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第八話
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瑞光は暇な時私によく言っていた。人間の欲と言うのは、際限が無いのだと。その時の私は、そんな事は無いと思うと言ったのだけど、もしも瑞光の言う通りで、あの都で殺しを願った男性が、瑞光に対し信仰の念を抱き、その状態で殺しを願ったなら?
あの男性の殺しの対象は、恐らく自分より裕福な人間全員だ。そんな事になったら、この国の人間の一体何人が犠牲になる。
森から出てすぐの村の上を飛んで行き、私は瑞光の妖気を必死に探した。あの子の妖気は分かりやすい。暗く、深く、それでいてとても冷たい妖気だ。
妖気には陰と陽の異種類がある。どんな神であれ妖怪であれ、殆どの者が陽の妖気だけど、瑞光は違う。そうなってくると探すのは簡単になってくる。それに、正直この国は狭いから、探すのは簡単だ。
神経を研ぎ澄ませて妖気を探る。すると、案外近くから瑞光の妖気を感じた。それは山の向こう側だった。
「まだ誰も殺さないでいてくれよ。」
そんな事を考えながら、私は更に高く飛び、山を越えて行った。
山の麓にはまた別の村があった。
上から村を見てから困った事が一つあった。それは実に予想外の光景だった。
血だらけの瑞光のすぐ真横に、見るも無残な死体があった。だけど問題なのはそこじゃない、そんな瑞光の周りにいる人々は、瑞光に頭を下げている。そんな人々から感じられる念は、信仰心だった。
(まずい。)
これは非常に不味い。
神とは人々の信仰心によって力を得る。今国を出ているからこそある程度力を抑えられていたのに、瑞光が信仰心を得られてしまったなら、この国でも神として扱われたなら、彼はこの国でも願われたら簡単に人を殺せるようになってしまう。
私は慌てて村に降りて瑞光の腕を掴み、そのまま空へと飛び、森の中へと戻って行った。
森の中に入ってすぐに地面に降りると、瑞光は私の手を振り解いた。
「何すんだよ恵風さん。」
「君はまたそうやって人を殺して!!」
如何してそう君は、人間の命を軽々しく扱うのか。怒りの念を込めてそう言うと、瑞光は大きく溜め息を吐いた。
「あのよ、前々から思ってるけど、何だってそんなに人間を殺す事を咎めるんだよ。そもそも俺様は人間達の『殺しの願い』から生まれてんだ。神の仕事ってのは人間の願いをかなえる事だって、恵風さんだって言ってんじゃねぇか。」
「そうだけど。」
そうなんだけど、如何言ったら良いんだろうか。瑞光の言う通り、確かに神とは人間にとって心の拠り所となり、時としてその願いを叶える存在だ。何もかもを叶える訳じゃないけど、自分が叶えられる願いなら、基本的に殆ど叶える。
だから瑞光が人を殺す事は、私を含む全ての神が願いを叶える事と同じなんだ。
神は人間からの信仰心から生まれている。それは裏を返せば信仰されなくなると消滅してしまうと言う事だ。だから神も、信仰心を持ってもらおうと必死なんだ。それはある意味生存本能その物なんだ。だからそれ自体を咎める事は出来ない。
「まぁ何でも良いけど。」
瑞光はニタリと笑った。
「俺様、この国でも神としてやっていけそうだ。」
「それって、つまり…………」
「そ、信者が出来たって事だ。」
あぁ、色々と恐れていた事が現実になってしまった。
あの男性の殺しの対象は、恐らく自分より裕福な人間全員だ。そんな事になったら、この国の人間の一体何人が犠牲になる。
森から出てすぐの村の上を飛んで行き、私は瑞光の妖気を必死に探した。あの子の妖気は分かりやすい。暗く、深く、それでいてとても冷たい妖気だ。
妖気には陰と陽の異種類がある。どんな神であれ妖怪であれ、殆どの者が陽の妖気だけど、瑞光は違う。そうなってくると探すのは簡単になってくる。それに、正直この国は狭いから、探すのは簡単だ。
神経を研ぎ澄ませて妖気を探る。すると、案外近くから瑞光の妖気を感じた。それは山の向こう側だった。
「まだ誰も殺さないでいてくれよ。」
そんな事を考えながら、私は更に高く飛び、山を越えて行った。
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上から村を見てから困った事が一つあった。それは実に予想外の光景だった。
血だらけの瑞光のすぐ真横に、見るも無残な死体があった。だけど問題なのはそこじゃない、そんな瑞光の周りにいる人々は、瑞光に頭を下げている。そんな人々から感じられる念は、信仰心だった。
(まずい。)
これは非常に不味い。
神とは人々の信仰心によって力を得る。今国を出ているからこそある程度力を抑えられていたのに、瑞光が信仰心を得られてしまったなら、この国でも神として扱われたなら、彼はこの国でも願われたら簡単に人を殺せるようになってしまう。
私は慌てて村に降りて瑞光の腕を掴み、そのまま空へと飛び、森の中へと戻って行った。
森の中に入ってすぐに地面に降りると、瑞光は私の手を振り解いた。
「何すんだよ恵風さん。」
「君はまたそうやって人を殺して!!」
如何してそう君は、人間の命を軽々しく扱うのか。怒りの念を込めてそう言うと、瑞光は大きく溜め息を吐いた。
「あのよ、前々から思ってるけど、何だってそんなに人間を殺す事を咎めるんだよ。そもそも俺様は人間達の『殺しの願い』から生まれてんだ。神の仕事ってのは人間の願いをかなえる事だって、恵風さんだって言ってんじゃねぇか。」
「そうだけど。」
そうなんだけど、如何言ったら良いんだろうか。瑞光の言う通り、確かに神とは人間にとって心の拠り所となり、時としてその願いを叶える存在だ。何もかもを叶える訳じゃないけど、自分が叶えられる願いなら、基本的に殆ど叶える。
だから瑞光が人を殺す事は、私を含む全ての神が願いを叶える事と同じなんだ。
神は人間からの信仰心から生まれている。それは裏を返せば信仰されなくなると消滅してしまうと言う事だ。だから神も、信仰心を持ってもらおうと必死なんだ。それはある意味生存本能その物なんだ。だからそれ自体を咎める事は出来ない。
「まぁ何でも良いけど。」
瑞光はニタリと笑った。
「俺様、この国でも神としてやっていけそうだ。」
「それって、つまり…………」
「そ、信者が出来たって事だ。」
あぁ、色々と恐れていた事が現実になってしまった。
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