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がんばれ!鷹野くん
小話あれこれ⑤
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【キスマークの話】
ある日の三角ビル。
「乾、お前恥ずかしくないのか?」
「何がです?」
「その、噛み跡とかキスマークとか」
「普通は恥ずかしいんですか?」
もういい、と田山は言った。
太郎は鷹野が与えてくれるものはなんでも好きだ。
特にキスマークなんかは自分だけのものだから嬉しく思う。
鷹野もキスマークをつけるととんでもなく喜んでいるのでそういうものかと思っていた。
「田山さんはつけないんですか?」
「もういいっつってんだろ」
ポポポっと頬を染める上田を見て太郎は思った。
ありゃ見えないところに絶対ついてるわ、と。
正解。
「っていう話しをしたんだけど、鷹野がよく恥じらってほしいっていうのはこういうこと?」
「いや、そこは恥ずかしがらんでいい。むしろ見せびらかしてほしい」
「ん、わかった」
「いや、待て。やっぱりちょっと恥じらうのもいいな」
「どっち?」
「んー、究極の選択だな」
またまた三角ビル。
「っていう話をしたんですけど、田山さんはどっちですか?」
「もういいっつってんだろうが!!」
はて?と首を傾げる太郎の頭を、仕事しろと田山は張った。
【猫耳ともこもこの話】
「太郎、これを着てほしい」
渡された箱を太郎は開けてみる。
広げたそれはもこもこでフードに猫耳がついていた。
ショートパンツも同じくもこもこでご丁寧に尻尾までついている。
色はクリームイエロー。
「嫌」
「え?裸エプロンは即OKだったのに?」
「あれは別にいいよ、なんぼでもしてあげるよ。これは似合わないから嫌!」
「絶対似合うから!」
「いーやーだー!・・・でも、お揃いなら考えてやってもいい」
「さすがに俺のサイズはないだろ、これ」
「じゃあ、ダメー」
一度言い出すと聞かないのを鷹野はよくわかっているのでぐぬぬと押し黙った。
──後日
「太郎、俺のサイズ見つけた」
「鷹野、お前必死だな」
鷹野のもこもこはクロでショートパンツではなくくるぶし丈でやっぱりしっぽがついている。
フードには猫耳も標準装備で色は黒。
「どうだ?」
「えーー~ー、めっちゃかっこいい。そういうでっかい黒いのテレビで見たことある!」
まるで黒豹のような鷹野。
そうか?と鷹野は年甲斐もなくくるりと回った。
「じゃ、太郎も着て」
「うん、考えた結果、嫌」
「なんで!?」
「似合わないから」
「似合う!絶対似合う!語尾ににゃーって言ってとか言わないから!」
「嫌だにゃあ」
1回だけお願い!としつこい鷹野に根負けして太郎は猫になった。
鏡の中には目つきの悪い、どう見ても野良猫が映っている。
それを、似合う似合うと黒豹が愛でている。
変態の考えることはわからん、と太郎は痛感した。
【出張の話】
「来週、出張だから」
「どこに?」
「北海道」
「どれくらい?」
「3泊4日」
「ふうん。行ってらっしゃい」
まぁ、こんなもんだろうなと鷹野は思った。
けれど、無意識か口を尖らせて拗ねているようにも見える。
少しは寂しがってほしいなぁ、と思う鷹野であった。
──出張前夜
抱き潰すと世話をする人がいないから、加減せねばと鷹野は思う。
共に暮らし始めて、初めて長く離れるので加減できるかなと思いながら太郎を抱き寄せる。
ぎゅうぎゅうといつになく抱きついて、首筋にぐりぐりと額を擦りつけてくるのにおや?と思う。
「・・・一緒に行く?」
「鷹野が寂しくてどうしようもなかったら一緒に行ってやってもいい」
「あー寂しい。めちゃくちゃ寂しい」
