29 / 35
はじめての
しおりを挟む
大事なものはたくさんある。
家族、友達、バレーボール、アクション映画、漫画、勉強、過去の恋愛、その他いろいろ。
全て自分を作ってきたもの達、そこに新たにできたカテゴリーがある。
赤星那智、恋愛のカテゴリーではなく那智と名付けた那智だけの記憶と想いの箱。
その箱に今からまたひとつ思い出を入れる。
じっと座って那智を待ちながら、寮へと帰る道すがらのことが頭に浮かんだ。
軽くて重くて、可愛くて可愛げのない那智をおぶって坂を登る。
しっかりと支えているのでそんなに張り付かなくてもいいのに、那智はいつもぺたりと身を寄せる。
でも嬉しいから何も言わない。
首筋に感じる那智の吐息を感じる度に、あぁ抱きたいなぁと思う。
「なち」
「ん?」
「今日、抱いていい?」
待てど暮らせど返事がない、くたりともたれかかっていた体が強ばっているので寝てるわけではないだろう。
「返事は?」
「──なんでやねん、あほか」
阿保だの馬鹿だのと那智が言う時はだいたい照れくさい時だともうわかっている。
だからこれもきっと照れているだけだ。
「あほだから抱く」
「開き直んなや」
ぐぅと首に回した腕を絞められて窒息しそうになった。
下から見上げた 稜美館の二階はどの部屋も暗く、軒並み寝てしまったのかそれとも不在なのか。
那智の喉がゴクリと鳴るのが聞こえた。
洗濯室の壊れたドアから寮に入り、靴を脱いで靴箱へ。
那智がスリッパに履き替えている間にこっそり寮監室から浴場の鍵を拝借した。
ペタペタと音を立てて自分たちの部屋まで。
那智は押し黙り静まり返った廊下にドキドキと跳ねる心臓の音が響くような気がした。
鍵を開けて部屋に入るやいなや那智を抱き込んで、あっと驚いた顔に口付けた。
仰け反った腰を支えて、逃げようとする後頭部に手を回して頭皮を撫でた。
カチコチになっている腰も撫でて、硬い舌が柔らかくなるまでしゃぶった。
じゅるじゅるとわざと音をたてて、唾液を交換しあってから離れた。
「おかえり、なち。フライングしちゃった」
暗闇でもわかる赤い頬はつるりとしていて、撫でるとますます熱くなった。
「抱いていい?」
「まだ言うてんのか」
「うん」
「──準備、してくる」
俯いてポツリと那智はそう言った。
カチカチと秒針の音を聞きながら、あと一分がタイムリミットだなと考えた時にカチャとドアが開いた。
「早かったな」
「おま、、お前が、早せんと押しかけるって言うから!」
「うん、今行こうと思ってた」
ひゅっと息を飲み込む那智の手を引いて、畳に敷いた布団に押し倒した。
ぽかんと間抜けに口を開ける顔が可愛い。
「この間のようにはさせないから」
ぱちぱちと忙しない瞬きと、ぎゅうと真一文字に結んだ唇がおかしくて愛しいと思った。
「なち、シていい?」
「ここまできてそれ聞くの卑怯やと思うわ」
「じゃあする」
ふいと視線を逸らす頬に口付けて、那智を抱きしめる。
ビクリと緊張する体を撫でて、撫でて、撫で回した。
そのうち那智は笑いだし、同じように撫でてきた。
脇腹を重点的に撫でる那智の手つきに同じように笑ってしまう。
「その、前みたいに簡単やないと思うけど」
「知ってる。今日はなちのここを俺が柔らかくして、解して、とろとろにするから」
下着の上から割れ目をなぞってその奥をふにふにと触ってみた。
ぎゅっと閉じた目に、結ばれた唇にキスを落としてTシャツの中に手を入れて探る。
当然のようにそこは柔くはなく、少しだけ肋骨が浮いていた。
脇から胸に手を這わすと真っ平らな中にぷくりと柔い場所があって、そこには小さな粒が乗っている。
カリカリと引っ掻くと腰が浮いて、はぁと息が漏れた。
たくしあげて露になった慎ましやかな胸は薄いオレンジ色で、ツンと立ち上がった乳首が妙にエロいと思った。
「男の体やろ?」
「うん、なちの体だ」
「そうやなくてっ・・・」
「なちだよ、俺はなちを抱きたいんだ。こっち見て」
好きだよ、と告げて何度もキスをして遮る布地が邪魔で全部取り払って抱きあった。
※次話は那智視点です。
短くてごめんです。
家族、友達、バレーボール、アクション映画、漫画、勉強、過去の恋愛、その他いろいろ。
全て自分を作ってきたもの達、そこに新たにできたカテゴリーがある。
赤星那智、恋愛のカテゴリーではなく那智と名付けた那智だけの記憶と想いの箱。
その箱に今からまたひとつ思い出を入れる。
じっと座って那智を待ちながら、寮へと帰る道すがらのことが頭に浮かんだ。
軽くて重くて、可愛くて可愛げのない那智をおぶって坂を登る。
しっかりと支えているのでそんなに張り付かなくてもいいのに、那智はいつもぺたりと身を寄せる。
でも嬉しいから何も言わない。
首筋に感じる那智の吐息を感じる度に、あぁ抱きたいなぁと思う。
「なち」
「ん?」
「今日、抱いていい?」
待てど暮らせど返事がない、くたりともたれかかっていた体が強ばっているので寝てるわけではないだろう。
「返事は?」
「──なんでやねん、あほか」
阿保だの馬鹿だのと那智が言う時はだいたい照れくさい時だともうわかっている。
だからこれもきっと照れているだけだ。
「あほだから抱く」
「開き直んなや」
ぐぅと首に回した腕を絞められて窒息しそうになった。
下から見上げた 稜美館の二階はどの部屋も暗く、軒並み寝てしまったのかそれとも不在なのか。
那智の喉がゴクリと鳴るのが聞こえた。
