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はじめての

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大事なものはたくさんある。
家族、友達、バレーボール、アクション映画、漫画、勉強、過去の恋愛、その他いろいろ。
全て自分を作ってきたもの達、そこに新たにできたカテゴリーがある。
赤星那智、恋愛のカテゴリーではなく那智と名付けた那智だけの記憶と想いの箱。
その箱に今からまたひとつ思い出を入れる。
じっと座って那智を待ちながら、寮へと帰る道すがらのことが頭に浮かんだ。



軽くて重くて、可愛くて可愛げのない那智をおぶって坂を登る。
しっかりと支えているのでそんなに張り付かなくてもいいのに、那智はいつもぺたりと身を寄せる。
でも嬉しいから何も言わない。
首筋に感じる那智の吐息を感じる度に、あぁ抱きたいなぁと思う。

「なち」
「ん?」
「今日、抱いていい?」

待てど暮らせど返事がない、くたりともたれかかっていた体が強ばっているので寝てるわけではないだろう。

「返事は?」
「──なんでやねん、あほか」

阿保だの馬鹿だのと那智が言う時はだいたい照れくさい時だともうわかっている。
だからこれもきっと照れているだけだ。

「あほだから抱く」
「開き直んなや」

ぐぅと首に回した腕を絞められて窒息しそうになった。

下から見上げた 稜美りょうび館の二階はどの部屋も暗く、軒並み寝てしまったのかそれとも不在なのか。
那智の喉がゴクリと鳴るのが聞こえた。

洗濯室の壊れたドアから寮に入り、靴を脱いで靴箱へ。
那智がスリッパに履き替えている間にこっそり寮監室から浴場の鍵を拝借した。
ペタペタと音を立てて自分たちの部屋まで。
那智は押し黙り静まり返った廊下にドキドキと跳ねる心臓の音が響くような気がした。
鍵を開けて部屋に入るやいなや那智を抱き込んで、あっと驚いた顔に口付けた。
仰け反った腰を支えて、逃げようとする後頭部に手を回して頭皮を撫でた。
カチコチになっている腰も撫でて、硬い舌が柔らかくなるまでしゃぶった。
じゅるじゅるとわざと音をたてて、唾液を交換しあってから離れた。

「おかえり、なち。フライングしちゃった」

暗闇でもわかる赤い頬はつるりとしていて、撫でるとますます熱くなった。

「抱いていい?」
「まだ言うてんのか」
「うん」
「──準備、してくる」

俯いてポツリと那智はそう言った。



カチカチと秒針の音を聞きながら、あと一分がタイムリミットだなと考えた時にカチャとドアが開いた。

「早かったな」
「おま、、お前が、はよせんと押しかけるって言うから!」
「うん、今行こうと思ってた」

ひゅっと息を飲み込む那智の手を引いて、畳に敷いた布団に押し倒した。
ぽかんと間抜けに口を開ける顔が可愛い。

「この間のようにはさせないから」

ぱちぱちと忙しない瞬きと、ぎゅうと真一文字に結んだ唇がおかしくて愛しいと思った。

「なち、シていい?」
「ここまできてそれ聞くの卑怯やと思うわ」
「じゃあする」

ふいと視線を逸らす頬に口付けて、那智を抱きしめる。
ビクリと緊張する体を撫でて、撫でて、撫で回した。
そのうち那智は笑いだし、同じように撫でてきた。
脇腹を重点的に撫でる那智の手つきに同じように笑ってしまう。

「その、前みたいに簡単やないと思うけど」
「知ってる。今日はなちのここを俺が柔らかくして、解して、とろとろにするから」

下着の上から割れ目をなぞってその奥をふにふにと触ってみた。
ぎゅっと閉じた目に、結ばれた唇にキスを落としてTシャツの中に手を入れて探る。
当然のようにそこは柔くはなく、少しだけ肋骨が浮いていた。
脇から胸に手を這わすと真っ平らな中にぷくりと柔い場所があって、そこには小さな粒が乗っている。
カリカリと引っ掻くと腰が浮いて、はぁと息が漏れた。
たくしあげて露になった慎ましやかな胸は薄いオレンジ色で、ツンと立ち上がった乳首が妙にエロいと思った。

「男の体やろ?」
「うん、なちの体だ」
「そうやなくてっ・・・」
「なちだよ、俺はなちを抱きたいんだ。こっち見て」

好きだよ、と告げて何度もキスをして遮る布地が邪魔で全部取り払って抱きあった。



※次話は那智視点です。
短くてごめんです。
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