行く、と抱きついてきてキスを強請るのは反則だろうと深く口付けた。
次回、北海道回☺︎
ある日の三角ビル。
「乾、お前恥ずかしくないのか?」
「何がです?」
「その、噛み跡とかキスマークとか」
「普通は恥ずかしいんですか?」
もういい、と田山は言った。
太郎は鷹野が与えてくれるものはなんでも好きだ。
特にキスマークなんかは自分だけのものだから嬉しく思う。
鷹野もキスマークをつけるととんでもなく喜んでいるのでそういうものかと思っていた。
「田山さんはつけないんですか?」
「もういいっつってんだろ」
ポポポっと頬を染める上田を見て太郎は思った。
ありゃ見えないところに絶対ついてるわ、と。
正解。
「っていう話しをしたんだけど、鷹野がよく恥じらってほしいっていうのはこういうこと?」
「いや、そこは恥ずかしがらんでいい。むしろ見せびらかしてほしい」
「ん、わかった」
「いや、待て。やっぱりちょっと恥じらうのもいいな」
「どっち?」
「んー、究極の選択だな」
またまた三角ビル。
「っていう話をしたんですけど、田山さんはどっちですか?」
「もういいっつってんだろうが!!」
はて?と首を傾げる太郎の頭を、仕事しろと田山は張った。
【猫耳ともこもこの話】
「太郎、これを着てほしい」
渡された箱を太郎は開けてみる。
広げたそれはもこもこでフードに猫耳がついていた。
ショートパンツも同じくもこもこでご丁寧に尻尾までついている。
色はクリームイエロー。
「嫌」
「え?裸エプロンは即OKだったのに?」
「あれは別にいいよ、なんぼでもしてあげるよ。これは似合わないから嫌!」
「絶対似合うから!」
「いーやーだー!・・・でも、お揃いなら考えてやってもいい」
「さすがに俺のサイズはないだろ、これ」
「じゃあ、ダメー」
一度言い出すと聞かないのを鷹野はよくわかっているのでぐぬぬと押し黙った。
──後日
「太郎、俺のサイズ見つけた」
「鷹野、お前必死だな」
鷹野のもこもこはクロでショートパンツではなくくるぶし丈でやっぱりしっぽがついている。
フードには猫耳も標準装備で色は黒。
「どうだ?」
「えーー~ー、めっちゃかっこいい。そういうでっかい黒いのテレビで見たことある!」
まるで黒豹のような鷹野。
そうか?と鷹野は年甲斐もなくくるりと回った。
「じゃ、太郎も着て」
「うん、考えた結果、嫌」
「なんで!?」
「似合わないから」
「似合う!絶対似合う!語尾ににゃーって言ってとか言わないから!」
「嫌だにゃあ」
1回だけお願い!としつこい鷹野に根負けして太郎は猫になった。
鏡の中には目つきの悪い、どう見ても野良猫が映っている。
それを、似合う似合うと黒豹が愛でている。
変態の考えることはわからん、と太郎は痛感した。
【出張の話】
「来週、出張だから」
「どこに?」
「北海道」
「どれくらい?」
「3泊4日」
「ふうん。行ってらっしゃい」
まぁ、こんなもんだろうなと鷹野は思った。
けれど、無意識か口を尖らせて拗ねているようにも見える。
少しは寂しがってほしいなぁ、と思う鷹野であった。
──出張前夜
抱き潰すと世話をする人がいないから、加減せねばと鷹野は思う。
共に暮らし始めて、初めて長く離れるので加減できるかなと思いながら太郎を抱き寄せる。
ぎゅうぎゅうといつになく抱きついて、首筋にぐりぐりと額を擦りつけてくるのにおや?と思う。
「・・・一緒に行く?」
「鷹野が寂しくてどうしようもなかったら一緒に行ってやってもいい」
「あー寂しい。めちゃくちゃ寂しい」
行く、と抱きついてきてキスを強請るのは反則だろうと深く口付けた。
次回、北海道回☺︎
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