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檻の中
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やっと手に入れた自分の運命。
脳内でアレを手に入れろと信号が送られて、手に入れる為に手間も惜しまず心のままに動いた。
自分の運命はひねくれていて見ようによってはすこぶる目付きが悪くどんより暗い瞳をしていた。
今まで付き合ってきた者たちとは、なにもかもが違う。
運命でなければすれ違う事もなかっただろう。
それでも運命だからか、どこか放っておけない浮き草のようなこのΩにどんどん溺れていく。
全てを管理して把握して支配したい。
それは自身の性格か、αの性なのか。
運命と名のついたそれは愛に変わり、迷わせ戸惑わせ心を侵食していく。
そこにただいるだけで、笑いかけてくれるだけでいい。
太郎にはなにもない。
なにもないからこそある日ふっつりと消えるような気がする。
あいつの目の前から消えた時もそうだったのだろう。
忌々しい過去から切り離した今、少なからず好意を示してくれる今、番にして縛らなければと思う。
俺だけの、俺の為だけに生まれてきたΩを逃がさない。
αだと慢心していたのかもしれない。
発情期なのにどこか冷静に仕掛けられ、犬歯を愛しそうに舐められた時には全身を巡る血が一気に沸騰した。
頭にあるのは奥まで犯して全て自分のモノにしたいという思いだけ。
前回の発情期も一緒に過ごした、それからもセックスなら何度もしている。
ただ今回は違う。
身も心も全て自分のものにして番うためのもの。
自分の手管に酔いしれ喘ぎ、嬌声をあげ快楽に身を委ねているのがわかるのにじっと見られている気がする。
一挙手一投足を観察し、番に相応しいかを見極められている。
この空間を支配しているのはαでなく、頼りなく庇護が必要なか弱いΩだ。
あぁ、だけれどこれが欲しい。
これを手に入れてまた支配してやる。
ぐずぐずに甘やかしてどろどろに愛しあいたい。
全てを手中に収めて、自分がいないと生きていけないと縋りつかれたい。
そう、思っていた。
思っていたのに、貪欲に貪られたのは自分で先に限界がきたのも自分だった。
何度αの精を注ぎ込んでももっともっとと強請られ、普段からは考えられないくらい妖艶に誘われる。
流されるままに快楽に溺れていたΩがαを溺れさせ、縋りつかせようとしている。
その様はいじらしく心を打つ。
抗えないΩの香り、唯一無二の番の香り。
愉悦を隠しきれない目で見つめられて、犯しているはずなのに犯されている。
手中に収めたのではなく収められた。
何も持っていない空っぽの檻に囚われた。
繋ぎとめられたのは自分だった。
この俺を囲うつもりか、必死な様が健気で愛おしい。
暗く澱んでいた瞳の奥には今チリチリと情熱が宿っていて、それを自分が焚き付けたのだと思うとゾクゾクする。
目の前の小さく力もないΩにいいようにされる。
支配する側からされる側へ。
そんなαは自分だけで、こんなΩは自分の番だけだろうと思う。
この絆を自分から手放す気はないし、手放させる気もない。
二人で生きていきたい、そう強く願う。
脳内でアレを手に入れろと信号が送られて、手に入れる為に手間も惜しまず心のままに動いた。
自分の運命はひねくれていて見ようによってはすこぶる目付きが悪くどんより暗い瞳をしていた。
今まで付き合ってきた者たちとは、なにもかもが違う。
運命でなければすれ違う事もなかっただろう。
それでも運命だからか、どこか放っておけない浮き草のようなこのΩにどんどん溺れていく。
全てを管理して把握して支配したい。
それは自身の性格か、αの性なのか。
運命と名のついたそれは愛に変わり、迷わせ戸惑わせ心を侵食していく。
そこにただいるだけで、笑いかけてくれるだけでいい。
太郎にはなにもない。
なにもないからこそある日ふっつりと消えるような気がする。
あいつの目の前から消えた時もそうだったのだろう。
忌々しい過去から切り離した今、少なからず好意を示してくれる今、番にして縛らなければと思う。
俺だけの、俺の為だけに生まれてきたΩを逃がさない。
αだと慢心していたのかもしれない。
発情期なのにどこか冷静に仕掛けられ、犬歯を愛しそうに舐められた時には全身を巡る血が一気に沸騰した。
頭にあるのは奥まで犯して全て自分のモノにしたいという思いだけ。
前回の発情期も一緒に過ごした、それからもセックスなら何度もしている。
ただ今回は違う。
身も心も全て自分のものにして番うためのもの。
自分の手管に酔いしれ喘ぎ、嬌声をあげ快楽に身を委ねているのがわかるのにじっと見られている気がする。
一挙手一投足を観察し、番に相応しいかを見極められている。
この空間を支配しているのはαでなく、頼りなく庇護が必要なか弱いΩだ。
あぁ、だけれどこれが欲しい。
これを手に入れてまた支配してやる。
ぐずぐずに甘やかしてどろどろに愛しあいたい。
全てを手中に収めて、自分がいないと生きていけないと縋りつかれたい。
そう、思っていた。
思っていたのに、貪欲に貪られたのは自分で先に限界がきたのも自分だった。
何度αの精を注ぎ込んでももっともっとと強請られ、普段からは考えられないくらい妖艶に誘われる。
流されるままに快楽に溺れていたΩがαを溺れさせ、縋りつかせようとしている。
その様はいじらしく心を打つ。
抗えないΩの香り、唯一無二の番の香り。
愉悦を隠しきれない目で見つめられて、犯しているはずなのに犯されている。
手中に収めたのではなく収められた。
何も持っていない空っぽの檻に囚われた。
繋ぎとめられたのは自分だった。
この俺を囲うつもりか、必死な様が健気で愛おしい。
暗く澱んでいた瞳の奥には今チリチリと情熱が宿っていて、それを自分が焚き付けたのだと思うとゾクゾクする。
目の前の小さく力もないΩにいいようにされる。
支配する側からされる側へ。
そんなαは自分だけで、こんなΩは自分の番だけだろうと思う。
この絆を自分から手放す気はないし、手放させる気もない。
二人で生きていきたい、そう強く願う。
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