9 / 45
第九話
しおりを挟む
瑞光は至る所で人々の願いを叶えていった。その結果、都の方に社まで立てられる程になった。こうなってくると本当に色々な所から願いが届くようになってくる。そして色々な所で人を殺すようになる。
私はと言うと、色葉ちゃんの所でお世話になる事にした。元々宿も社も何も無い状態でこの国に放り込まれたようなものだから、色葉ちゃんから此処で暮らすか聞かれた時は、心から彼女に感謝した。
「そう言えば恵風って此処に来てからどのくらい経ってる?」
ある日唐突にそんな質問をされた。
「うーん、どのくらいだっけ。」
正直森の中から殆ど出ないし、瑞光からも何の音沙汰も無いから、完全に時間の感覚が狂っていた。だってこの森の中、季節の概念が無いから、本当に分からなくなるんだよ。
「あ、じゃあちょっと外に出てみるね。」
私は一人外へ出た。なんて、そんな事してもどのくらい時間が経ったかは分からないんだけどね。
外の今の季節は春だった。春は良いね、温かくなり、雪が溶け、植物も目を開き、生き物達は冬眠から目を覚ます。私は春は好きだよ。まぁ、他の季節は他の季節で良い所があるから、何だかんだ全ての季節が好きかな。
そんな事を考えて空を見上げると、遠くの方から瑞光が飛んで来ているのが見えた。
「え。」
瑞光一人なら人間の願いを叶える為に来たのかと思ったけど、瑞光は背にあの子と同じくらいの背丈の子供を負ぶって来た。
訳が分からず完全に硬直していると、瑞光は私を見付けてすぐに私の前に降りて来た。
「瑞光、えっと、色々と聞きたい事があるけど、その子何?」
「いや俺様が聞きてぇよ。」
如何やら瑞光も何も分かっていないらしい。
私は瑞光に背負われている子供を見た。随分と珍しいと言うか、私ですら初めて見る髪色で、上の方は赤色で、下に行くにつれ、段々と橙色へと変わっていく。とても綺麗な髪をした男の子だった。そんな子が、瑞光の背で眠っている。
「この子如何したの?拾った?」
「いや、何か今朝起きたら社に居た。んで寝てた。別に外に放り出しても良かったんだけど、何かそんな気にならなかったから、恵風さんに如何したら良いか聞きに来た。」
「あ、そうなんだ。」
まぁ兎に角、髪色からして普通じゃないのはよく分かる。
私はその子の頭に触れた。温かい。まるで日の光の様な温かさだ。だけど、その精神の奥には、まるで瑞光と同じようなくらい物を感じる。
「この子は、人間の世界の言葉で言うなら、君の弟にあたる子だね。」
「弟ぉ?ってか神に弟も何もいるのかよ。」
「一応はね、この国の神なんか殆ど兄弟姉妹みたいなものだから。でもこの子の場合、君と同じ願いから生まれたと言う感じかな。」
と言う事はつまり、この子も殺しの願いから生まれたと言う事になる。
だけど不思議な物だなぁ。同じ願いでも兄と弟でこんなに見た目や妖気の性質が違うのか。
私はその子の頭を撫でると、その子は小さく声を出して目を開いた。まだ自我も意識もはっきりしていない。如何やら今朝生まれたばかりの様だ。
「名前は考えているの?」
「何で俺様が他人の名前考えられると思うんだよ。大体俺様の名前だってテメェが付けたもんじゃねぇか。」
うん、そうだろうけど、そうだけど、そんな喧嘩腰で言わなくても。でもあれだなぁ、この子はとても温かい。だからこう名付けよう。
「暁光。」
私はと言うと、色葉ちゃんの所でお世話になる事にした。元々宿も社も何も無い状態でこの国に放り込まれたようなものだから、色葉ちゃんから此処で暮らすか聞かれた時は、心から彼女に感謝した。
「そう言えば恵風って此処に来てからどのくらい経ってる?」
ある日唐突にそんな質問をされた。
「うーん、どのくらいだっけ。」
正直森の中から殆ど出ないし、瑞光からも何の音沙汰も無いから、完全に時間の感覚が狂っていた。だってこの森の中、季節の概念が無いから、本当に分からなくなるんだよ。
「あ、じゃあちょっと外に出てみるね。」
私は一人外へ出た。なんて、そんな事してもどのくらい時間が経ったかは分からないんだけどね。
外の今の季節は春だった。春は良いね、温かくなり、雪が溶け、植物も目を開き、生き物達は冬眠から目を覚ます。私は春は好きだよ。まぁ、他の季節は他の季節で良い所があるから、何だかんだ全ての季節が好きかな。
そんな事を考えて空を見上げると、遠くの方から瑞光が飛んで来ているのが見えた。
「え。」
瑞光一人なら人間の願いを叶える為に来たのかと思ったけど、瑞光は背にあの子と同じくらいの背丈の子供を負ぶって来た。
訳が分からず完全に硬直していると、瑞光は私を見付けてすぐに私の前に降りて来た。
「瑞光、えっと、色々と聞きたい事があるけど、その子何?」
「いや俺様が聞きてぇよ。」
如何やら瑞光も何も分かっていないらしい。
私は瑞光に背負われている子供を見た。随分と珍しいと言うか、私ですら初めて見る髪色で、上の方は赤色で、下に行くにつれ、段々と橙色へと変わっていく。とても綺麗な髪をした男の子だった。そんな子が、瑞光の背で眠っている。
「この子如何したの?拾った?」
「いや、何か今朝起きたら社に居た。んで寝てた。別に外に放り出しても良かったんだけど、何かそんな気にならなかったから、恵風さんに如何したら良いか聞きに来た。」
「あ、そうなんだ。」
まぁ兎に角、髪色からして普通じゃないのはよく分かる。
私はその子の頭に触れた。温かい。まるで日の光の様な温かさだ。だけど、その精神の奥には、まるで瑞光と同じようなくらい物を感じる。
「この子は、人間の世界の言葉で言うなら、君の弟にあたる子だね。」
「弟ぉ?ってか神に弟も何もいるのかよ。」
「一応はね、この国の神なんか殆ど兄弟姉妹みたいなものだから。でもこの子の場合、君と同じ願いから生まれたと言う感じかな。」
と言う事はつまり、この子も殺しの願いから生まれたと言う事になる。
だけど不思議な物だなぁ。同じ願いでも兄と弟でこんなに見た目や妖気の性質が違うのか。
私はその子の頭を撫でると、その子は小さく声を出して目を開いた。まだ自我も意識もはっきりしていない。如何やら今朝生まれたばかりの様だ。
「名前は考えているの?」
「何で俺様が他人の名前考えられると思うんだよ。大体俺様の名前だってテメェが付けたもんじゃねぇか。」
うん、そうだろうけど、そうだけど、そんな喧嘩腰で言わなくても。でもあれだなぁ、この子はとても温かい。だからこう名付けよう。
「暁光。」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる