだけなんだ。それに、炎陽ちゃんの話もしたいし。」
紫蘭は炎陽ちゃんの名前を聞くと、嬉しそうに笑った。
会話の内容は大した事じゃない。彼女が少し文字の読み書きが出来る様になったとか、少し人間の言葉を喋れるようになったとか、基本的に彼女の成長の様子を話すだけ。早瀬が言う内容は殆ど森の中での彼女の事。如何やらどれも紫蘭には驚きしかない物だった様だ。と言うか、うん、流石に滝から飛び降りたって言うのは私も驚いた。
「あの、一つ気になった事があるので、聞いても良いでしょうか。」
紫蘭はそう言って話の流れを変えて来た。
(構わないわよ。)
「えっと、炎陽はその、森の長の『最後の仕事』を知っていて貴方と一緒に居るんですか?」
そう問われて早瀬は黙った。
私がその仕事の事を知ったのは、何だかんだと少し前の事だった。大陸に戻るよりも前に、色葉ちゃんから聞いたんだ。
(…………あの子は何も知らないわ。)
「え、あの、だとしたら、もしもそんな事が起きた時……………」
(あくまでもしもの話でしょう。何事もその時はその時なのだから。それに、あの子に言ったら、あの子はきっと私の代わりに森の長になると言ってくるでしょう。私はあの子に変な重荷は背負ってほしくないの。)
真剣に早瀬がそう言うと、紫蘭は黙った。早瀬の覚悟は本物だ。それは紫蘭にも伝わった事だろう。
「……………済みません。」
(如何して謝るの。)
「如何して、と言われると、私にもよく分かりません。唯、謝りたいと思ったので。」
(そう、変わっているわね。)
廊下の外から足音が聞こえてくると、早瀬は立ち上がった。
(私はそろそろ帰るわ。それじゃあね。)
早瀬は一人である生き始めると、襖が開いて炎陽ちゃんが顔を覗かせた。その顔は、随分と満足そうな顔をしていた。と言う事は、今日の勉強は中々に手応えのある物だった、と言う事かな。
「かーさん、けーふー。」
「恵風ね。」
「かえる?」
(そうね、もう帰りましょう。)
早瀬が炎陽ちゃんの腕に頬擦りすると、炎陽ちゃんは前屈みになって、早瀬の頬を撫でた。
炎陽ちゃんは紫蘭に手を振ると、紫蘭も炎陽ちゃんに手を振り返して二人は先に外へ出た。私も立ち上がって紫蘭にお辞儀をすると、同じく紫蘭も返してくれた。
今日は特に何も問題は無く、一日を過ごした。
「あの、貴方は。」
「初めまして、私は恵風。こっちは早瀬。」
「あ、初めまして。環ちゃんからは話を聞いています。私は紫蘭と申します。」
早瀬が先に紫蘭の前へ歩いて行って腰を下ろすと、私も続いて歩いて行き、紫蘭の前に座った。
(そう言えば、貴方は私と会うのは初めてね。)
「そうですね、でも濤さんからは話を聞いてました。」
濤、と言う名前が出てくると、早瀬は少し視線を逸らした。
「えっと、それで今日は如何言ったご用件でしょうか。」
紫蘭は首を傾げながらそう言った。うん、何だろう。本当に炎陽ちゃんの母親なのかな。凄くお淑やかと言うか。うん、似てない。
(用、と言う程の物は無いわ。私は唯恵風に連れて来られただけだもの。)
「あ、そうなんですか?でしたら恵風さんは如何して此処に?」
「大した用は無いんだ。よくある世間話をしたいだけなんだ。それに、炎陽ちゃんの話もしたいし。」
紫蘭は炎陽ちゃんの名前を聞くと、嬉しそうに笑った。
会話の内容は大した事じゃない。彼女が少し文字の読み書きが出来る様になったとか、少し人間の言葉を喋れるようになったとか、基本的に彼女の成長の様子を話すだけ。早瀬が言う内容は殆ど森の中での彼女の事。如何やらどれも紫蘭には驚きしかない物だった様だ。と言うか、うん、流石に滝から飛び降りたって言うのは私も驚いた。
「あの、一つ気になった事があるので、聞いても良いでしょうか。」
紫蘭はそう言って話の流れを変えて来た。
(構わないわよ。)
「えっと、炎陽はその、森の長の『最後の仕事』を知っていて貴方と一緒に居るんですか?」
そう問われて早瀬は黙った。
私がその仕事の事を知ったのは、何だかんだと少し前の事だった。大陸に戻るよりも前に、色葉ちゃんから聞いたんだ。
(…………あの子は何も知らないわ。)
「え、あの、だとしたら、もしもそんな事が起きた時……………」
(あくまでもしもの話でしょう。何事もその時はその時なのだから。それに、あの子に言ったら、あの子はきっと私の代わりに森の長になると言ってくるでしょう。私はあの子に変な重荷は背負ってほしくないの。)
真剣に早瀬がそう言うと、紫蘭は黙った。早瀬の覚悟は本物だ。それは紫蘭にも伝わった事だろう。
「……………済みません。」
(如何して謝るの。)
「如何して、と言われると、私にもよく分かりません。唯、謝りたいと思ったので。」
(そう、変わっているわね。)
廊下の外から足音が聞こえてくると、早瀬は立ち上がった。
(私はそろそろ帰るわ。それじゃあね。)
早瀬は一人である生き始めると、襖が開いて炎陽ちゃんが顔を覗かせた。その顔は、随分と満足そうな顔をしていた。と言う事は、今日の勉強は中々に手応えのある物だった、と言う事かな。
「かーさん、けーふー。」
「恵風ね。」
「かえる?」
(そうね、もう帰りましょう。)
早瀬が炎陽ちゃんの腕に頬擦りすると、炎陽ちゃんは前屈みになって、早瀬の頬を撫でた。
炎陽ちゃんは紫蘭に手を振ると、紫蘭も炎陽ちゃんに手を振り返して二人は先に外へ出た。私も立ち上がって紫蘭にお辞儀をすると、同じく紫蘭も返してくれた。
今日は特に何も問題は無く、一日を過ごした。
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