朱夏の日光に栄える森

琴里 美海

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第参拾弐話

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 人間の気配が沢山する。その上動物達の悲鳴がそこかしこで聞こえてくる。如何やら嫌な予感は当たった様だ。

「朱夏は…………」

 朱夏は感情が伝わるから、森の感情だって伝わっているだろう。あの子は森で何かがあるとすぐに駆け付ける。本当に森を大切に思っているから、今だってきっとこちら側に来ているだろう。
 私はすぐに朱夏を探した。

「朱夏!!朱夏何処に居るの!!?」

 朱夏の名前を呼びながら走っていると、足音が聞こえて私は足を止めた。気配は朱夏の物じゃない。
 木の後ろから人間の男性が出てくると、私を見付けて睨み付けてきた。何時ぞやの男性とは別人だ。

「何者だお前。」
「それはこっちが聞きたいね。」

 目の前の人間の服には血が付いている。多分森の動物達の物だろう。

「お前、髪の色が可笑しいな。」

 あぁ全く、面倒な人間に見付かったかもしれない。
 目の前に居る男性は首に掛けている笛を吹くと、山中に笛の音が響き渡った。するとあちこちから足音が聞こえてきた。
 少しの時間であらゆる方向に人間が立っている。さて、面倒な事になってしまった。別に強風を起こして吹き飛ばしても良いんだけど、山の中でそんな事したら転落死する人間が出て来かねない。

「その髪色、明らかに人間じゃないな。」

 まぁ確かに人間ではないんだけども。

「最近山に出る化け物か。」
「ちょっと、それは聞き捨てならないかな。」

 きっと朱夏の事だろう。だけど朱夏は化け物なんかじゃない。あの子は他人の気持ちがよく分かるだけの少し違うだけの、普通の人間なんだ。普段全くと言って良い程怒らない私だって、怒る時は怒るんだよ。

 その時、また別の場所で笛の音が聞こえてきた。
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