命が進むは早瀬の如く

琴里 美海

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第壱拾壱話

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 環に案内されて付いた場所は、あの時亥助が出て来た隠し通路の奥の部屋だった。
 部屋の中にはいろんな武器が沢山あって、その中から環は一本の槍を手に取って、両手で持ってあたいに差し出してきた。

「これは歴代の『森の主』の方々が使っていた槍でございます。紫蘭殿も使っていたのですが、長い事村から離れていた為にこの部屋に保管しておりました。」
「これ、あたいがもらっていいのか?」
「勿論、寧ろ『森の主』以外に使用して良い者はおりません。」

 そう言われてあたいは槍を掴んだ。その瞬間、誰かの感情が一気にあたいの中に流れ込んできた。決して不快とか、そんな事は無く、唯言葉で言い表せない程の懐かしさで、そのせいで悲しくなった。

「炎陽殿?如何かなさいましたか?」

 環に声を掛けられて我に返った。何だかんだ結構長い時間あの感覚に浸っていたせいで、環に心配されていた。

「あ、いや、だいじょうぶだ。」
「そうですか、それなら安心致しました。」

 安心した様子の環を見てから、あたいは手に持っている槍を見た。切っ先に指の腹を押し付けるけど、痛いだけで傷は付かない。これ、もしかして恵風が話してた朱夏って奴が使ってた槍か。

「それでは向こうの村へ向かい、紫蘭殿の救出と、恵風殿の捜索を行いましょう!!!」

 環が拳を握ると、あたいは槍を掲げた。
 二人で隠し通路から出て、一度亥助と母さんが居る部屋に戻った。

(炎陽戻ったのね。)
(うん、あのさ母さん。)
(言わなくても大体分かるわ。私も行く。)
(母さん。)

 母さんはあたいの前まで歩いて来た。

(貴方達だけに危険な事をさせる訳が無いでしょう。)
(…………うん、ありがとう母さん。)

 あたいは環を見ると、環は環で、亥助と話をしていた。
 話が終わったのか、環が亥助に頭を下げると、亥助は環の頭を撫でていた。それから環はあたいの方に歩いて来た。

「それでは参りましょうか。」
「おう。」

 家を飛び出し、森の中に駆けて行った。
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