洗濯室の壊れたドアから寮に入り、靴を脱いで靴箱へ。
那智がスリッパに履き替えている間にこっそり寮監室から浴場の鍵を拝借した。
ペタペタと音を立てて自分たちの部屋まで。
那智は押し黙り静まり返った廊下にドキドキと跳ねる心臓の音が響くような気がした。
鍵を開けて部屋に入るやいなや那智を抱き込んで、あっと驚いた顔に口付けた。
仰け反った腰を支えて、逃げようとする後頭部に手を回して頭皮を撫でた。
カチコチになっている腰も撫でて、硬い舌が柔らかくなるまでしゃぶった。
じゅるじゅるとわざと音をたてて、唾液を交換しあってから離れた。
「おかえり、なち。フライングしちゃった」
暗闇でもわかる赤い頬はつるりとしていて、撫でるとますます熱くなった。
「抱いていい?」
「まだ言うてんのか」
「うん」
「──準備、してくる」
俯いてポツリと那智はそう言った。
カチカチと秒針の音を聞きながら、あと一分がタイムリミットだなと考えた時にカチャとドアが開いた。
「早かったな」
「おま、、お前が、早せんと押しかけるって言うから!」
「うん、今行こうと思ってた」
ひゅっと息を飲み込む那智の手を引いて、畳に敷いた布団に押し倒した。
ぽかんと間抜けに口を開ける顔が可愛い。
「この間のようにはさせないから」
ぱちぱちと忙しない瞬きと、ぎゅうと真一文字に結んだ唇がおかしくて愛しいと思った。
「なち、シていい?」
「ここまできてそれ聞くの卑怯やと思うわ」
「じゃあする」
ふいと視線を逸らす頬に口付けて、那智を抱きしめる。
ビクリと緊張する体を撫でて、撫でて、撫で回した。
そのうち那智は笑いだし、同じように撫でてきた。
脇腹を重点的に撫でる那智の手つきに同じように笑ってしまう。
「その、前みたいに簡単やないと思うけど」
「知ってる。今日はなちのここを俺が柔らかくして、解して、とろとろにするから」
下着の上から割れ目をなぞってその奥をふにふにと触ってみた。
ぎゅっと閉じた目に、結ばれた唇にキスを落としてTシャツの中に手を入れて探る。
当然のようにそこは柔くはなく、少しだけ肋骨が浮いていた。
脇から胸に手を這わすと真っ平らな中にぷくりと柔い場所があって、そこには小さな粒が乗っている。
カリカリと引っ掻くと腰が浮いて、はぁと息が漏れた。
たくしあげて露になった慎ましやかな胸は薄いオレンジ色で、ツンと立ち上がった乳首が妙にエロいと思った。
「男の体やろ?」
「うん、なちの体だ」
「そうやなくてっ・・・」
「なちだよ、俺はなちを抱きたいんだ。こっち見て」
好きだよ、と告げて何度もキスをして遮る布地が邪魔で全部取り払って抱きあった。
※次話は那智視点です。
短くてごめんです。
1
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
【完結】遍く、歪んだ花たちに。
古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。
和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。
「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」
No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。
理香は俺のカノジョじゃねえ
中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。
どうしようもなく甘い一日
佐治尚実
BL
「今日、彼に別れを告げます」
恋人の上司が結婚するという噂話を聞いた。宏也は身を引こうと彼をラブホテルに誘い出す。
上司×部下のリーマンラブです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
ド天然アルファの執着はちょっとおかしい
のは
BL
一嶌はそれまで、オメガに興味が持てなかった。彼らには托卵の習慣があり、いつでも男を探しているからだ。だが澄也と名乗るオメガに出会い一嶌は恋に落ちた。その瞬間から一嶌の暴走が始まる。
【アルファ→なんかエリート。ベータ→一般人。オメガ→男女問わず子供産む(この世界では産卵)くらいのゆるいオメガバースなので優しい気持ちで読んでください】
お世話したいαしか勝たん!
沙耶
BL
神崎斗真はオメガである。総合病院でオメガ科の医師として働くうちに、ヒートが悪化。次のヒートは抑制剤無しで迎えなさいと言われてしまった。
悩んでいるときに相談に乗ってくれたα、立花優翔が、「俺と一緒にヒートを過ごさない?」と言ってくれた…?
優しい彼に乗せられて一緒に過ごすことになったけど、彼はΩをお世話したい系αだった?!
※完結設定にしていますが、番外編を突如として投稿することがございます。ご了承ください。
冴えないおじさんが雌になっちゃうお話。
丸井まー(旧:まー)
BL
馴染みの居酒屋で冴えないおじさんが雌オチしちゃうお話。
イケメン青年×オッサン。
リクエストをくださった棗様に捧げます!
【リクエスト】冴えないおじさんリーマンの雌オチ。
楽しいリクエストをありがとうございました!
※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる