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飲み会
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「で?クビんなったんか?」
「クビじゃなくて違うビルに行く」
大衆居酒屋『よっちゃん』
ビール一杯380円。
つまみはオール300円。
貧乏極まりない底辺Ωにとって財布に優しい店。
「ひどくない?」
「な?好きで人のセックス、いやセックス未満か?見たわけじゃないのにな」
きゅうりと鶏皮のポン酢和えを食べながら悪態をつく。
七味もっとかけていい?と七味を振りかける。
「だいたいαなんか何でもできるのになんで性欲だけは我慢できないわけ?なんで下半身には素直なわけ?脳みそがちんこにあんのか?」
グイッとジョッキを持ち上げビールを一気に飲み干す。
「あいつらはもっと我慢を覚えろ!」
一声叫び、ダンとジョッキをテーブルに叩きつけじろりと対面の男を睨んだ。
「なぜ俺が睨まれているのか」
「俺の番に絡むなよ」
晴ちゃん!と睨まれた男が抱きつこうとするのを晴ちゃんと呼ばれた男が、思い切り手を伸ばして阻止する。
「そういうとこだぞ、黒崎。隙あらばイチャつこうとするな。鬱陶しい」
ケッと吐き捨てるように言って、通りかかった若い店員を呼び止める。
「あ、お兄さん。コロッケ10個と焼き鳥包んで」
「すいません、うちテイクアウトやってないんですよ」
「乾太郎が包んでって言ってるって大将に言えば大丈夫だから。ほら、行って、GO!」
困惑顔の若い店員の腰をバシンと叩く太郎。
首を傾げながら厨房に向かう店員に手を振る。
「たろちゃん、野菜も食わないと」
「晴臣は俺の母ちゃんか?」
「親友だよ?」
えへへ、と笑う晴臣にへらりと笑って返す。
それを黒崎が微笑ましそうに見る、のを太郎が呆れたように見たところで若い店員が包みを持ってやってきた。
な?言ったろ?、と言って店員から包みを受け取る太郎。
『肉じゃがコロッケ5
野菜コロッケ5
ネギま5
もも5
冷凍して食べる時に揚げるように』
包みに貼ってある付箋、それを太郎は満足気に眺めて立ち上がった。
「んじゃ、俺帰るわ。黒崎、金持ってんだろ?会計頼むわ」
じゃあな、と太郎はひらひら手を振りながら店を出ていった。
「清々しいくらい太郎君はいつも奢られるよね」
「陽介の良いとこは金持ちでちんこがデカいってことくらいじゃん」
「その言い草はひどくないか?」
「何言ってんだ、最大のチャームポイントだろうが。もっと誇れ」
陽介の肩をバシバシ叩いて晴臣はニヤリと笑う。
「太郎君はまだ探してるの?都合のいいαってやつ」
「多分ね。抑制剤も高いし、たろちゃんは薬の効きづらい体質だから」
「でも、そこに愛が無いのは寂しくないか?」
「寂しいけど、それが無くなった方が悲しいし辛いから。だったら寂しいだけがいいって。たろちゃん、だいぶ拗らせてるから」
そう言って晴臣は残った烏龍茶を飲む。
「俺はたまたま陽介に拾ってもらってラッキーだったと思ってる」
「俺が感じた運命をラッキーで済ますなよ」
なはは、と晴臣が笑って陽介にもたれ掛かる。
「まぁでも、太郎君が奢らせるのはここだけだもんな。もっと高い店でもいいのに」
「たろちゃん、いい男だろ?」
へへへと笑って、たろちゃんは顔がもっと可愛いかったらなぁ、と晴臣はポツリと呟いた。
「小さくて白くて可愛いじゃないか」
「それ、褒めてんの?」
二の腕を思い切り抓る晴臣に、痛い痛いと涙目の陽介。
痛いと喚く声は店の喧騒に飲まれた。
「クビじゃなくて違うビルに行く」
大衆居酒屋『よっちゃん』
ビール一杯380円。
つまみはオール300円。
貧乏極まりない底辺Ωにとって財布に優しい店。
「ひどくない?」
「な?好きで人のセックス、いやセックス未満か?見たわけじゃないのにな」
きゅうりと鶏皮のポン酢和えを食べながら悪態をつく。
七味もっとかけていい?と七味を振りかける。
「だいたいαなんか何でもできるのになんで性欲だけは我慢できないわけ?なんで下半身には素直なわけ?脳みそがちんこにあんのか?」
グイッとジョッキを持ち上げビールを一気に飲み干す。
「あいつらはもっと我慢を覚えろ!」
一声叫び、ダンとジョッキをテーブルに叩きつけじろりと対面の男を睨んだ。
「なぜ俺が睨まれているのか」
「俺の番に絡むなよ」
晴ちゃん!と睨まれた男が抱きつこうとするのを晴ちゃんと呼ばれた男が、思い切り手を伸ばして阻止する。
「そういうとこだぞ、黒崎。隙あらばイチャつこうとするな。鬱陶しい」
ケッと吐き捨てるように言って、通りかかった若い店員を呼び止める。
「あ、お兄さん。コロッケ10個と焼き鳥包んで」
「すいません、うちテイクアウトやってないんですよ」
「乾太郎が包んでって言ってるって大将に言えば大丈夫だから。ほら、行って、GO!」
困惑顔の若い店員の腰をバシンと叩く太郎。
首を傾げながら厨房に向かう店員に手を振る。
「たろちゃん、野菜も食わないと」
「晴臣は俺の母ちゃんか?」
「親友だよ?」
えへへ、と笑う晴臣にへらりと笑って返す。
それを黒崎が微笑ましそうに見る、のを太郎が呆れたように見たところで若い店員が包みを持ってやってきた。
な?言ったろ?、と言って店員から包みを受け取る太郎。
『肉じゃがコロッケ5
野菜コロッケ5
ネギま5
もも5
冷凍して食べる時に揚げるように』
包みに貼ってある付箋、それを太郎は満足気に眺めて立ち上がった。
「んじゃ、俺帰るわ。黒崎、金持ってんだろ?会計頼むわ」
じゃあな、と太郎はひらひら手を振りながら店を出ていった。
「清々しいくらい太郎君はいつも奢られるよね」
「陽介の良いとこは金持ちでちんこがデカいってことくらいじゃん」
「その言い草はひどくないか?」
「何言ってんだ、最大のチャームポイントだろうが。もっと誇れ」
陽介の肩をバシバシ叩いて晴臣はニヤリと笑う。
「太郎君はまだ探してるの?都合のいいαってやつ」
「多分ね。抑制剤も高いし、たろちゃんは薬の効きづらい体質だから」
「でも、そこに愛が無いのは寂しくないか?」
「寂しいけど、それが無くなった方が悲しいし辛いから。だったら寂しいだけがいいって。たろちゃん、だいぶ拗らせてるから」
そう言って晴臣は残った烏龍茶を飲む。
「俺はたまたま陽介に拾ってもらってラッキーだったと思ってる」
「俺が感じた運命をラッキーで済ますなよ」
なはは、と晴臣が笑って陽介にもたれ掛かる。
「まぁでも、太郎君が奢らせるのはここだけだもんな。もっと高い店でもいいのに」
「たろちゃん、いい男だろ?」
へへへと笑って、たろちゃんは顔がもっと可愛いかったらなぁ、と晴臣はポツリと呟いた。
「小さくて白くて可愛いじゃないか」
「それ、褒めてんの?」
二の腕を思い切り抓る晴臣に、痛い痛いと涙目の陽介。
痛いと喚く声は店の喧騒に飲まれた。
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